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データフォーマットは先回りして手を打て

● 後手の対応はトラブルの元

印刷用の入稿で、クライアントから受け取ったデータのコンバートをすることがあるが、それによって再度校正が必要になったり、派生的にトラブルを起こし、仕事を長引かせて何のためのデジタルだったのかという人もいる。しかしよくよく調べてみるとデータコンバートは必要なかったということもある。つまり,事前に適切な対応ができていさえすれば,データコンバートをせずとも済んでしまったことだった,といったものである。 多田耕司氏(JAGAT発行「DTP/印刷データ管理のAtoZ」著者)は、どうしてコンバートが必要になるのかについて,よく考えると次のような要因があるという。

1. 事前にデータ制作時に使用しているプラットフォームの確認がされていない
2. 同様に,事前にデータ制作時に使用したアプリケーションとバージョンの確認がされていない
3. 事前の確認が難しいとしても,トラブルを防ぐファイルの渡し方があることを知らない
4. エチケットを無視して渡している
などといったような要因が浮かんでくる。トラブルを未然に防ぎたいのであれば,こうした相手側の環境について手間を惜しまず調べておくことが一番効果的といえる。

よくクライアントの担当者から,「はい,このMOの中にデータが全部入っていますので。よろしくお願いしますね。」とだけいわれてそのまま受け取ってしまうケースがある。このような場合に「すいませんが,何で作られたデータでしょうか? 詳しく教えて下さい。」とひとこといえば済むことも多い。また尋ねたとしても担当者もよく知らない場合がある。だが,こうしたときでも帰社する間に担当者から問い合わせてもらっておきさえすれば,制作された環境を知ることができることも多いのである。

トラブルを防ぐファイルの渡し方というのは,プラットフォームが異なる場合や制作したアプリケーションがない場合など,環境に比較的影響を受けない汎用フォーマットで渡す方法である。エチケットを無視して渡しているものとは,受け取った相手側にトラブルがあろうがなかろうが,何とかするだろう的な考え方で渡しているような場合で、お互いに協力しあって仕事が成り立つのであるという視点からは言語道断といえる。ちょっとしたエチケットに気をつけるだけで,トラブルはぐっと減ることが多い。

● 汎用フォーマットの基本をおさえろ

アプリケーションソフトにはそれぞれ独自のフォーマット形式があることが多い。データを受け取る先に同じアプリケーションがあれば,ことは難無く済んでしまうが,無かった場合では大変なことになってしまう。こうした相手側にアプリケーションが無い場合に最もファイルを開きやすいファイルフォーマット(汎用フォーマット)にして渡してあげることで充分ことが解決できることも多い。

イラストや写真のデータではプラットフォームにあわせて,WindowsならBMPファイル,MacならPICTファイルといったことが基本となる。もちろんこれらはRGBモードの画像となるが,必ず開くことができる。画像が多少劣化してもかまわない場合ならJPEGやGIFファイルに変換するといったこともできる。JPEGにする場合は品質が選べるのならばできる限り劣化しないよう低圧縮で渡すようにするとよい。また,JPEGであればCMYKモードやフルカラーを選択することも可能だ。また複数の画像フォーマットを扱いたいが手元に画像ソフトがない場合もあるだろう。そうした時にはフリーウェアやシェアウェアでも十分扱えるユーティリティソフトもあるので揃えておくといいだろう。

ワープロソフトによる文書ファイルならテキスト形式に落として渡すことが基本となる。この場合はプレーンテキストとして渡すようにする。ExcelやAccessなどの表やデータベースになったファイルではタブ区切りやカンマ区切りのテキストファイル(CSV形式といわれる)にして渡すようにする。

今日ではExcelやAccessを持っていない場合はあまりないのだが,バージョンが違って開かないケースが圧倒的に多い。表計算ソフトを使用している場合,WindowsではExcelを,MacであればExcel以外にもクラリスワークスやApple Worksなどのソフトを使っている場合もあるだろう。互いに違った表計算ソフトを使っている場合,表の中の数値を生かして使いたい場合にも有効である。

計算式ごと反映させたい場合にはSYLK形式といわれるテキストファイルにして渡せば,計算式やセルの位置などを保持しているので異なったアプリケーションでもデータを活用することができる。

またグラフやスライド・グラフィックスといった図版になったものではPICT,BMP,GIFなどの形式で渡すこともできる。またExcel98以上のバージョンであればHTML書き出しをおこなってテキストファイルにすれば,ブラウザーなどのHTMLを解釈できるソフトならば,自動的にグラフがGIFファイルとして表示される。これはWordなどHTML書き出し機能があるソフトなら有効な方法である。

多田耕司著「DTP/印刷データ管理のAtoZ」(JAGAT発行)より

2001/04/20 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会