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「物作り」は、運用の仕掛けがキーになる

drupa2000は物作りの仕組みが拡大再生産から方向転換したことを感じさせるものであった。Xeroxの大規模出展、ハイデルなどの電子写真への参入、超高速オフ輪や製本機のダウンサイジング、そして多数の印刷ドットコム企業が出展などが注目されたし、画像処理環境もネットワークが前提となってきた。
しかしデジタルカメラの爆発的な普及がカラーマネージメントの標準化を混沌とさせているように、デジタル化では従来の垣根を越えた規約の覇権を巡る争いなども始った。バイオレットレーザーの登場でCTPの方式競争は第2ラウンドへ入ってきたが、青色LED/半導体レーザー特許問題の泥沼化が気掛かりになるが、CTPの次を行く次世代技術であるCTC(コンピュータ to シリンダ)も実用化が始ろうとしている。2001年はこれまでに手に入れた「徹底した物作りの道具」のさらなる追求とこれを支える「高度な運用の仕掛け」がキーになってきた。

カラーマネージメントの次は「画質管理」

カラーマネジメントの枠組みはかなり揺るぎないものとなり、実用化も進んでいる。しかし、カラーマネジメントの根幹である「測色」は、実はかなりあいまいなものであり、ある意味メーカーが変われば結果も変わるという世界であった。最近になり、測色機の較正用チャートとしてマクベスチャートが規格化されたように、測色規格の見直しが進んでいる。

次に、カラーマネジメントをさらに発展させた考え方として、新たに「画質管理」という考え方が出てきている。これは、画質そのものを数値化し、評価しようとするもので、人間の主観に頼っていた画質評価を客観化することにより、処理やメンテの自動化を図るものである。これはプリンタや複写機の世界から出てきた考え方であるが、近い将来、印刷業界にも波及してくると考えられる。

PAGE2001のセッションC4「色管理から画質管理へ」では、モデレータに(株)富士通研究所 臼井 信昭氏、スピーカーにキヤノン(株)の桑山 哲郎氏、QEA 日本オフィスの福本 晃氏を迎え、
キヤノン(株)の桑山氏より、事務機器やカメラ、家電分野などさまざまな立場で検討され混沌とするカラーマネジメントに関する標準化活動の概況について
(株)富士通研究所 臼井氏より、画像に関する標準化活動の中から印刷周辺の測色、画質評価の最新動向について
世界唯一の画質評価機を販売している QEA社の福本氏から画像の客観的評価方法とその計測器について
それぞれお話をいただく。

カラー標準化の新たな挑戦

sRGBは、標準モニタとモニタを見る視環境を定義することにより、RGB信号の色味を一意に規定している。RGBは入力信号として用いられることが多いので、色空間を定義する条件そのものが実用上問題になることはあまりない。一方でCMYKは、あるインキをある紙に転移した結果を主観的に評価するので、CMYK値を一意に規定しようとすると、その作成条件が非常にシビアに問われることになる。印刷機の不安定さとそれを克服するための従来のアナログの管理手法が問題をより複雑化している。

しかし、メディアの多様化や制作環境の分散化が進むことにより、色についてのコミュニケーションを円滑にするためのCMYKカラースペースの標準化、いわば「sCMYK」の存在が強く求められつつある。この場合アカデミックな議論よりも、厳密さと手軽さ、あるいはコストとの兼ね合いといったビジネス要素が多く入ってくる。

セッションC5の「カラー標準化の新たな挑戦」では、モデレータに(株)富士通研究所の臼井 信昭氏、スピーカーにアドビシステムズ(株)のPeter Constable氏、(株)プロ・バンクの庄司 正幸氏、(有)カラーズの平原 篤邦氏を迎え、
アドビシステムズ(株)のPeter Constable氏より、「Accurate Color using ICC Profiles」というテーマで、(1)カラーワーキングスペースの概念、(2)米国でのCMYKカラー標準化事情、(3)Illustrator, Photoshop,InDesignのカラーマネージメントについて
(株)プロ・バンクの 庄司氏より、「契約印刷条件としてのICCプロファイル活用」というテーマで、JPCで行っているカラープリンタ実験の目的と内容について、(1)実験時のソースプロファイル選択の経緯と理由、(2)プロファイルと作成条件の関係、(3)標準化と高品質の狭間でどうあるべきか、について
(有)カラーズの平原氏より、日本電子製版工業会で作成した「NDK工程管理用デジタルテストチャート」製作に際して、(1)作成の動機、目的、(2)工程管理からみた標準化の為の75%網濃度管理の利点、(3)国際標準が達成しにくい日本印刷製版業界の特殊事情に挑む、というお話をいただく。

