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2001:工場内管理の動向

デジタル印刷システムは印刷のFMS化を推進しつつあるが,FMSをさらに推し進めるためにはSCMの構築,運用が求められる。
資源環境問題への取組みは今までにも行われてきたが,これからはこれをプラスに転嫁していくような取組みが必要である。

印刷物の生産技術は脱技能化,自動化そして多様化しつつ進化してきた。その結果,生産性は著しく向上し,産業全体としては供給力過剰を常態化させつつある。それでも,印刷物をより手間と費用をかけずに世の中に提供していくための技術開発がやむことはない。紙媒体は,電子媒体に対して優位な面があって,今後も有力な情報媒体として社会に必要とされるからである。ただし,今後は,資源環境問題の観点から,紙媒体のリサイクルやその生産プロセスにおける環境対応もより強く求められてくるだろう。

デジタル化で進むFMS

印刷市場では,細分化した市場に向けた無駄のない印刷物作りに新しいニーズが拡大していく。つまり,FMSの実現がより強く求められることになる。このことは随分前から言われてきたことであるが,オフ輪の小ロット化対応技術の普及,セレクティブバインディング,そして各種のデジタル印刷システムの登場によって,印刷のFMSも本格的に進む状況がでてきた。

印刷分野におけるFMSのひとつの例は,セレクティブ・バインディングシステムである。また,フォーム印刷機にインライン加工機能とインキジェットプリンタを組み込んで,個人宛てメッセージの入ったDMを印刷するパーソナライゼーションの印刷システムも,印刷版FMSのひとつの例であろう。もちろん,デジタル印刷機で,小ロットのページ物印刷物を過不足なく作ることもFMSである。

このように,デジタル印刷システムは,生産設備の面から印刷のFMS化におおいに貢献するが,生産設備がデジタル印刷設備であろうとなかろうと,FMSの完成には,生産管理情報など,管理情報のネットワーク化が必要になる。

印刷のEC

ECあるいはe-businessには,顧客や協力会社を含む仕事の流れ全体の改善によって,市場のさらなる短納期,低価格要求を満たしながら生産性を高めていくこと,そして新たな事業機会をもたらすことが期待される。

1980年代に入って,米国ではコンピュータネットワークを使った情報,データの流通によって,組織のフラット化と新しい企業間の関係作りが始まった。それは,主に日常取引をしている各企業間の調達業務にコンピュータネットワークを使うCALS,EDIとして,米国産業の国際競争力強化と米国経済活性化に貢献した。

その後,インターネットの普及によって,グローバルな通信ネットワークの上で一般消費者を対象とする商品の販売などに新たなビジネスチャンスがあるとして,従来のCALS,EDIの枠を越えた新しいビジネスモデルが,EC,e-bussinessとして拡大してきた。

日本の印刷産業関連では,広告業界でのEDIのコンソーシアムが作られて作業が進められる一方,大手印刷業者が,既存得意先との間での受注,進行管理などに使うシステムを構築してきた。それらについて印刷業一般の関心は低かったが,米国においてインターネット上での取引システムを印刷業向けに提供する業者が多数出始め,日本への上陸も現実となって日本でも印刷業界全体としてECが注目されるようになってきた。

インターネットを使ったEC,e-bussinessを見るひとつの切り口はその対象である。
名刺や年賀状などをインターネットを通じて受注するビジネスは,すでに200以上のサイトで行っている。この場合の対象は,全く不特定多数の消費者,事業所である。テンプレートが使いやすい端物印刷物の受注が主体で,受注システムは自社で開発している企業が大半である。システムの利用を定額で販売する企業も出てきたが,いずれにしても,自社のホームページを新しい受注チャネルとして使うものである。

数多くあるサイトから,如何にして自社のサイトを選んでもらうかが商売に大きく影響するが,基本的には1点当たりの金額が小さいこともあって,大きな商売になっているところはあまりないようである。

印刷物の発注者と印刷会社がひとつのサイトに登録し,発注者が印刷物の製品仕様を提示,それを見て受注を希望する印刷業者が見積もりを出して,発注者が発注する相手を指名する,というECがある。サイトは,そのようなシステムを開発した専業者が運営するもので,取引された印刷物の金額に応じてシステムの利用料を取る。

あらかじめ登録したメンバーの範囲での取引だから全く不特定多数というわけではないが,顧客,印刷会社ともに数百あるいは数千の単位になる。発注者にとっては,より多くの印刷業者から発注先を選択できるメリットがあり,印刷業の側では新たな取引先からの受注機会を得ることになる。対象製品に制約はないが,最初から製品仕様がどの程度決まっているか,仕様自体の複雑さ,あるいは進行途中での仕様変更の多少などによって,その有効性にかなり差が出るのではないだろうか?

