ゴールドラッシュのカリフォルニアで一番儲かった会社はG-パンのリーバイスというのは有名な話である。しかし、e−ビジネスの世界ではリーバイス狙いが多すぎる。今年の冬に向かって、米国の印刷物の受発注やオークションを行う「e-コマースソリューション」が200サイトほどに急増している。しかも印刷会社でなく第三勢力(ニューミドルマン)が立ち上げたものである。だが利用しているのは印刷会社全体のわずか4%であり、さらに主要資材の購買をネットで行うe-プロキュアメント利用は全体の2%であるという(NAPL)。
ただし、多くの印刷会社は日本と同様に既存の得意先を持っていて、こことの間ではデジタルネットワークを活用しての電子送稿が盛んに行われている。
日本に比べて高速デジタルネットワークが安価に利用できるため、WAMNETやVioなどのグラフィックアート向けネットワーク伝送サービスの利用は進んでいる。
このような最新の米国事情の視察を2000年11月26日から12月4日の日程で行なった。9日間で東海岸のボストン、ニューヨーク、ワシントンから西海岸のシリコンバレーをまわって、印刷会社や印刷業向けサービス会社を訪問してきた。
訪問先は、印刷会社が2社、製版会社が1社、出版社内にある印刷会社のプリプレス拠点を1社、DTPの内製とアセッツを外部データセンターにアウトソースする出版社1社、印刷向けのe-ビジネス提供の2社、大量マニュアル制作を隣接のプリントセンターにアウトソースするコンピュータ機器メーカーを1社、合計9社である。
(この報告会は12月21日(木) 15:00〜17:00にJAGATで開催されます)
1.印刷会社・製版会社とネットワーク
米国最大手の製版会社、AGT社は大手週刊誌とT1ライン(1.5Mbps相当に高速デジタル回線)接続されており、RIP済みデータを戻してデジタルプルーフ出力と校正が行われる。校了になればAGTから、契約先の印刷工場のCTPに合せたRIP済みデータがT-1やフレームリレーで伝送され、印刷される。同社では「プリプレスとは面付け・RIP・DDCP出力」というワークフローがある。
ケベコワールドのグループ会社で300人規模のアクメ社は高品質のカラー製版/印刷という専門性に集中している。ティファニーやリーボックなどの高品質のカラーカタログを印刷していて、WAM!NETを利用してデータ交換を行える関係を築いている。これは印刷業が生き残りをかけての買収や吸収合併が進められた例であるが、背景には高速ネットワーク網を利用したデータ処理の集中や出力の分散などで競争力をつける点がある。同社にもグループ内で自社を優位に出来るだけの、いろいろな資質がある。
もう1社の印刷会社はコーラルグラフィックスサービス社で、従業員は300人規模、ここではVio、WAM!NET、インターネットを顧客に会わせて使い分けて利用を行っている。5色以上で表面加工のあるブックカバーの製版・印刷に特化しており、最終的にはDDCPとしてアプルーバル出力し確認をとり、校正終了後、ニューヨークまたはバージニアにデータを送って印刷を行なっている。T1クラスのネットワーク利用で、デジタルカメラからの画像入稿やリモートプルーフなどに利用する。特色や箔押しのシミュレーションも、デジタルプルーフに、ある工夫を加えて行っている。
2.出版社とプリプレス部門
フォーブス社では、同一ビルにケベコワールド社のサテライト拠点QUE-NETが入っている。フォーブスの編集ではクォーク社のQPS(クォークパブリッシングシステム)を利用して、200台以上(海外を含む)のワークステーションでDTP制作される。制作されたページデータは、同じビルに入っているQUE-NETに送られて、プリプレス作業が行われる流れである。校正が終了すると、WAM!NETを利用して、国内版の印刷はイリノイ州の工場などに送り、国際版はTIFF-IT/P1形式で、パリ、シンガポールなどの海外印刷工場に送って、レインボーとCTP出力により、印刷している。リモートプルーフの色合わせには苦労のあとが伺える。
