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ワークフロー統合は夢か?

CIM/FAの基本的な考え方もそうだと思うが,ワークフローとは,各工程をつないでその間のデータの受け渡しを自動化するための仕組みである。したがって,ワークフローの統合とかワークフローの自動化ということばはそもそも本質的に矛盾した表現といえる。もともとワークフローを構築するときは,各工程をつないで処理を自動化することが前提でなければならない。にもかかわらず既存のワークフローをあらためて統合し自動化して効率を上げようという考えが広まっているのは,ここ10年ほどのデジタル化あるいはコンピュータ化の急進に心を奪われて,各工程それぞれの効率にのみ目が向いていた影響も小さくないだろう。もっともそう簡単に統合的自動処理ワークフローが実現するわけではないが,少なくとも,その考え方だけは押さえておきたい。

PAGE2001のコンファレンス「出力とFA」トラックではプリプレスと印刷およびそれらを結ぶデータフローという3つの視点から,統合と自動化に向けてのこれからのワークフローの姿をさぐる。

進化するRIP

プリプレスではRIPを中心とするPostScriptワークフローが確立する一方,PostScriptが抱える問題に対していくつかの提案がなされてきた。アプローチの方法はさまざまだが,要はRIPをどうするかだったといってよい。そしてPostScriptを作った当のアドビの解答がExtremeであった。

PDFの直接処理やジョブチケットによる自動化などExtremeがワークフローシステムに投げかけたテーマは少なくないが,もっとも大きな影響を与えたのは,じつはモジュールの概念によってRIPの機能を分離し,いわばその中身を開いて見せたことではないだろうか。その後,Extreme自体の話題はあまり聞かれなくなってしまったが,RIPをワークフローのボトルネックだとする見方から,RIPこそワークフロー効率化の鍵だととらえる観点への転換は確実に根付いている。これはRIPにとっては大きな進化だと考えられる。

セッション「RIP/出力のワークフロー」(C1)では,進化するRIPについてメーカー側から最新の動向を聞くことになる。日本アグフアゲバルトの国井忠男氏にはApogeeシリーズを中心に,またイー・エフ・アイの田中和宏氏にはFieryを中心に,それぞれRIPの進化・変化という視点から今いったいなにが起きているのか,RIPを中心としたプリプレス・ワークフローがこれからどうなっていくのかをうかがう。
また,モデレータの富士ゼロックス 嶋田和成氏には,RIPの歴史を簡単にふりかえっていただき,たんなる演算処理装置ではないRIPの新たな位置づけを示していただく。ディスカッションでは,さらに議論を進めてCTPやPODも視野に入れた今後の出力ワークフローの姿を考える。

CIM/FAとデジタルワークフローの関係

FAということばに古色蒼然という印象を受ける人がいるかもしれないし,CIMと聞いて今さらと思う人もいるだろう。しかし,デジタル化とネットワーク化の進展によって,すなわちコンピュータ利用の浸透によって,今こそCIM/FAに新たな光を当てるべきときなのではないだろうか。

FA=Factory Automationとは,工場の生産機能を構成する要素と生産行為(生産計画や生産管理)を統合して,総合的な自動化を行うことであり,CIM=Computer Integrated Manufacturingとは,生産情報をネットワークとデータベースを使って統括的に管理するシステムのことである。これは結局,上述のワークフローの考え方とぴったり重なる。

セッション「FAのためのデータ管理」(C2)では,AMPACを例にFAのありかたを考える。AMPAC(Architecture Model and PArameer Coding for graphic arts)は,印刷の完全自動化のために必要な制御要素(パラメータ)とそれらの関係をデータベース化して使おうという仕組みである。AMPACはすでにJIS化(JIS X 9206-1)されているが,まだご存じない方もいらっしゃるだろう。そこで,まず室蘭工業大学の三品博達教授にAMPACの概要をうかがう。しかしAMPACはこれから将来へ向けてのトピックであり,それとは別に各印刷会社はそれぞれ独自に統合化・自動化に取り組んでいる。大日本印刷(株)の江川裕仁氏に大日本印刷の現実の取り組みについてお話いただく。そして,ディスカッションではAMPACの可能性や課題を議論しながら,FA/CIMのためのこれからのデータ管理のありかたを考える。

なお,モデレータの三品氏も,大日本印刷の江川氏も,メーカーの考えやほかの印刷会社のご意見もぜひうかがいたいとおっしゃっているので,ご参加のうえぜひともディスカッションに加わっていただきたい。

ワークフロー統合へのステップ

プリプレス(C1)と,印刷起源のワークフロー(C2)を考える2つのセッションに対して,それらをつなぐ方法を考えるのが,JDFをメインとした「工程間のデータフロー」(C3)である。C1からC2,C3へとだんだん夢物語の度合いが強くなっていくが,そもそもこのトラックで扱うのはワークフローの将来の姿であって,今日明日すぐに役立つ知識を提供しようというわけではないのでご注意を。

JDF(Job Definition Format)はCIP4(International Cooperation For The Integration of Processes in Prepress, Press and Postpress )が決めようとしているデータ処理/データ管理のためのメタ・データフォーマットである。CIP4はCIP3にProcessということばを加えたもので,CIP3時代に策定されたPPFと,アドビのPJTFからバージョンアップされたJDFというデータ処理のためのふたつのフォーマットを打ち出している。これらはいずれはJDFに一本化するといわれているが,JDFはまだ登場したばかりで不確定な要素が多く,これからどうなるか軽々に予想できない。

C3セッションでは,まず小森コーポレーションの吉川武志氏から,CIP4の最新情報やJDF仕様の概要をうかがう。そして,大日本スクリーン製造の木谷孝則氏と富士写真フイルムの宮川正氏には,システム開発側からみたJDFについて,またメーカー側のワークフローシステムについての基本的な考え方をうかがう。ディスカッションではJDFの将来性についてプラス・マイナスそれぞれの観点から議論し,さらに統合的なワークフローのためのデータハンドリングのあり方を考えたい。

PAGE2001特別連載もご覧下さい。

2001/01/18 00:00:00


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