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IT革命は一過性、必要なのは印刷のOS作り

20世紀最後の10年はすざまじいコンピュータの普及と言うのが最大の特徴であった。この進歩は今後まだ10年以上は続くだろうが、コンピュータやネットワークの活用はどこでも当たり前になり、その利用の差が使う人々の優勢劣勢を決める時代ではなくなるであろう。IT革命は差が生じて敗者が一掃されるまでの一過性の出来事で、その意味では必須だが、そのあとにはやはりそれぞれの本業の力量が問われる時代になる。

このことは企業にとっても、またそこで働く個人にとっても同じで、Windowsやネットワークの知識をひけらかしておれる時代は、あと何年もないかもしれない。その後、自分は何をしてきたのかと悩まないためには、何を本業にするか、IT革命後にそれはどのような様式になっているのかを考えておかなければならない。

IT革命によってビジネスの様式が変化していき、従来の取引関係は壊されて再構築されるであろうが、市場がシフトしているだけで需要の総量がそれほど変わるわけではない。印刷ビジネスは椅子取りゲームのようなもので、印刷物の企画制作という上半身に加えて、自分の足腰をITで強化できるところが勝つのである。

21世紀初頭の印刷産業は「まだ伸びる」というトーンになっているが、これは予測されるさまざまな紙の印刷のマイナス分を、デジタルメディアとかソフト化サービス化を取り込んでうまく埋め合わせた場合の想定に過ぎず、だから紙にインキをのせることの付加価値も量も、それだけでは減らざるを得ないとのが現実であろう。

今日の印刷ビジネスの価格低迷などから、業界の状況に愚痴る声はよく聞かれるが、ボーダーレス化の時代にあっては、今までの立場を守ることさえできない。印刷業界はDTPでデジタル化をしても、まだデジタルを武器として世の中に打って出てはいない。ECのような新たなマーケティングは、既存の商売のやり方に対する挑戦であり、攻めの姿勢でないと効果あるものとはならないだろう。

では印刷はどこに向かって攻めて行くのか? 「IT投資は個別にはペイせず、トータルでペイする」Techno Focus #1163「誰が年賀状をIT化するのか」では、紙の印刷というビジネスを取り巻く周囲に、コの字型の3つの能力を強化する必要があり、それらはすべてITに関連していることを述べた。コの字とは、印刷工程が上から下に向かうとすると、第1にはコの字の上辺にあたる印刷工程に入ってくる情報を処理する能力、第2はコの字の下辺にあたり印刷物ができあがってからエンドユーザに届けられる形にするフルフィルメントの能力、第3にコの字の横の辺は関連業者との協同作業であるサプライチェーンマネジメント(SCM)の能力である。

いわゆるITというのは3つの能力に共通したものとして取り組まないとロスが多い。第1のところでは、印刷原稿の情報処理や、DTPに関連したワークフロー/ネットワークの問題があるが、そこから受発注の電子化や、その処理の自動化という課題に発展し、JobTicket,JDF,XMLの取組みが必須になる。
第2のフルフィルメントでは、例えば年賀状ならバリアブルプリントで葉書表面の宛名印刷や、各宛名ごとの「一筆」書き込みの刷り込みから、投函までのサービスがあるだろうし、定期刊行物なら封入・宛名・配達業者渡しから、宛名データ管理などがある。

第3のSCMは、今話題のECサービスサイトのように、日常のコミュニケーションから、さまざまな調達、また決済まで、間接部門に相当する部分の電子化がある。これらすべてを自分のビジネスに組み込んで、IT投資もトータルでペイするようにしないと、利益を生むものとはなりにくい。
このようにコの字の部分をITで能力強化するなら、印刷からいろいろな仕事に派生する可能性が高くなる。このコの字部分というのは、実は印刷というアプリケーションのためのOS(オペレーティングシステム)のようなものである。PAGE2001で基調講演「eビジネスとしてのグラフィックサービス」を行うMills Davis氏は、こういった視点での土台の開発に携わってきた。印刷にとってのIT革命の目標とは、印刷を効率化するとともに、それ自身のオーバーヘッドをいかに少なくし、賢く便利で拡張性のあるOSのようなものを作ることではないのだろうか。

PAGE2001コンファレンス

2001/01/11 00:00:00


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