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印刷はフレキシブルでなければならない

●印刷に対するクライアントの変化●

〜PAGE2001セミナー2/8「Digital Printing Day」〜

PAGE2001では、2月8日をDigital Printing Dayとして21世紀の新しい印刷分野をご紹介します。数年前のオンデマンドブームの時代を過ぎ、確実に新しい動き始めたこの分野のビジネスとそれを支える技術について3つのテーマで企画しました。
2/8開催の「Digital Printing Day」トラックのご紹介をいたします。


■印刷は大量複製のビジネスであった
印刷の第一の定義は「複製」ということであろう。産業革命以降は、経済・情報の大衆化とともに、印刷の複製も「大量」という文字が付くことで、大きな産業へと成長した。20世紀後半には生産技術の飛躍的な進歩によって、大量生産・大量消費のシステムが出来あがった。消費社会は情報化社会をもたらし、マスコミュニケーション産業が花開いた。経済規模は一挙に拡大したが、膨大なエネルギーの消費、過剰生産、使い捨ての結果、環境問題を引き起こし、産業全般にその方向転換を迫られることとなった。

もともと情報は発信者と受信者がいて成り立つものあるが、大量発信システムに力が注がれ、受信者を確保する手法やコミニュケーション技術の限界、あるいはコスト事情によって、一方向からの情報を大量に発生させ、ムダを承知の上で、絶対量の多さによって受信者を開拓するというマスマーケティングの方法が当たり前であった。その方法しか手段がなかった時代には正しい選択であった。なんといってもマス経済が前提であった。

■印刷はカスタマイズされる時代
21世紀を迎え量から質の経済へと軸を変えるときが来たようだ。マスプロ・マスマーケティングが悪いわけでも量を否定するわけでもない。これからは、顔の見える量でなければならない、ということである。つまり社会の成熟化は「その他大勢」ということを受け入れないのである。「個人、個人」とか「1点、1点」とはそういうことである。しかしこの言葉は「大量」「同一」「複製」という印刷の定義とはまったく相反するコンセプトである。しかし本当は、コミニュケーションの原点は1対1の会話であるように、1人の人間のニーズをどこまで商品化できるかが重要なキーであろう。物(製品)に対する消費エネルギーの質が変ってしまったといえるだろう。「安くても買わない」「選択できなければ興味がない」「自分の生活スタイルに合わない」「いつも舞台の上にいたい」「自分の居場所が欲しい」という消費キーワードを聞いていると、実は物が欲しいのではなく、「自分はどうありたいのか」という精神的充足への渇望が大きく、その精神的充足をサポートする物(商品)が結果的に売れているということである。このような消費社会の変化に対応するには、消費者の一人ひとりの顔を見る必要がある。

■カスタマイズ/効率/顧客満足の三拍子
では一人ひとりの顔を見るにはどのような技術的背景が必要なのか。まず、ワン・トゥ・ワンマーケティングに必要なデータ収集である。店頭、DM、インターネットなどによる仕掛け作りが必要である。Webを活用した情報系のデータベースの構築などは、マーケティングとDB+ネットワークの総合力が要求されるが、これからはASPサービスなどを上手く活用することが賢明である。次ぎにDBから個々に見合った内容を取り出し、いかにデータ加工をするかである。カスタマイズであるが、どこまで顧客の要求・潜在ニーズに合わせたシステムにするかは、採算性、費用対効果の問題である。従来はカスタマイズ=非生産性、非効率であった。いや現在もその通りである。服部メソッドで有名な服部隆幸氏は「顧客の個別商品を作るのが真のカスタマイズなのか、残念ながら我々は否定的である」「カスタマイズは顧客学習の成果である」という。つまり、カスタマイズの究極は一点制作にならざるを得ない。もともと一点制作のビジネスは昔からある。問題は大量生産経済の中に、いかにカスタマズシステムを導入するかである。その条件はカスタマイズ/効率/顧客満足のキーワードが互いに矛盾しないことである。これからは顧客が物作りに参加し、カスタマイズを自ら行なったり、できることできないことの限界をよく理解してもらい、逆にファンになってもらうことも大きなカスタマイズ技術であると服部氏はいう。

実はこのカスタマイズ/効率/顧客満足の三拍子こそが最難関であった。従来型のマスプロダクションシステムであれば当然採算はとれない。そこには一見矛盾するような自動化とカスタマイズ化(個別対応)のシステムが必要である。たとえば、ページレイアウトを考えた場合、同一大量ではなく冊子ごとに個別に変化する図やグラフ含んだページ処理を自動処理したり、それぞれページ数が違う冊子を印刷するといったことである。人ひとりの個性、能力、目的が違う教育教材の制作やそれぞれ条件が異なる契約・約款などは、このような可変情報を自動で高速大量処理されることで、新しいマーケットを獲得することができよう。一方、もともと印刷は多品種少ロットのものは昔から多い世界だが、非効率で高コストになりやすい。そこでクライアントは刷り置きをするが、在庫になったり使えなくなり廃棄処分になることも多かった。顧客満足は当然悪い。そこでクライアントは自らが内制化するか、制作をあきらめるかであるが、それでは印刷会社の存在意義がとわれてしまう。印刷からのソリューションはいくらでもある。効率が悪いのは、オンデマド印刷機あるいはデジタルプリンターのせいではない。前後の仕組みの問題である。原稿のオンライン入稿(Webの活用)、データベース化、デザインのマス・カスタマイズ化、バックオフィスの機能強化、加工度のアップなど、PODとしてのワークフローの構築によって新たな付加価値戦略が可能である。少ロットの個人出版、個人写真集、復刻、POP、メニュー、価格表、地域別ポスターなど範囲は広い。

■印刷のカギは、情報系DBとネットワークとマーケティング
PODによる印刷物の流れは当然従来の工程とは全く違う。それは究極的には、ネットワークと通じてその先にあるデジタル印刷機をコントロールすることで「欲しい時、欲しい場所で、欲しい量だけ」カスタマイズしながら出力(最終商品)することができる。個々にはまだ問題はあるにしても、同一大量複製の印刷の世界とは異なったビジネスチャンスの環境がそこにはあるはずだ。PODにおける印刷会社の役割は、印刷物を刷ることではなく、印刷内容の情報管理と印刷メディアを使った販促管理であるといえよう。

●Digital Printing Dayのセミナー申込みはお済みですか!
PAGE2001では、2月8日をDigital Printing Dayとして21世紀の新しい印刷分野の台頭をご紹介する。数年前のブームの時代を過ぎ確実に動き始めたビジネスとそれを支える技術について是非ご覧下さい。9:00-11:00は「One to One印刷ビジネス」と題し、誌面レイアウトや誌面の組合などバリアブル印刷の活用事例とそのソフトを紹介しながら、印刷の支援ビジネスの一端をお話いただきます。スピーカは大倉電機サービス(株)の坪井秀剛氏、とイージー・システムズ・ジャパン(株) の佐藤勝徳氏。

12:00-14:00までは「プリントオンデマンド」と題して、デジタル印刷を利用した本格的なビジネス展開の事例とそのワークフローを紹介していただきます。スピーカは日本IBM(株)の海老沢葉一氏と東京書籍印刷(株)小林肇 氏。 

15:00-17:00は「マスからパーソナルへ 」をテーマに少ロット印刷の中に新たな付加価値をシステムとしてどう付けていったか、その成功例を紹介していただきます。またネットワークによるリモートプルーフを越えてリモートプリンティングの可能性を探ります。スピーカーは共同印刷(株)の成毛慎一氏とイー・エフ・アイ(株)の田中和宏氏。
 

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2001/01/26 00:00:00


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