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BtoBビジネスモデル「デジパル」

情報の伝達方法は,ネットワークとデータベースの発達により,格段に速度が速くなり,またデータそのものがコンテンツになることが可能になった。これからは従来の印刷だけでなく,広告や出版,映像,ソフトなどさまざまなメディアが融合されていくことになるだろう。
今回は,印刷を核にして情報業の総合デジタルディストリビュータを目指すワイズビジネス(株)の代表取締役菅原裕高氏に同社の姿勢を伺った。

工場をもたない印刷業として展開

ワイズビジネス(東京・中央区)は,印刷業として,1990年1月に札幌市で設立された。初めの頃は専用機を使い,写植から組版業務を中心に行っていた。仕事はたくさんくるが,印刷までも視野に入れなくては利益率も上がらない。印刷まで請け負うようになったが,他社との差別化を図るためにも営業力の強化に注力した。しかし,新規顧客を開拓するには地方では限界があると思ったという。バブルがはじけて,各社とも印刷発注先を見直す機運があり,やはり首都圏の企業のほうが参入しやすかったという。1994年には東京営業所を設立し,3年後には,顧客先のほとんどが首都圏に集中することから札幌から東京へ本社を移した。その後,大阪,名古屋,仙台,広島と支店を増やしている。
同社の特色のひとつは,基本的に工場をもたないことである。「設備にしばられない営業活動ができる。設備投資以外で特色のある会社になりたい」という思いがあった。設備面では大手に勝てるわけがない。それならばアウトソーシングする提携印刷会社を増やしたほうがいいという考え方である。現在全国で200社の印刷工場とのネットワークがあるそうである。
また融合受注を狙った印刷ビジネスの一環として,画像や地図を扱っている。三井造船システム技研と代理店契約を結び,地図ソフト「MAP info」の取り扱いをしたり,エリアマーケティングソフトを自社開発するなど印刷以外の分野でも業務を拡張していった。
ホームページ制作をサポートするインターネットホームページメーカーやShockwaveのムービーを取り揃えた同シリーズのムービングパックなど自社でのソフト開発・販売も行っている。

デジタルコンビニエンス「デジパル」

このたび同社が立ち上げたBtoBビジネスモデルは,今年2月のPAGE2001で発表したデジタルコンビニエンスサービス「DIGI-PAL(デジパル)」である。印刷からビジネス用品まで身近な商品を総合カタログやWebから受注し,制作納品までを一括管理したシステムの総称であり,日米でビジネスモデル特許を出願中である。WebとDBとDTPから印刷までの流れを情報関連づけた受発注管理システムとして提供していく。
デジパルの総合カタログは年4回の発行予定だという。当初600ページを予定したが900ページにも及び,100万部発行し代理店契約している会社の協力を得て全国の事業所に配布する。Webカタログには,総合カタログ同様に多数のテンプレートが用意されている。
顧客からの発注は,直営店の「デジパルショップ」店頭か,同社の営業マンが顧客のもとへ伺う。もしくはホームページ上での注文,カタログからのFAX,フリーダイヤル,携帯電話やPHSからも注文できる。
商品検索の方法としては,業種,目的・プラン,季節や催事,商品単位で気に入ったデザインを自由に選べるスタイルになっている。適切なページレイアウトを選択し,必要項目を記入したり指定することで簡単に原稿ができる仕組みになっている。注文方式もデザインテンプレートをそのまま使用できるおまかせのイージーオーダーから,基本レイアウトから多少の変更が可能なセミ・カスタムオーダー,全く新しい独自のお好み完成オリジナルのカスタムオーダーと3タイプのオーダーシステムがあり,発注者側の予算やスケジュールの都合によって最適なものに合わせることができる。
利用者のメリットは,手頃な料金でほしい分だけ印刷物が作成できることであり,発注方法の多様化により,いつでもどこからでも発注できることである。
発注されたデータは同社の受注センターで一括管理され,校正をショップやWebを介して発注者の確認後,提携工場に印刷用の最終データとして仕様書付きで送信され,印刷される。デリバリについては,工場からの直接納品以外にもデジパルショップでの受け渡しもある。
直営店の「デジパルショップ」は,「単なるプリントショップではない」と語るように営業の拠点としての役割も担うという。FC(フランチャイズ)展開も行う。加盟店にとっては,受注窓口の拡大に伴い市場の深耕が見込め,インターネットオンラインシステムの活用により工程の短縮とコスト削減が見込めることである。「印刷業界全体での組織作りに役立ちたい」という思いもあってネットワークを拡大していく方針である。
初年度全国主要都市に50店舗設置し,約200社の提携工場に印刷を委託していく。売り上げ目標は40億円である。次年度以降は店舗も300店舗,将来的には1000店舗にして,提携する印刷工場も1000工場に拡大していきたいという。

シーラ社のインターネットワークフロー技術採用

このように大がかりなシステムになると,当然効率よく展開するワークフローが必要になる。それを可能にするため同社では,PDFによるデジタルワークフローを構築した。
同社はこのたびシーラ・コンピュータ社(イスラエル本社)と提携し,同社の開発した,日本初公開のインターネットワークフロー技術「eP2 Online」「eP2 Onsite」を採用した。
「eP2 Online」はWebベースの受発注・管理システムである。ブラウザを通じて発注し,プリプレス工程もすべてブラウザ経由で管理する。Windowsファイルの変換,プリプレス工程の一元管理ができる。OPI,面付け,多種の書体,RIPの標準装置が可能である。
「eP2 Onsite」は,顧客ごとのワークフローをジョブ管理する。初校から色校,下版までのリモートプルーフィングが可能で,顧客による遠隔校正が実現できる。製版と印刷データの作成が自動的に深耕できる。
PDFへのファイル変換,リッピング,トラッピング,デジタル版下作成,面付けまでのオンライン自動処理が可能になり,校了後は最終面付けを済ませて,イメージセッタ,CTP,デジタル印刷機,校正装置などへ配信する。
提携先の印刷工場にも設置してもらって,ネットワークのインフラを作りたいという思いがあるそうである。地域や発注方法に格差がなくなり標準化が図れるメリットもある。
今後は「デジパル」事業の告知を盛んにするとともに大きな流れを作り,顧客の獲得を図っていく予定である。「あくまでも印刷会社のスタンスで,売る仕組みを提供していきたい」と語った。(上野 寿)

JAGATinfo 2001年4月号より

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2001/05/25 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会