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必然としてのEC化

アメリカでは2000年になってECベンチャー企業への出資に黄信号が続出し、店じまいするサーバーショップも次々出ている。ECとつけば仕事をしないでも金が集まった時代は終わったわけで、それぞれのビジネスモデルの優れた点を競い合う淘汰の時代の始まりである。

新聞・雑誌では、ECブームは峠を越えたとか、ECはバブルであるというネガティブな論調も見受けられるが、ECはこれで終わりになるほどヤワなものではなく、長期的な大きな変化を意味する。それは歴史的に考えるとわかるのだが、過去にアメリカの官軍が行っていたCALSやEDIやインターネットなどさまざまな努力が集結して、今のECとなっているからである。

印刷関連で考えると、CALSで情報のライフタイムが問題になりSGMLに焦点があたった。これはコンテンツのHTML化やXML化へとつながっていく。またCALSが商用化して伝票がEDIに変わり、アメリカの新聞広告もEDI化してPDFによる広告出稿の電子送稿が定着した。その直後に印刷受発注のECが登場し、印刷原稿のオンライン処理とともに、XMLによるメッセージングやトランザクションが取り組まれるようになった。

つまり新たにECで一発大もうけしようと考えなくても、印刷においてこの10年間にさまざまなIT的な努力をしていたことを総合化すると、ECのパターンになっていくのである。逆にECといわれているモデルの中身をよくみると、独自に工夫して構築したシステムの統合版であることに気づく。

また今日では他社がうまくやったビジネスのスタイルを真似ようとしても、そのビジネスモデルには特許があるかもしれない。過去には、新技術導入において先行者が負担するリスクを回避して、人真似で効果だけいただいていた、というようなやり方はよくあったのだが、それは通用し難くなる。

こういった競争が最も熾烈なのが、印刷のECサービスである。印刷物の企画から納品までの複雑な業務をIT化するには大変多くの投資が必要になる。ECサイトも、ちょうどソフトウェアのベンダやポータルサイトのように次第に巨人同士のぶつかり合いになろうとしていて、最終的には幾つも残らないだろう。

これで印刷のECが完成するのではない。PostScriptが出てきても印刷会社が同じになるわけではなかったように、巨人によるECとうまく連携がとれるように、個々の企業のECを開発する時代になるのだろう。

(出典:通信&メディア研究会 会報「VEHICLE」138号 より)

2000/10/29 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会