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色管理から画質管理へ

印刷業界でも測色値(CIELab)ベースの色管理へのシフトが始まりつつあるが,世の中のあらゆるデバイスがデジタル化していく中で,色管理の数値化やカラーの標準化が業界をまたがって取り組まれつつある。そこで,PAGE2001のC4セッションでは「色管理から画質管理へ」と題して,印刷業界を取り巻くかたちで進みつつあるカラーマネジメントと標準化の最新動向について取り上げた。

まず,キヤノン(株)の桑山氏「カラーマネジメントの標準化動向」について報告した。

現在,カラーマネジメントに関連した標準化活動が,印刷業界に限らず各方面で大変活発に行われている。デジタルイメージング技術の進展により各種の画像メディアの境界があいまいになってきており,ある分野で定めた標準が,他分野に重大な影響を及ぼすという事態になっている。

これをカラースキャナの例で説明すると,オフィス機器としては,ISO/IEC JTC 1/SC 28という委員会で審議され,マルチメディアコンテンツの入力機器としては,IEC TC 100 TA2の担当領域である。さらにスキャナから写真を入力する場合には,ISO TC42の範疇となるし,印刷分野では,ISO TC130において,スキャナのハードウェアではなく,セットアップ時のキャリブレーション用ターゲットを標準化している。このようにスキャナ一つを取ってみても,かなり複雑な状況になっている。
また,各審議団体間の情報流通が不十分で相互の理解が不足していることや,標準化活動はメーカの利害にも影響することから,摩擦が生じているケースも多く見られるという。

次に,(株)富士通研究所の臼井氏より,カラーマネジメントの動向について,印刷業界に関連の深い測色の標準化に関する最新状況と,色評価に対する新しい考え方である「画質管理」の説明があった。

CIEでは,測色機の較正基準として,「BCRA Ceramic tiles」を制定した。これは,24色のカラータイルとその測色値を定義したもので,今後は,そのタイルの測色値が規定の範囲内に入っていないと国際基準不適合となる。
それから,反射物の測定には,光源によって照明する光の入射方向とセンサで受光する方向の角度が,0/45度ないし,45/0度と定められていたが,角度の誤差の許容精度が不明確であるという指摘があり見直す方向にある。
このように「測色」とは,決して確立されたものではないので,今後とも標準化動向には注意が必要である。

また,標準化に関するトピックとして,ISO, IECなどの調整機関であったJTAG2の廃止が正式に決定した。以後は,IECを除く機関の調整機関としてSCIT(Steering Committee of Imaging Technology)を設けることとなった。今回のJTAG2廃止により,IECとそれ以外の標準化団体(ISO, CIE, ITUなど)との間で,標準化活動に関する情報交換が一切行われないことになり,各標準化団体は個々に新たな問題を抱えることになった。

最近のカラーに関する標準化活動の新しい動きとして画質評価がある。これは,主観的要素の強い画質評価を客観的な数値で行おうという試みで,画質を,粒状性,縞模様(縦,横),モアレ,色,質感といった構成要素に分解して評価を行うものである。
PICS,NIPなどの学会では,画質評価専門のトラックを常時設定するほどの盛り上がりで,Kodak,Xerox,QEA社などから論文が発表されている。ISOでは,ISO/IEC JTC1/SC28で審議されている。PICS,NIPなどの論文発表を経て,画質評価用テストチャートを作成し,現在,一部国際標準化に着手している。

最後に,QEA日本オフィスの福田氏より「印刷画像の客観的評価法」について発表があった。

QEA社は,MITの機械工学科の教授であったDr.Ming-Kai Tse氏により1987年に設立され,近年はデジタル・プリンティング業界向けの自動試験システム製造販売に特化したハイテク・ベンチャーである。
QEA社のモットーは,「Turn adjectives into numbers!(形容詞から数値へ)」であり,主観評価が中心の現在の画像品質の評価方法を客観的に行い,自動化するシステムを提供している。

画像評価の基本方針は,画質を構成する要素を細分化し,要素個々を評価し,その結果から総合的に判断するというものである。要素には,ライン・テキストの特性,色間ブリード,トーン,ノイズ,色再現領域,バンディングといったものがある。
画質評価のアルゴリズムは,ISOの標準化活動の中で審議されており,現在ISO-13660においてベタ特性やテキスト・ライン特性について検討中である。QEA社は標準化活動のコアメンバーとして参加している。元来,このようなアルゴリズムや評価方法の検討は,各社独自に秘密主義で行われていたが,ISOの規格化と同時並行で進展している点が注目される。
QEA社で既に製品化している自動画像品質評価システムにはIAS-1000Cがある。IAS-1000Cは,CCDカメラと分光光度計,光沢計,透過テーブルというハードウェアと測定結果を分析するソフトウェアから構成されている。

そして,自動画像品質評価システムの利用事例として,インキと紙の相互利用による画質変化の検証,インクジェットプリンタのインキ粒の大きさが画質に与える影響の検証,各種プリンタのバンディングの解析の3件の事例が紹介された。

PAGE2001

2001/02/28 00:00:00


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