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Waveletを用いた画像圧縮技術ECW

画像圧縮の現状と課題
既存の画像圧縮フォーマットの問題点は,圧縮による画像劣化と実画像での非効率な作業を強いられることである。既存の方法での圧縮は,画像の再現性を高めればデータ圧縮率が悪くなり,圧縮率を上げれば画像の再現性が悪くなってしまうことを解決することは不可能だったので,どちらか一方を犠牲にしていた。これはインターネット,LANなどでの高解像度・大容量画像の配信が事実上不可能であるということと変わりない。

ECWフォーマットのメリット
ECWフォーマットはプラグインモジュールを追加することによって,Photoshop 5.5で取り扱うことが可能になる。また,ECWでデータを扱うことによって次のようなメリットがある。
1)高圧縮機能
高品質・高解像度を保持した状態で画像データを高圧縮し,元画素の復元を限りなく忠実な形で再現することが可能。圧縮率は対JPEG比で約1/2〜1/6の容量になる。
2)ピクセル・オン・デマンド機能
ECWで圧縮された画像は,用途に応じて必要な画像領域を必要な解像度で復元できるので,ひとつのデジタルデータで多目的に運用可能。
3)著作権・画像保護機能
ECW画像にはパスワード機能やウォーターマーク機能,印刷制御機能等といった各種のプロテクト情報機能が付加されている。これによって作成した画像が著作者の了解なく二次利用されにくくなる。

ECWフォーマットの利用例
ECW画像フォーマットは,従来のインターネット環境において,主に大規模な画像の送受信を必要とする業務で使用されており,その特性により既存の画像フォーマットでは実現が困難であった数々の技術を提供している。
圧縮効率は従来比1/2〜1/6のファイルサイズで同等の画像品質を保持することができ,高解像度画像のネット配信が可能になる。また,対象となるデバイスの解像度,サイズで(画面,プリンタ,アプリケーションが要求する画像に)復元する機能ももっている。
このユニークな復元方法により,データの自由度が高まり,従来と同じファイルサイズでより高品質の画像を取り扱えるため,あらゆる方面での運用が期待される。以下にその例を挙げてみる。
●電子メールによるデータ配信
ECWフォーマット画像は,データ容量が非常に小さく,一般電話回線を使用したインターネット環境においても,電子メールの添付書類として送付可能である。
●ブラウザでの閲覧
利用者は,ブラウザ上に表示されているECWフォーマット画像から,必要な領域を選択し,リアルタイムで縮小・拡大しながら必要カ所を見ることができる。数百MBもある大容量画像でも,リアルタイムでブラウザから閲覧可能である。
●経済性
ハードディスク,光ディスク,CD-ROMといった記憶媒体に保存する際に,ECWフォーマットを利用することで,今までより多くの画像を保管・管理可能になる。
●単一画像で多目的利用
製版業務用スキャナなどで取り込んだ,データ容量の多い業務用・プロ用の画像データなども,スキャンした元画像データを一度ECWフォーマットに変換することによって,その後各種用途に応じて必要な画像領域を必要な解像度で復元し,デザインからWebまで幅広く利用することができるようになる。

ピクセル・オン・デマンド機能
ECWフォーマットはその機能により,不要な画像領域を取り込む必要はなくなる。
制作者は画像を取り扱う上で,必ずしもデータの画像領域すべてを,作成時の解像度で使用するとは限らない。
一般的な画像を扱うときには,元画像と同一の画素数で作業することが多い。複数画像を扱う場合には,低解像度画像においてはそれほどの問題は起きないが,高解像度画像での作業では著しくパフォーマンスの低下を引き起こしてしまう。その対処方法としては,使用する画像データの複数の異なる解像度データを用意し,用途に応じて使い分けているのが現状である。これにより画像ファイル管理が複雑になり,元画像サイズと同等のファイルが複数存在する可能性があり,また無駄にディスクスペースを使用する場合も出てくる。
ECWはこの点に注目し,ピクセル・オン・デマンド機能を提供している。この機能により,ひとつの画像リソースから,さまざまな用途の画像へ復元することができ,複数のファイルを作成する必要がなくなる。従来のように使用する目的によって多種多様な画像を生成し,管理する手間が省ける。インターネット・イントラネット環境で高解像度画像を参照することが可能になるだろう。特にWeb環境においては,モニタ上の自由度が大幅に改善される。

製作から入稿まで
ECWフォーマットにより圧縮された画像は,ECW Adobe Illustrator(無償配布)との組み合わせにより,データ容量の軽い状態のまま,デザイン,編集することが可能となる。 このことを利用すれば,製作から入稿までの制作における全工程を同一のフォーマットで運用することが可能である。さらに,アタリ用・本画像など,用途別にデータ画像を仕様変更して作成する必要がなくなり,データの管理もしやすくなる。加えてECWフォーマットでは,アルファチャンネル・クリッピングパス情報も保持している。また,高品質のプレビュー画像により,デザイン・編集の際の緻密なパス作業などの多くの作業効率の向上が見込まれる。

コスト削減
現在印刷業界において,代表的な画像フォーマットとしてはEPS,TIFF,JPEGなどが採用されている。これらの実画像データのやりとりは,主にバイク便,宅配便,担当者による手渡しなどの方法を取るケースが多い。
しかし,ECWフォーマットを使用することにより,既存ネットワーク環境で実画像データの送受信が可能になるので,今までデータのやり取りに費やしていた人件費・運賃コスト・MO・CD-ROMなどの記憶媒体に対する消費コストの大幅な削減を図ることができる。また,E-mailの添付書類としても,実画像データの送受信が可能であるため,通信コストも最小限に抑えられる。加えて,作業効率の向上と,作業時間の短縮化も上げられるだろう。
2000年5月16日のテキスト&グラフィックス研究会ミーティング「画像圧縮技術の動向」より

2000/09/05 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会