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紙とインキの科学<1>-知らないと損をする印刷の知識(1)

いまマルチメディアが話題になっているが、紙媒体での印刷物の情報伝達手段は当分の間主流を占めるであろう。その紙媒体の主役は印刷用紙とインキである。近年DTP利用者は増加し、DTPによる印刷物制作は常識になりつつあるが、組版や製版、製本の知識に加え、造本設計上紙やインキの基礎知識も知る必要がある。

● 印刷適性

現在最もポピュラーな印刷方式になっているオフセット印刷を取り上げ、その印刷周辺の関連知識について説明する。

印刷ということは、紙(被印刷物)の上にインキを転写することをいうが、それに関連するインキ、紙、ローラ、ブランケットなどの印刷材料の性質が、よい印刷物を作るのに適しているか否かが鍵となる。これを「印刷材料適性」という。

印刷適性を評価する物指しとしてはインキの転移性、インキ濃度、濃度のバラツキなどがある。印刷適性(printability)とは、良い印刷の仕上がりに欠くことができない紙(被印刷体)およびインキ、ローラなどの印刷材料に求められる性質をいう。 紙に求められる性質には紙の白さ、インキの受理性、適度の吸油性、不透明性などの他に、枚葉印刷のために必要な紙の腰といわれる最低硬度や、輪転印刷の巻取り紙の紙力、表面強度などが求められる。

またインキに求められる性質としては、印刷機上では乾かず、印刷転移後に速く乾燥するインキの安定性、粒度、粘度、透明性などがある。

● 紙の特性

「紙」は、植物繊維その他の繊維を絡み合わせ膠着させて製造したもので、日本では洋紙、和紙、板紙、合成紙などに分類される。また用途により印刷用、筆記用、図画用紙、包装用紙などの区別がある。

印刷・筆記・図画用紙には、非塗工用紙(上質紙など)と塗工紙(アート紙、コート紙、軽量コート紙など)が含まれる。板紙は、厚さ0.3mm以上または坪量100g/u以上のいずれかに入る紙で比較的硬く腰が強く、ダンボール原紙、黄板紙、白板紙、チップボールなどがある。「坪量」とは紙および板紙の重量表示方法で、一定面積当たりの重量で表示し、単位はg/uが一般的である。

紙の特性には色、平滑性,吸油度、蛍光物質などがあり、紙によってインキの発色は影響を受ける。インキは紙の上に刷り重ねられ、文字や画像として人間の目に入る。一般にインキは薄く透明であり下地の、すなわち紙の影響を受けるものである。

アート紙やコート紙のように紙の「平滑性」が高いと、光は表面で散乱しないので印刷濃度は高くなり、網点の形状も崩れにくい。「吸油度」は紙がインキを吸収する度合いをいい、光沢に影響がある。

また「蛍光物質」は紙の白色度を向上させるために入れる。したがってアート紙やコート紙が、カタログや美術印刷などの高級印刷物に多く使われる。

「アート紙」はコート紙の一種である。アート紙にはマットアート紙(艶消しタイプ)特殊アート紙(高白色タイプ、ハイグロスタイプ)などがある。「コート紙」は、アート紙よりも塗工量が少ないコーテッドペーパー(塗工紙)で、日本での特殊品名である。

「コーテッドペーパー」は塗工量により区別され、塗工量が片面10g/u前後を「コート紙」といい、20g/u前後を「アート紙」、5g/u前後を「軽量コート紙」と呼んでいる(つづく

他連載記事参照

2000/09/07 00:00:00


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