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ゆるやかに立ち上がる印刷のXML対応

今日XMLは単に話題であるだけでなく、ソフト開発に意欲のある人がこぞって取り上げるテーマとなっている。JAGATのホームページの登録者でも、何らかのソフト開発に関係している人は、そろってXMLにも関心や関わりを示している。このように開発側のパワーが結集してくれば、XMLを既存のさまざまなシステムに利用することにそれほど時間はかからないであろう。

JAGATではXMLに関する動向をさまざまな形で取り上げているが、印刷業界とXMLに意欲のある人の関係は必ずしも好意的でスムースなものではなく、XML側の人が印刷業界に失望したり、印刷側の人がXMLに失望することも少なからず見うけられる。実はこのような関係はDTPの初期にPostScriptの評価を巡っても同じようだったことが思い回される。

結論からいうと、将来的にはXMLは印刷業務の主要な手段になり、ずっと深い関係になろう。しかし当面の意識のギャップはなぜ起っているかを考えてみたい。まず最初にXMLの人が印刷業界の人相手にプレゼンをしようとして感じる2つの違和感は、印刷業界の規模の割には印刷業界でXMLに関心のをもっている人が少ないことと、XMLの話を聞く人でも盛りあがりに欠ける点であろう。

確かに印刷業者は日本に統計上何万社もあるが、そのすべてがXMLを必要としているわけではない。DTPは広く印刷業界にも浸透したが、それでも「ほとんど」行き渡ったというほどではない。XMLとなると意識的に取り組むところは一桁パーセントの、それも低い方であろう。だから印刷業界を相手にXMLを啓蒙しても無駄なような印象をもたれるのだが、何万社の数%なら社数は4桁であり、決して少ない集団ではない。問題はコミュニケーション手段であって、何万社相手にPRすると効率が悪いので、数%の集団が明らかになってくればXML側と手を組みやすくなるだろう。

XMLに対する盛りあがりの差は、業態の違いに起因していると思える。DTPの場合でもレイアウトソフトを売ろうという人は、開発後に釣り糸を垂れれば大漁になることを考えるのだろうが、印刷会社は購入したあとで毎日のルーチンの仕事に使って、薄利で何年もビジネスをすることを考えている。つまりDTPソフトだけが問題ではなく、どのように新たなルーチン的仕事をするのかという点が導入の糸口になる。これは開発側が創造的だが一発の勝負に近いのとは対照的である。

そして時代はどちらの側にとっても歩み寄りを必要とする方向になった。ソフト開発の側はパッケージ販売からASPのような継続的な関係を重視する方向になり、印刷会社の側も買ったソフトをただ使うだけではなく、顧客の業務に合わせてカスタマイズしてサービスすることが重要になった。もう少しすると印刷の業務の流れの中でどのようにXMLによる情報伝達がされるか見えてくるであろう。そのときに両者が歩調を合わせて問題解決に向かえるような場が必要になるだろう。

(テキスト&グラフィックス研究会会報 通巻143号より)


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2000/10/31 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会