本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

水を使うオフと水なしオフ - 知らないと損をする印刷の知識(3)

●ウエット・オフ(ウエット印刷)

オフセット印刷方式は平版印刷の一種であることは既に説明したが、その特徴は平版に湿し水を用いる印刷方式である。つまりインキと水が反発する特性を利用した印刷方式でこれを「ウエット・オフセット」という。


多色印刷機で2色以上を連続的に印刷すると、1色の印刷直後まだそのインキが乾かないうちに次の色を重ねて印刷する。これがいろいろな印刷トラブルを起こす原因にもなっている。

まず乾燥の問題である。4色カラーを枚葉オフセットの4色機で印刷する場合、クイックセット・インキを用いても片面印刷後はベトツクので、裏面の印刷のために最低30分位は空気中に放置する必要がある。

そのため印刷枚数にもよるが、両面印刷が終るまで最低1日〜2日を要する。 そこで高価であるが、両面4色同時に印刷可能な4色両面印刷機(8ユニット)が利用される理由がある。

普通の4色機でも片面4色と、両面2色×2色、両面3色×1色など、両面刷り可能な機種がある。両面2色を2回通しで両面4色印刷が可能であるが、2色機による4色印刷と同様に、色調や濃度管理に難しさはあるが生産効率はよい。

多色印刷の場合、2色機でも多色機でも色の印刷順序がある。これを「刷り順」というが、ウエット・プリンティング方式は、「水なしオフ」や「ドライオフ」に比して、後色が乗りにくいという問題があるため、4色を2色機で印刷する場合と、4色機で印刷する場合では刷り順を考慮する。また2色機で印刷する場合は、色調を管理するために2色の「分色校正刷り」が必要である。

近年DTPが普及してから、4色(プロセス・カラー)のことを「CMYK」という言葉が使われているが、昔は「YMCK」と呼んでいた。いつから「Y」と「C」の順序が入れ替わったのか不明であるが、これは印刷の刷り順を表す意味である。

昔の黄インキは不透明であったことや黄版の網点面積が一番多いことから、「Y(黄)」を先刷りする方法をとった。これは色の濃度チェックが容易であること、黄色の後刷りによる色の沈みを避けられる、などが主な理由である。

今では黄インキの透明度が高くなったので、2色機での刷り順は、「CM」「YK」あるいは「CM」「KY」が無難な方法であろう。

●ウォーターレス・オフ(水なし印刷)

最近水を使わない「水なしオフセット」が注目を浴びている。「ウォーターレス・オフセット」の意味で、「乾式平版」のことをいう。このメリットは、湿し水を使わずに印刷できることである。シリコンなどのインキ反発性物質を刷版上の非画線部に形成することにより、画線部だけにインキが付着し印刷ができる。

オフセット印刷は湿し水を使うため、技術的に混乱が多く管理しにくい技術であった。そのためオフセット印刷のオペレータは熟練を要した。印刷機メーカーは、「自動版替装置」や「インキプリセット・システム」、「キーレス・オフセット」などの開発の他に、「自動湿し水コントロール装置」の開発など自動化に取り組んでいるが、印刷技術者にとって「水なしオフ」は長年の夢である。

この他に「ドライ・オフセット」方式がある。これも湿し水を使わないオフセット印刷であるが、刷版は「凸版」を使う。まれに「ドライオフ」と「水なしオフ」とが混同されているが、ドライオフは「凸版のオフセット」である。凸版からブランケットにインキを転移し、ブランケットから紙に転写するオフセット方式である。

版材としては「亜鉛」「黄銅」「マグネシウム」などの資材を用いる。オフセット印刷に比して、湿し水を使わないため版持ちが良く、色調や見当などの印刷機上の安定性が良いなどの理由から、紙器印刷や証券類の地紋印刷などに使われている(つづく)。

他連載記事参照

2000/10/07 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会