画像センサーの発展とフィルムレス

デジタルカメラの高品質化と低価格化が急速に進み、プロの仕事でも使えるという認識がユーザ側にも定着しつつある。一時期かなり問題となったRGBデータでの入稿についても製版・印刷会社に少しずつではあるがノウハウが蓄積されてきた。

そこで、セッションC6「画像入稿の電子化」では、CCDやCMOS画像センサの発達はデジタルカメラの普及をもたらし、最後のアナログ技術であるカラーフィルムの分野に迫っている中で、今後の画像センサの発展はフィルムレスをもたらかなどを、技術的側面を中心に画質評価、現状認識と将来展望、素子やデバイス開発側からオールデジタル化の展望とともに検討する。

モデレータには青山電子倶楽部(株)の新宮 武彦氏、スピーカーに松下電子工業(株) 松長 誠之氏、(株)マガジンハウスの茂手木 秀行氏、大日本スクリーン製造(株)の郡司 秀明氏、(株)プロバンクの庄司 正幸氏を迎え、
松下電子工業(株)の松長氏より、デジタルカメラの根幹技術であるCCDとCMOSという撮像素子の解説をしていただく。
次に(株)マガジンハウスの茂手木氏より、カメラマンの立場から現状のワークフローの解説と今後の課題についてお話いただく。
また、本セッションでは事前準備として、現在市販されている35ミリ一眼レフタイプの各社のデジタルカメラ(300万画素クラス以上)、キヤノン EOS D30、コダック DCS560/660、ニコン D1、富士写真フイルム FinePixS1 Proをターゲットに色作りや技術的なポイント等について各社に事前アンケートの実施とサンプル画像の提供をお願いしており、セッション後半では、これらを題材にライブ感覚でのパネルディスカッションを行う。

クロスメディア化における画像処理環境

セッションD1の「画像処理環境とツール」では画像処理は永らくスタンドアロンのアプリであった。クロスメディア化のなかで、新しい圧縮方式JPEG2000、Webで画像のどこが注目されたか分かるFlashpixをはじめTIFF/IT、同/FX、MCRの動きやツールをとり上げる。最新の画像処理環境や標準化動向を長らく電機メーカーで画像データを扱ってこられたモデレータの東京工芸大学 小野文孝氏にまとめて頂く。スピーカーのNTTプリンテック 松木 眞氏からはTIFFとMRCの動向について、また、キヤノン(株) 石井 克巳からはJPEG 2000とFlashpixの動向とツールについて最新のお話を頂く。

海外からスピーカーを招いてのCTC最新情報

セッションD2の「コンピュータtoシリンダ」は昨年のdrupa2000やグラフエキスポでCTPの次に来る技術として注目された最新技術である。印刷機の版シリンダに直接、刷版を作成する技術で、インクリボン方式のダイコウエブ(DICOWB:ローランド)と、液状感光材料を塗布するSPプロセス(クレオサイテックス)の動向を検討する。
スピーカーには海外から2人をお招きしており、DicoWebを開発したディック・マンローランド社からはディートマー・ツット氏、SPプロセスを開発したクレオサイテックス社からはブラッド・パルマー氏、またSP方式に適合する液状感材のThermolite(サーモライト)を提供するアグフア・ゲバルトからは椿 豊氏に、それぞれ最もホットな画像形成技術のお話を頂く。

PAGE2001コンファレンス

PAGE2001特別連載もご覧下さい。

2001/01/19 00:00:00


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