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印刷のEC化は商習慣の破壊から

サプライチェーンマネージメントとか電子調達が話題になって、アメリカでは1999年頃からインターネットで印刷受発注のECサイトを作って、一種の仲介業務をするビジネスが続々と登場した。一般にプリントドットコムと呼ばれるものはすでに100以上あるが、実際にこれらの機能を印刷物発注者が理解して使い出したのは実質的には2000年に入ってからである。

最も盛んと思われるのは金融関係の大企業が、そのようなECサイトを介して印刷発注をオンラインで行うパターンである。主に企業の印刷物がECといった形で扱われるのは、オフィスのパソコンから文具まで必要なものが殆どインターネットで調達できるようになったことと期を一にしている。

出版物は出版社と特定の印刷会社が長期の契約に基づいて仕事をするケースが多いので、オープンなECではなく、オンライン化やお互いのワークフローの結合は1対1のB2Bで行われる傾向にある。商業印刷物の取引がこれからEC化しようとしているが、さまざまな形態があり、まだEC化モデルというのはよく見えない。例えばECサイトの仲介費を受発注のどちらが負担するのかということもなかなか決め難いものである。

drupa2000はこういう多くのECサイトが出展したショウケースでもあった。その殆どが従来の受発注の手続きを合理化する目的をもっているために、既存の慣行を継承する気がない点が特徴的である。つまり印刷物制作において、その材料代やマシンコストの償却などの切り詰めようは殆ど無くなり、むしろ制作準備や進行・チェックなどの人的コストの削減の方が改善しやすいというのが欧米の考え方である。ここらが日本人ならどう考えるのだろうかと思案してしまう点である。

アメリカで軌道に乗り始めた印刷のECサイトは日本にも上陸し始め、2000年に入って市場調査や会社設立が慌しくなってきている。また日本独自の印刷ECサイトも動き出している。しかしITの仕組みさえ導入すれば効果が上がるのではなく、ITを活かせるよう土台をデジタル化し、それに伴って既存の商習慣の破壊を行うことこそが先決のはずである。

(出典:通信&メディア研究会 会報「VEHICLE」137号 より)

2000/10/22 00:00:00


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