いずれにしても,製品やサービスの購買を不特定の企業に広げて行おうとするもので,オークション型とも呼ばれる。取引成立の最大のキーは価格であろう。

もうひとつの印刷ECのタイプは,得意先と印刷会社,印刷会社と資材提供業者など,特定企業間でのやり取りを通信ネットワークを通じて行うものである。対象は定期的な取引がある企業で,機能面では,購買時の情報交換だけではなく,生産段階において必要になるデータ,情報の流通も行う。従来,EDIといわれていたものであり,通信ネットワークで結ばれた各企業がひとつのグループとしてより深く結びついて,他の企業,あるいは企業グループに勝っていこうというSCM(Supply Chain Management)である。

日本の大手印刷業は,得意先との間で,既にこのためのシステムを自社開発,現実の仕事に使い始めてきたが,システム構築には数千万円から億単位の投資が必要になるという。したがって,特に中小印刷業にとっては,既製のシステムとしてこのようなシステムを開発,印刷会社に提供する専業者のサービスを利用することが考えられる。ここでは,提供されるサービスの内容と個々の印刷企業の求める内容との差をどうこなしていくのかがポイントになるだろう。

以上のように,取引きの対象の視点からEC,e-businessを分類して見たが,専業者が提供するシステムを利用するときには,定額あるいは取引額に応じた料金を支払うことになる。後者の利用料金は,取引額の2%程度がひとつの線のようである。

これについては,仕事時間の数十パーセントを原稿・校正のやりとりやその他仕事の進行を管理するために費やされている営業マンの無駄が省けるから充分にペイできるとの見方がある一方で,印刷業一般の売上利益率の中で2%のマージンを支払っては利益が出せないとの見方もある。
北米の印刷業大手4社(R.R.Donnelley,Quebecor World, Quad/Graphics, Banta Cororation)は,2000年5月に4社が協力して効率的なサプライチェーンを作るための作業を始めたと発表,また,製紙業界の大手企業3社(Georgia Pacific,Internationl Paper,Weyerhaeuser)も,用紙・パルプ向けのB to B市場を作り,紙やパルプの売買をオンライン上でできるようにすると発表した。

米国における印刷関連のECサイトは,2000年初時点で40ほどある。これらを運営するいわゆるドット・コム企業はASP(Application Service Provider)であり,提供するサービス機能の内容については,今後,試行錯誤しながらいろいろに変化していくだろう。しかし,現在数十あるこのようなビジネスも,ひとつの産業で継続して事業を展開できるのは3社程度であるとの見方もあり,現実に早くも吸収合併,統合の動きが見られる。

印刷業界の各企業が,今後,事業運営の効率化,事業機会の拡大に通信ネットワークを上手く利用して行かなければならないことは明らかである。EC,e-businesuの理解の仕方はいろいろあるが,SCMとしての通信ネットワーク利用は各企業が共通して求められるものである。そして,その前提として,自社内における生産データ,管理情報のデジタル化,ネットワーク化は不可欠である。

環境対応

資源環境問題への対応は,単なるポーズではなく,プラス面,マイナス面いずれにしても各社の経営計画の中に具体的に組みこんで取り組むべき課題になった。

紙・板紙分野の古紙の利用率は年々1%程度増加し,1999年で55.9%にまで上昇したと見られる。板紙分野の古紙の消費量は既に頭打ちのレベルまで利用率が高くなっきており,近年の古紙利用上昇には,新聞用紙と印刷・情報用紙の古紙利用率の向上が大きく寄与している。

大手製紙会社のDIP(脱墨パルプ)設備の増強や雑誌古紙の再生紙化のネックであったホットメルトの問題などの改善が背景にある。また,一般企業のグリーン調達運動の高まりや「グリーンマーク」や「エコ・マーク商品」表示といった環境対応に関する情報の整備も,再生紙利用拡大を促進している。

最近の印刷業界における環境問題対応の動きで目立つのは大豆油インキ使用である。平版インキの環境対応は,まずアロマフリーインキの普及が先行した。アロマフリーオフセットインキとは,芳香族炭化水素を含まない溶剤を使用したインキで,そのなかで,芳香族成分の含有が1%以下であること,印刷インキ工業連合会の「食品包装材料用印刷インキに関する自主規制(ネガチブリスト規制)」で規制された物質を含まないなど,4項目の基準を満たしたものがエコマーク商品と認定されたオフセットインキである。現在,オフセットインキのほとんどがアロマフリータイプになってきた。

しかし,インキ製造の立場からは,芳香族を含まない溶剤は樹脂を溶かしにくいという問題もあって,これがひとつのきっかけとして大豆油化が進んだ。大豆油を使っているかいないかという識別基準を元にしてみれば,平版インキの50%は大豆油インキであるという。技術的な問題指摘もあまり聞かなくなった。

