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真似事でお茶濁すは、eBusiness敗残者への道

一見すると同じようなことをしていても、日々の努力の差は結果として大きな違いになる。今ほとんどの企業はホームページを立てているが、日本では本気でやっていると思えるところは少ない。amazon.comなどは投資に次ぐ投資でいつまでも赤字であったが、借入金をその場しのぎで使うのではなく、いわゆる「クリック」の工夫以外にも、在庫管理や発送など「モルタル」においても今までにないビジネススタイルというのを開発してきた。そのようなエネルギーを感じさせるところというのはそれほどない。

BtoBでもBtoCでも、自分の必要なものをインターネットで検索してみると、「詳細はmailかfaxでお問い合わせ下さい」というばかばかしいメッセージを表示しているサイトがある。例え細かい品目やデータがあっても、「在庫はお問い合わせ下さい」とか「納期は2〜3週間かかります」というような、ほとんどECの概念に逆らうような商売の仕方が、まだまかり通っている。

中には在庫数をリアルタイムに表示しているところもあるが、そうするためには商品管理のデータベースとWEBが結びついていなければならない。しかしそうしていないサイトもあることは、商品管理と関係なくWEBでものを売ろうという矛盾した姿勢が問題である。リアルビジネスのサプライチェーンが出来ていないのに効果的なECはありえないのだから、お茶を濁したようなやり方はそのうち負けるに決まっている。

また日本の製造メーカーは、過去の流通のしがらみとか、製造販売の分離の伝統などで、直販しないとことろも多いが、それもEC時代には問題がある。ECは中間のムダを省いてお互いにメリットを享受しようというところから駆動され、結局オープンな取引を余儀なくさせるものであろう。これに抵抗して時間稼ぎをしているのが現状の姿である。

昨年末から年始にかけて、情報提供のホームページで更新されないところが多く、TVや新聞は年末年始でもやっているのに、なぜホームページは休むのだ、という批判をしていた人がいた。どうせ新聞もTVも情報の作り貯めがしてあって、年末年始は休んでいる人もいるのだろうが、交代では誰かが出ている。なぜホームページにそのやり方が適応されないのか不思議である。結局のところ、WEBマスターに出版とかジャーナリズムの意識が薄いからではないのか。

IT機器くらいはどこでも導入できるようになったが、その活用に関しては動機付けがまだされていないように思える。しかし世の中がネット上を走り出したのは確実であり、そこにおける日々の努力の差が将来の鍵を握ることは間違いない。特にネット上のサービス提供は、TVのチャンネルを次々切り替えるように簡単に比較がされてしまうので、eBusinessにしながらレスポンスが悪いとマイナス面は非常に目立ってしまうだろう。

PAGE2001基調講演の資料が Mills Davis から届いてざっと目を通したが、やはりアメリカは本気度が違うというのが第一印象である。テーマは printing interprise となっていて、ネット上で自社の能力を拡張する、というような意味である。この説明は別の記事になるが、ぜひこの基調講演を聞いて、本気で印刷のeBusinessを考えたらこうなる、という姿を知ってもらいたい。

また、2月9日のeBusinessトラックでは、これから10年後,印刷関連業務はネットワーク上のECとしてすべからく行われるようになるだろうことを前提に、3つの視点からセッションを用意した。まず「印刷ECが目指すもの」(B4)では、先行するアメリカのECとして、その一つの典型であるCollabriaと、アメリカのECの背景にも通じている方々のプレゼンをベースに、印刷ECのコンセプトとして重要なことは何かを考える。

第2の「日本のEC化の現状と課題」(B5)は、印刷のECサイトを運営している方々のプレゼンと、新聞・広告分野のEC/EDIの動向から、日本的な課題と今後の展開の可能性を考える。第3は「受発注のEC化に備える」(B6)をテーマに、印刷会社のパネルがどのようにECに対応しようとしているかを取り上げる。

どうも印刷ECは過去の設備導入のデジタル化のように、印刷業界一様に進むのではなく、印刷業界を分断してしまうほどの力を持つのではないかと思える。

PAGE2001コンファレンス

PAGE2001特別連載もご覧下さい。

2001/01/24 00:00:00


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