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e何々はいつまで続く? 露払いとしてのフロンティア

日本経済の閉塞からの脱出という願いを込めてか、ベンチャーとかフロンティアに期待がかかるのは仕方がないにしても、それが日本経済を本当に救うと考えている人はどれくらいあるのだろうか? 政治家と役人とジャーナリズムだけではないのか? 実際にビジネスをしている人は慎重であり、それが問題だという指摘もあろうが、その慎重さは当たっている部分も多くある。

2000年はそれまで一方的に持ち上げられていた、サーバービジネス/バーチャルビジネスが大胆に篩にかけられるようになった年でもあった。そこで考えなければならないのは、確かに今までにない戦略が必要なのはわかるが、IT/ECに乗れば誰でも成功するわけではないことである。つまりIT/ECを身につけるべき自分自身が、そもそも継続的に発展していくビジネスを行っていることが大前提である。

さまざまな新たなビジネスモデルが話題になっているが、インターネットビジネス最新事例集の中のオンライン販売などを見ると、冗談みたいなビジネスがいっぱいあって、そのようなものに投資する方が頓馬である。つまり2000年でやっと投資家が正気に戻ったといえるだろう。

だいたいフロンティアというのは、それが必要とされる時代しか活躍しなくて、実際の商売では後継の別の人が成功するものである。イギリスのピューリタンが新大陸に渡った以降にアメリカの開拓史が始まり、何世代にもわたって農地が作られたが、農家は破産して農地は売られて企業化した農業の時代になった。

パソコンOSでもゲイリー・キルドールのCP/Mは露払いに過ぎず、ビジネスはMS-DOSで開花した。Appleや任天堂が面白くしたTVゲームの分野はSONYのPSがかっさらおうとしている。ブラウザの開拓者であるネットスケープもAOLに買収されてしまった。そして今eクリスマス商戦でイートイズは昨年を下回る売上の予定で、トイザラスのような「モルタル」が「クリック」に進出したワリを食って苦戦している。amazon.comはこのような傾向に先行して先進的な流通システムを構築し、リアルビジネスに傾斜してしまった。

フロンティアは時代の先導役を果たし終えたら、あとは体力のある優良企業がそのノウハウを吸収して稼ぐのである。だからIT/ECの時流にのるだけではなく、それでどれだけ本来のビジネスの使命に近づけるのかを考えなければならない。PAGE2001の基調講演では、ジャーナリズムの浮わついた話を繰り返すのではなく、グラフィックアーツのビジネスが強くなるためのIT/ECを取り上げる。

IT革命とかEC革命という言葉をつかうこともあるが、革命とは旧体制を打ち砕く破壊的なものであることを考えると、グラフィックアーツのビジネスにとっては、IT/ECで他の産業を叩きのめすわけでもなく、自分たちの業界内でリーダー層が入れ替わることでもないので、やはりIT/ECは革命ではなくて進化なのである。その進化のためにはフロンティア精神は必須であるが、「露」と消えない確固たる経営をするような努力も同じように必要であろう。

関連情報 : 夢から現実へ:革命から進化へ

2000/12/22 00:00:00


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