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印刷業の伝統的なスタイルを壊すEC?

日本のDTPも相当浸透し、またWEBの制作も裾野が広がった。これらはかなりアメリカに近づいたところであるが、通信は大容量化という点での立ち遅れがあり、これは規制緩和の問題なので、民間の努力では何ともし難い面がある。一方世界的に普及している携帯電話ではモバイルインターネットという点で日本のiモードは普及がトップクラスになった。最近ではNTTのデジタル回線普及の遅れをいろいろな無線手段でカバーしようという考えもみられる。iモードもそんな論調に支えられている気もする。なにしろ今のiモードの先には、ISDNを束ねたような次世代携帯のIMT-2000が控えているのだから。

以上全部を均して考えると、日本のデジタル革命もそこそこいっている。しかし携帯も若年層中心であり、IT革命のようなものは日本では進んでいるようには思えない。今日の日米格差のもっとも際立っている点はECへの取組みである。2000年には日本独自の印刷ECサイトも登場しつつあるし、個別企業でネットワークを介した顧客サービスに力を入れつつあるところもあるし、Collabriaのようなアメリカの見本も日本に紹介されつつある。

しかし日本の印刷業界はECに対しては燃えていない。デジタル化の始まりの時もそうであったが、確かにECも急には進まないだろうから慌てる必要はないであろう。またECはデジタル技術云々の問題ではなく、アメリカでは商取引の原則ともなっている公平さとか明朗さを重んじない習慣が日本にあるからでもある。

割り切った考えをするよりも、ケースバイケースでものごとに対処しようとする方が優先し、例外の海を泳ぐような経営思想がある。最近は官公庁入札の談合は厳しくなったが、民間では談合体質はあるし裏取引、接待、手形など支払いの不明確さなどがあり、これらがある以上、コンピュータを使って取引の処理の自動化を進めるわけにはいかない。

これはBtoBだけではなくBtoCでも同じである。スーパーマーケットやマクドナルドのような均一な商売の仕方は日本から生まれなかったし、日本的な経営からアメリカ的な経営への転換も非常に困難であったので、このようなニュービジネスは日本では新たな参入者によって開拓されてきた。

しかし、公平さとか明朗さを優先にした取引は、相手の信頼を得て長期的には勝つであろう。ECというのは踏絵のようなものかもしれない。これからのビジネスモデルを考える際に、長期的に拓かれる道を進むビジョンを立てるのか、なるべく日本の現状に沿ったやり方をするのかの選択である。いいかえると、若い層を相手にしたビジネスは割り切った方が成功し、壮年相手のビジネスは過去のしがらみ中心の方がなじみやすく、月日とともに若い層相手のやり方が蔓延していくことになる。

昨今のiモードブームは、当面若者が表に出ているが、これが次第にビジネスの本流に入ってくることは確実である。インターネットは机の上の革命の時代は通り越して、人々の行動や働き方と直接結びつくモデルを考えなければならなくなった。先に述べたように日本の社会は変わり難い面があり、ECに抵抗する力も大きいだろうが、ではモバイルインターネットでどのような変化が起きようとしているのか。

これらを使ったECは、顧客との打合せが多い印刷の取引にも大きな影響があるであろう。モバイルインターネットは「営業」をパワーアップし、印刷業の伝統的なスタイルの製造と販売の関係を壊してしまう大変化が起るかもしれない。しかしそれは従来の経営の考えからは出てきにくいもので、印刷のECに関しても新たなビジネスモデルの発案者にチャンスを与えることになるのかもしれないと考える今日この頃である。

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2000/10/05 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会