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レイアウトの考え方と,写真・画像の扱い方

Studio Flash Cube 和田義徳

論理的なデザイン,合理的な印刷物設計に必要な態度として,基本的にさまざまなデザイン要素を「良く考えて」使用することを重視したい。漫然と配置したり,機能や心理的な効果を無視した使い方を避け,吟味して使用しようという意味である。今回は,写真について考えてみよう。

取り扱い方による効果

 前回,最もシンプルなデザイン要素である罫線について考えてみたが,これには意味がある。「垂直の罫線は緊張感につながり,水平の罫線は安心感につながる」と説明したが,このことは罫線のみならず,面にも当てはまり,写真のトリミングなどにも同様のことがいえる。縦長に写真をトリミングすると,緊張感のある写真となる。逆に,横長ではゆったりした安心感のある写真となる。写真に写った内容や表現意図に合わせて,トリミングすることが効果的である。

 例えば,心理劇やサスペンスなど,緊張感を前面に出すものでは,人の顔などを思い切って縦型にトリミングすることで,効果を上げることができる。一方,ゆったりとした人格などを表現するには,縦型は不向きである。これは,デザインや造形センス以前のことであり,写真が担う情報の意味や内容を把握しなくては,トリミングできないことを意味している。

縦・横の比率

 われわれが慣れ親しんでいるA列・B列の用紙サイズは,すべて横と縦の比が1:√2である。この比率の時にだけ,1/2にした際,前の形と相似形になる。これにより,印刷用紙の標準的な規格として,合理的な役割を果たしている。

 この√2矩形は,古くから黄金比などと並んで,美しい比率としても有名である。一般的に,写真を扱う時にこの比率にすると,自然に見えるから不思議なものである。俗に「落ち着きサイズ」などと呼ぶが,特に意図がない場合は,この比率が無難である。ちなみに,一般になじみの深い35mmカメラは,比率が2:3,つまり1:1.5である。やや横長だが,かなり√2矩形(1:1.41421356)に近い。ついでにいえば,印刷原稿としておなじみの4×5(しのご)は,1:1.25であり,少し左右が短い。

サイズ

 一般に,イメージ写真やダイナミックな写真は大きく,説明的な写真は小さく扱うのが効果的である。ダイナミックな写真を小さく扱っても効果はなく,説明的な写真を大きく扱うと散漫になる。内容が重要だからという理由だけで大きく扱うこともあるが,それでは仕上がりの効果は期待できない。

 例えば,イメージ写真について考えてみよう。この種の写真には,意味的な情報があまり多くないのが一般的である。一方で,読み手の感覚や情緒に強く働きかける力をもっている。この力で引き付け,本当に読ませたい部分に誘導するのが,その役割なのである。従って,小さな扱いでは目立たず,何ら効果を発揮しない。説明的な写真については,読み手は既に関心をもった状態で見るため,サイズを不必要に大きくする必要はない。小さいほうが,かえって集中できるともいえる。

 また,全体のレイアウトから見ても,同じような大きさの写真がだらだらと並ぶと,変化のないつまらない紙面となってしまう。写真の内容や役割を吟味し,はっきりとサイズに差をつけて配置すれば,おのずと生き生きとした紙面となる。そのためには,写真一つひとつの役割や意味を適切に把握して,デザインレイアウトを進行することが必要となる。



月刊プリンターズサークル2001年5月号
「印刷物設計ゼミナール」より抜粋。
詳細は本誌をご覧ください。

関連して、DTP時代のレイアウト方法論というテーマで、DTPはレイアウトデザインの向上にどんな影響を及ぼしたのか、レイアウトデザインの考え方や技法はDTPに生かされているか、DTPでデザインを行う際にもっとも考えなければならないことは何かをとりあげるセミナーを、6月21日に行います。奮ってご参加ください。

2001/05/31 00:00:00


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