ナショナル・ジオグラフィックス協会は、1888年にワシントンで設立された非営利の世界最大の科学・教育団体である。ここは、出版社でプリプレスまでを社内に持っており、印刷工場に送って印刷しているのが特徴である。校正終了後は、編集済みデータを米国はミシシッピー工場をはじめ世界15ヵ所の印刷工場にCD-ROMに焼きつけられたCTPデータとともに宅配便で送られる。またはWAM!NET経由でも伝送されて、リモートプルーフ出力される。例えば日本の協力工場は富士フイルムのDDCPを利用している。また、過去の膨大な写真データのアセッツや、テレビチャンネル用の3D制作など、コンピュータやディスクパワーが必要な仕事は、上手にアウトソースしていた。
3.マニュアル制作のアウトソース
コンピュータネットワーク機器メーカーのシスコ社は、SCM(サプライチェーンマネージメント)により、パートナー企業とのリアルタイム情報共有を強力に推進している。製品の製造はすべてがパートナーというファブレス企業であるため、インターネット/EC技術を活用し、エキストラネット上でパートナー企業が作る製品の品質管理を行なうなど、e−ビジネスを実践している。ドキュメント制作もアウトソーシングしている。シスコ社の敷地内にゼロックスが運営協力するDPC(ドキュメント・パブリッシング・センター)と呼ばれるコピーセンターがあり、45名の作業スタッフで1000万通し/月のプリントと製本加工を行なっている。シスコ社とDPCとの間にはSCMのためのシェアホルダーがあった。
4.印刷業向けe-ソリューション提供
これからご紹介するDAXとコラブリアもリーバイス狙いには違いない。
ボストン市内のDAX社は印刷制作に特化したISP(インターネット・サービス・プロバイダ)と、データセンター機能を持ったASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)である。わずか23人の会社であるがデータセンターを持ち、顧客/広告会社/出版社/印刷会社などの間でやりとりされるグラフィックデータの交換サービスやアプリケーション提供、教育などを行っている。1996年に設立され、R.R.ドネリー社のWEBサイト立ち上げが最初の仕事であった。例えば、DAX-FTPは面倒なFTPの立ち上げなどを簡単できるサービスであり、「PDFフォーム」を利用する「JobTix」はジョブチケットアプリケーションも開発しているし、ニューズウイークからの委託によって、写真のアセッツ構築とサポートを行っている。Noosh、PrintCafe、PrintConnectなど、印刷受発注のe−コマースサイトとの業務提携も積極的に行なっている。
もう1社訪問したコラブリア社は、日本でも三井物産が日本でのサービスを提供を始めようとしているドットコム会社である。印刷支援型のASPシステムの開発元で、印刷のB2Bシステムを提供している。米国では印刷関連企業180社、印刷発注企業700社が採用している。社長は経営していた印刷会社を売却して、印刷のeビジネスシステムの開発に参入した。 他のドットコム会社では、この営業部分をオークションのような形で効率よくすることなどが提供される。しかし実際の印刷物の受発注には、従来の再版や改訂などの仕事が多い。その場合は、新規ではなく従来のデータとか、従来の仕事に対して今回はどうするなどの営業業務が出てくる。基本的にこのような受発注には、顧客も営業も時間を割きたくは無い。コラブリアのシステムは、受発注の部分から作業指示、また入稿するデータや、過去のデータの管理など、リピートの仕事を効率よくする仕組みも提供している。
WAM!NETやVio、DAXやコラブリアなど、印刷業に向けたサービス事業も印刷業のアウトソーシングとなるサービスを提供している。このため、印刷業がこれらをどう利用していくのかとうのがこれからのポイントと思われる視察であった。
NAPL(National Association of Printing Leadership)ではドットコム企業が200を越えた話も聞いたが、最近は投資資金の流れが冷え込んできているという。しかし今後は全てがインターネットを利用してビジネスを行なう時代となり、従来型のビジネスでは成り立たなくなる。このため印刷会社も変革が必要で、e−コマースソリューションを理解する必要があると強調していた。
2000/12/14 00:00:00