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仕事の価値低下、ITは儲からず。どうする?

今業界が突き当たっている壁は、従来の設備投資の結果、合理化が進んで組織内部の人員削減やスキルレス化などの効果はでたものの、いわゆる印刷物制作の価格低下のような、仕事の価値が下がることの歯止めがかからないことである。これは生産性向上の結果としてごく当然のことであるが、過去の仕事量が増えつづけていた時代には何の問題もなかったことが、印刷マーケットがゼロサムになったがために、供給能力が需要を超えていることの表れである。

このことは、メーカー側も次ぎに何を売っていいのかわからないことにつながっている。CTPで人件費は下がったとしても設備費はかかり、CTPのナマ板は安くなっても最終的な刷版コストは上がる。これを下げようとすると、やはりたくさん刷版を作らざるを得ず、なにしろ仕事をかき集めることになる。ここにも過去の「合理化・コストダウンの亡霊」が棲みついている。高度に自動化すればするほど供給者は少数でよくなり、メーカーとしたら印刷会社という市場を縮小していることにもなる。

一方で印刷物制作工程上のロスを減らし、品質を上げ、信頼性を高め、納期を短縮するという努力もされている。これはプリプレスから始まってCTPまでのデジタルワークフローの見直しといわれているようなことと、受発注のやり取りを電子化し、またEC化する動きである。しかしここでいくら努力をしても前述の価格低下を補うほどの効果は出ないし、第一このようなIT化そのものが金と手間がかかるものである、特に新たにIT能力つけるために人を雇わなければならないとすると、おいそれとは手が出せない。これが第2番目の壁である。

これらはいずれも、過去の印刷ビジネスの拠り所としていたパラダイムが無効になっていることの表れであり、新たなパラダイムの模索がないと、解決の糸口は見えないものであろう。パラダイムのシフトに関しては、最近の記事の、デジタル化で、「豊かさ」と生産性をどう結びつけるかや、これからは顧客のウォンツを発見できる営業マンを、などを参考にされたい。またIT投資というのは従来印刷業界で手薄であったところで、その取り組み方は過去の設備投資のような、それ自体でいくら儲かる、という観点では捉えられないものである。この参考記事として、IT投資は個別にはペイせず、トータルでペイする、がある。

では、新たなパラダイムの全体像とはどのようなものだろうか。このテーマがPAGE2001の基調講演であり、Mills Davis からのメッセージ「印刷会社を超える組織 printing interprise」を読んで頂くと、おぼろげながらイメージできると思う。最近出たPIAのVision21でも、これから出る日本印刷産業連合会のPrintingFrontire21でも、最大のテーマは新たな価値をどこで得るかであるが、それはどの報告書でも共通しているし、またコンテンツの加工の周辺に非常に多くの価値付けできる余地があることを Mills Davis も指摘している。

本気で21世紀のグラフィックアーツビジネスの新たなパラダイムを模索している方は、ぜひPAGE2001基調講演をお聞きいただきたい。

PAGE2001コンファレンス

PAGE2001特別連載もご覧下さい。

2001/02/02 00:00:00


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