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多様化するネットワークサービス

近年のインターネット普及に伴い,高速アクセスに対する要求が急速に高まってきている。現時点では安価に導入でき,超高速アクセスが可能なADSLが脚光を浴びている。今回は,最近の情報通信ネットワークの動向やADSLの現状,技術的特徴と今後の多様化するサービス動向について,2001年1月23日ミーティング「高速のラストワンマイル通信」におけるNTT東日本(株)跡部 直之氏の講演より紹介する。


最近の情報通信ネットワークの動向
ISDN回線が伸び始めたこともあり,加入電話数は1996年度の6,000万をピークに減少している。 2001年現在では,移動電話が加入電話を上回っている。光ファイバについては,NTT東日本が光化を進めてきた結果,現時点で大部分のビジネスエリアで光ファイバがほぼ近くまで来ているという状況である。しかし住宅エリアでは,光の特徴を生かすニーズが少ないため,ビジネスエリアに重点をおいて整備されている。

インターネットアクセスに関する世帯需要動向では,超高速アクセス(光ファイバ)と高速アクセス(DSL,CATV)利用者は現在3,000万世帯にものぼっている。速度は64kb/s以上,方向性も双方向が求められている。

課金については、最近は定額制メニューを出している。品質は3種類ある。ギャランティ(完全品質保証回線),ギャランティ&ベストエフォート,ベストエフォート(一部保証回線)である。ギャランティが高いほど料金も高額になる。フレッツISDNやADSL,フレッツADSL等はベストエフォートであるため,料金は比較的安いが,完全保証ではない。

情報通信におけるマルチメディア化
近年は,ストリーム通信,トランザクション通信をはじめとした多様な通信形態が出現した。今後のマルチメディア通信は,メディアフリー(音声,テキストデータ,映像を一元的に扱う),アドレスフリー,エリアフリー,低料金,セキュリティ保証がポイントになってくるだろう。これからはただ繋ぐだけではなく,繋ぐ+αの不可価値を付けることが重要である。通信形態はブロック転送通信,ストリーム通信,トランザクション(双方向)通信,メール通信の4形態がある。これらの速度,リアルタイム性,対称性などの特徴を加味し,それぞれの利用形態に適合したサービスを考えていくことも重要だ。

ラストワンマイル
各ユーザがネットワークに対してどうアクセスをするかは、さまざまなパターンがある。NTT東日本では光ファイバ,DSLという形での高速低廉化のネットワークに対するアクセスを進めている。衛星を上空に上げて日本国内をカバーするという形態もある。またPHS,携帯電話,CATV等のさまざまな形態が出現している。それぞれ一長一短あり,最終的にどれに収束していくかは、現時点ではわからない。おそらくステップを踏み,カバーエリアの状況を見ながらアクセス形態が併存した形で進むのではないだろうか。

現在は,いろいろな形態で家庭の中に通信ができるような環境が出てきたが,企業だけでなく家庭内のLANも必要になってくるだろう。家庭の中がホームサーバと呼ばれるようなもので情報化され,外と繋ぐ形態になっていくのではないか。

xDSLサービス
xDSLとは,Digital Subscribe Lineのことで,ADSL,HDSL,SDSL,VSDL等の総称である。電話用メタリックペアケーブルに各種符号化,変調技術を適用し,高速のディジタルデータを伝送する方式である。ADSLは,Asymmetric Digital Subscriber Lineのことで,非対称デジタル加入者回線をアクセスラインとしたインターネット向けサービスである。ADSLは,一対の電話線を用いた上り下りが違う速度の通信方式で,全世界で普及されつつある。情報速度は,上り16〜640kb/s,下り1.5〜9Mb/sである。従来の電話サービスよりも数十倍以上高い周波数で信号を送る。

端末インターフェースは10BASE-T。提供回線は加入者回線(メタリックケーブル)で、回線単位での契約となる。一般のモデムを使った通信回線と違い,xDSLを使った通信回線は,「バケツリレー方式」で送られる。xDSLモデム間の通信区間は,2kmと短く,瞬時に大量データを高速で伝送することが可能である。

ADSL回線は、すでに加入してる電話と共用することも可能であるが,ISDN回線とは同じ周波数を使うので,共用はできない。また,ISDN回線とADSL回線(下り)の帯域が一部重なるので,近端漏話が起こりやすい。回線の線路損失,配線形態などにより場合によっては,品質が不安定になるという問題点もある。

今後の新サービスの動向
従来のNTT東日本のネットワークサービスは、物理的個社別の専用のサービス、つまり電気通信のネットワークであり,Point-Pointの線的なサービスであった。利用形態も社内的なネットワーク利用形態から、エクストラネット(企業外)通信が進むだろう。エクストラネット的な通信が利用されないとおそらく日本企業は生き残っていけないだろうと言われている。 品質についても選択の時代がやってくるだろう。画一的なものではなく、それが対価とのトレードアップにつながるだろう。ユーザが通信の利用形態と品質を選択するということは,今後とも加速するのではないか。

まとめると,今後の情報通信は以下の4点がポイントになるだろう。
1.共同利用型仮想専用ネットワーク
2.面的なPoint-MultiPointサービス
3.IP-VPNの拡大
4.品質選択の時代

新サービスの一例を以下に挙げる。

ワイドLANサービス
「光シェアドアクセス技術」を利用し,各拠点間で最大10Mbit/sの高速通信を可能とするサービスである。従来型ネットワーク構成では拠点間の回線速度がボトルネックとなりがちであったが,ワイドLANサービスにより各拠点があたかも1つのビル内にあるかのようなスムーズな通信が実現する。

メガデータネッツ
ATM(Asynchronous Transfer Mode:非同期転送モード)技術を利用し,低料金と多彩なラインナップでイントラネット/エクストラネットをフレキシブルに構築できる。最大42Mbit/sまでのパフォーマンスで提供するアクセス回線と最大10Mbit/sのPVC(相手固定通信)メニューとCUG(グループ内通信)メニューを選択できるメガデータネッツ網のサービスラインナップを組み合わせることも可能である。

NTTグループは、他社に追随を許さないサービスのラインナップ、ユーザの利用形態に応じたサービスを作り出している。2001年〜2002年にかけて,さらにいろいろなサービスが生まれるだろう。近々,新たなサービス提供について報道発表する予定である。料金についても、ユーザが利用しやすいような環境を作っていく予定だ。また,安さだけでなく、新しいサービスをこれからもどんどん出していきたい。

(通信&メディア研究会)

2001/03/01 00:00:00


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