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印刷物の作り方ではなく、かかわるお互いの関係を考える

PAGE2001基調講演より(2)

印刷会社にとってはプリプレスや印刷のコストが印刷物の費用だと思うかもしれないが、発注者である印刷物を必要とする人(会社)にとっては、プリプレスや印刷のコストだけがいくら安くなっても意味は薄い。「eBusinesは印刷会社にも適応されるようになった」PAGE2001基調講演より(1) の最後で述べたように、発注からフルフィルメントまでのB2Bの自動処理の如何によっては、コストが半額になることもあると、Mills Davisはいう。

印刷物制作においてDTPなどデジタル化したことの効用が現れだしたのは1980年代末からで、2000年においては効用はもう飽和している。それに対して1990年代広範にネットワーク化の効用が現れだしたが、これも2005年には飽和してしまうだろう。今まさに効用が現れ始めて、おそらく2010年くらいまで効用が続くと思われるのがinterpriseである。これらの効用を全部足せば大変なコストダウンとかパフォーマンスアップが望めるし、これをするとしないのとで業界は天と地に分かれてしまう。

間をつなぐという意味のinterとenterpriseを組み合わせたinterpriseは、もともとはデータベースの世界で使われていたものだそうで、その概念を拡張させてサプライチェーンからCRMからERMなどなどを企業の枠を超えて結合し、ある仕事のために有機的に相互に効率よく機能するようなネット上の共同事業体を作る構想として、この語は使われる。

要するに今まではそれぞれの会社組織は固定的で、それぞれの枠の中で個別製品についてどう作ったらいいかを考えていたのが、その製品あるいは情報の企画から最終的なデリバリ、およびフィードバックまでの全工程を最適化することを共通の課題に、それにかかわる組織同士がお互いの関係をどのようにしていったらよいかを模索するのがinterpriseである。Mills Davisの話の中ではコンソーシアムという言葉が度々でてきた。

interpriseは現実の会社を包含するさらに大きな仮想の組織が機能するように考える。バーチャルな組織で仕事をするという概念は以前からあるが、そこで現実の企業よりも「よい仕事」ができなければ意味が無い。例えば現実の大日本印刷に対抗して、個々の作業要素は大日本印刷のそれと匹敵するような会社をネットワーク上でカキ集めて仮想の競合企業を作っても、一枚岩の大日本印刷に勝てるような動きが出来るかどうか疑わしい。つまりネット上の印刷ビジネス共同体が現実の印刷企業よりも強いものにするには、ネット上の共同体はどのようであらねばならないかをMills Davisは言おうとした。

最終的には管理問題である。つまりITを使ってさまざまな局面の管理能力を向上させ、業務遂行上のクリチカルな点をリアルタイムにはっきりさせ、それに対してなるべく自動応答、自動実行させ、俊敏に共同体がアクションできるような仕組みを作らなければならない。当然個々の企業組織の中でこのような事が行われていることが前提だが、いくら個々の組織の内側の効率がよくても、企業間にまたがる問題をすばやく解決する「上位レベルの」管理者がなければ、印刷の企画からデリバリまでの効率は頭打ちになる。interpriseは、仮想のスーパー管理者に相当するところもまでもソフトウェアでやってしまおうというものである。しかもそれはもういくつかのアメリカの大企業の印刷物調達で実現しているというのだ。

これを実現するには5つの機能が必要になり、それついては、「印刷会社を超える組織 printing interprise」にすでに少し解説してある。次回はこの5機能についての解説を行う。

PAGE2001報告記事

2001/02/09 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会