有機溶剤を大量に使用しているグラビア印刷においては,有機溶剤に関する法規制が一段と強化され,ノントルエン化が進んできた。プラスチックフィルムに印刷された印刷物の残留溶剤量を測定すると,ノントルエン型インキではトルエンの残留は見られず,トータルの残留溶剤量もトルエン型インキに比べて大幅に減少させることができ,包材,特に食品包材の安全衛生確保に大きな利点となる。また,技術的な課題やコストアップなど解決すべき課題もあるが,安全衛生や作業環境面での著しい改善効果は明らかであり,今後,包装用グラビアインキのノントルエン化は一段と拡大,加速するものと考えられている。

ノントルエン化は法規制のクリアと一定の効果が認められるが,有機溶剤に係る各種法規制へのトータルな対応のために,水性化が改めて注目されている。 紙を対象とした水性インキ利用はそれなりのレベルにあるが,プラスチックフィルムを対象とした軟包装印刷分野の水性化は,品質および経済性の点で十分な進展をしていない。現在実用化されている水性インキは,アルコールの含有率が0〜20%と幅があり,明確に水性インキの基準が定義されているわけではない。しかし,いくつかの法規制から見ると,水性インキの基準としては,「使用状態で溶剤含有量30WT%以下のインキ」と考えられる。

水性インキは,溶剤型インキに比べて水の乾燥が遅いことによる印刷速度の低下とプラスチックの濡れ性に劣る点に問題がある。このために,水性インキは,高濃度に設計されて低版深のシリンダーを用いて印刷され,さらに乾燥速度の維持と印刷効果向上のために薄盛り印刷をするように設計されている。

しかし,現時点では,軟包装用水性インキの品質は,印刷適正,印刷効果の点で溶剤型インキのレベルに達していないし,物性面でも溶剤型インキが持つ汎用性に届いていない。また,ハード面では,印刷機の乾燥装置の大型化,風量アップなどの改良や版シリンダーの浅版化など,システム構築の初期投資が不可欠である。

しかし,一部個別分野では十分に実用レベルに達しているものも出てきているし,ユーザが水性インキ包材への移行を検討し始めるなどの動きがあり,少なくともインキメーカーの水性インキ性能向上への積極的な取り組みは今後とも続けられるだろう。

大手印刷会社は,新しい工場の新設にあたって資源環境問題への対応重視をアピールした工場作りを始めている。あらゆる手段を使って,ゴミとしての排出物を出さないということである。毎月1000万冊を優に超えるような生産をしている工場ならば,排出物も膨大でその廃棄コストも非常に大きい。

刷本の結束に使うPPバンドは,粉砕処理をすることで有償回収,再生利用されるようになった。従来逆有償で引き取ってもらっていた巻取紙のワンプも,再利用の用途とルートを見つけることで,処分経費を2/3削減するなどの効果を上げている。

オフ輪,活輪,グラビア輪転が10台以上動いている工場でも,いわゆるゴミとして排出されるものはブランケットの屑,樹脂版の廃版分などで,1週間分合わせてもゴミ収集車で半分程度に過ぎない。再資源化率は80%を越え,当然,排出物処理に掛かる経費削減も実現している。

容器包装リサイクル法の完全施行が容器包装の軽薄短小化を促進することは間違いない。過剰包装問題が騒がれた時とは状況が全く変わっているからだ。顧客に対する容器包装の軽薄短小化の提案は,成熟化した市場におけるシェアアップ競争での大きな武器になる。

今後,家庭ゴミが有料化されていけば,もっと広い範囲で印刷業界に大きな影響を及ぼすことになるだろう。資源環境問題への対応も,これをプラスに転嫁する視点での取組みが重要だろう。

コスト,利益管理

印刷業界の競争環境はますます厳しくなってきた。供給力過剰による価格低下によって,機械を回しても赤字を残すだけという仕事が利益を食いつぶしていくという状況が,単なる言葉の上だけでなく,対処すべき現実の課題となってきている。

したがって,コストの状況,利益の状況を製品単位,工程単位など,細かな単位で捉えている企業では,利益をもたらさない仕事に見切りをつけて切ることも始めている。
また,もはや右肩上がりの売上増加,利益増加は望むべくもないから,個人個人の目標を明確にしてその成果を評価して,昇進や報酬に反映させる脱年功序列の動きも活発になってきた。

印刷業界における経営管理面へのコンピュータ利用も,生産性評価などに広げていく必要があるが,ここでは,汎用のデータベースソフトなどの利用を考えてみるべきである。

2000/08/22 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会