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企業向けネットワークサービスIP-VPN

IPルーティング機能を利用したVPN

今までコンピュータ通信を行うためのネットワークには,専用線サービスやフレームリレー/セルリレーなどのサービスを利用していた。これらの通信サービスは,基本的には2点間をケーブルで接続するサービスであった。このため例えばこのような通信サービスを利用して3カ所を接続するには,3角形になるようなケーブル接続を行うのが普通であった。

しかしインターネットは,プロバイダーとの間は専用線などで接続を行うが,それ以降はグローバルなネットワークとして,どことでも通信を行える。これはTCP/IP技術を利用して通信相手を探して接続してくれる仕組みのためである。そのためインターネットに接続されているサイトならば通信が可能である。

この違いとは,専用線サービスなどでは接続先まで必ずケーブルを引いて,その線を利用して通信を行ういわゆるケーブルを借りるサービスであったのに対して,インターネットはケーブルを借りるのではなく,ルーティングサービスを受けるネットワークサービスということになる。専用線が物理的なケーブルを借りるサービスに対して,相手との接続がサービスとして受けられるのがインターネットである。そして,この接続するための仕組みがIPルーティング技術である。

IP-VPNとは,IPルーティング機能を利用したVPN(バーチャルプライベートネットワーク)ということで,接続を行いたいサイト間を仮想的にネットワークがつながっているようにするサービスである。各サイトからは基本的に1つのケーブルで接続を行い,サービス側でルーティングを行い接続を希望するポイントと接続してくれるのが基本的な概念である。このため,新たにサイトが1つ追加されても,ケーブルを1本引くだけで後は既存のサイトと接続を行える,いわゆるLANの延長のようなサービスを受けられる。

セキュリティの高さが特長

今まで専用線などを利用した場合,これは企業の専用ネットワークで,完全にネットワークのケーブルが専用で存在するような意味である。VPNでは専用のケーブルが存在するというわけではない。基本的にはバックボーンに当たる部分は,共通に利用される部分となるため,契約するサイトは,このバックボーンまでのケーブルを用意することになる。これはインターネットの仕組みと非常に似ているが,違うのは接続先が契約したときグループなどで固定になるため,特定のサイト間だけのネットワークとなり,セキュリティが高い。
ここにきて,ネットワーク技術も進歩し,高度なサービスを提供できる環境が整い始めたため,通信事業者からこのようなサービスが出始めている。

なぜ今このようなネットワークが注目されているのか。一つには今までは,企業間を接続するには専用線やフレームリレー/セルリレーなどを利用していたが,アクセスポイントが増えると,増設が大変となり,また1つのポイントが増えると1つ以上の回線を引く必要があるなど,設備コストも非常に大変であった。このため通信利用者からは,日本は通信費用が高いという声が非常に多く出ている。

今どこの企業も社内ではLANが施設され,また各事業所や分散している工場などのLAN同士を接続する必要性が出てきている。
またECということで,BtoBいわゆる企業間のビジネス利用のネットワークが必要ということで,SCM(サプライチェーンマネジメント)のような,部品調達や受発注の自動化など,今までは自社内だけで良かったネットワークがグループ内やまた業界内という単位で接続の必要性が出てきている背景がある。

これを行うためインターネットでは,速度の問題,特にセキュリティという問題があるため,インターネット利用では問題あり,そのため取引企業間を専用線で結びたいが,通信費用は安くしたいという要望が高まっており,このような要望を満たすために出てきたのがVPNサービスである。

また保守を考えた場合,IP-VPNと呼ばれるサービスの良いところは,ルータによるサービスであるため,専用線やフレームリレーのような装置が必要ない。またルータはLANで使う装置と同じであるため,ネットワーク管理者にとっては,LANの延長で管理を行える点である。
サービスによっては,ネットワーク管理用の装置やソフトがそのまま使える場合もあるので,WANという感覚が不要となる。

これからのネットワーク利用を考えると,一般の不特定な相手に対しては,インターネットがある。そして企業を相手にする場合にはIP-VPNの利用が考えられる。そしてECをはじめとする各種アプリケーションは,どちらもインターネット技術を利用したシステムを共通に利用可能となる。これがIP-VPNならば実現でき,この点も今注目されている点である。

いろいろなVPNサービス

VPNの位置づけとなるようなサービスは,いろいろと出てきている。例えばNTTコミュニケーションズでは,Arcstar21という商品名のサービスがある。従来のフレームリレーやセルリレーサービスの技術を生かし,VPNサービスとして距離には関係なくサービスの品質で値段が決まるサービスとして,サイト単位でいくらという価格で提供される。
印刷業向けのGTRAXというサービスは,このネットワークサービス上にセンターサーバが置かれ,印刷業向けのアプリケーションサービスを提供する仕組みである。

NTT東日本からはワイドLANサービスというネットワークサービスが出てきている。ある地域内でLANとLANを光ケーブルで接続するというサービスで,いわゆる広域でブリッジ機能をサービスするワイドLANという名称になっている。
JTからSOLTERIA,NTTコミュニケーションズからはスーパーVPNといった名称のIP-VPNサービスが出てくる。基本的にはルータを局内において接続を行ってくれるルーティングサービスである。

また特殊なサービスとしては,ISPのPSInetから2点間がそれぞれPSInet内ならばPSInetのバックボーンを利用してVPNサービスを提供してくれる。この場合は,出入り口はインターネットと同じであるが,そのポイント間だけはVPNとなるようなサービスである。

(通信&メディア研究会)
出典:社団法人 日本印刷技術協会 機関誌 JAGAT info 2000年10月号

2000/10/06 00:00:00


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