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DTP豆知識(200104)モアレとスクリーニング,アセッツ管理と自動組版

本コーナーでは,DTPエキスパートを目指すうえで理解しておきたいことを模擬試験形式で解説します。JAGAT認証DTPエキスパート 田邊忠氏に,問題のポイントや重要点を解説していただきます。試験勉強のご参考に,またはDTPに必要な知識の確認にご活用ください。DTPエキスパート認証試験の詳細はDTPエキスパートのページをご覧ください。


問1 モアレとスクリーニング

次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。

 複数の規則的なパターンが重なった時に,別の新たなパターンが発生することを[A:(1)版ずれ (2)色ずれ (3)ドットゲイン (4)モアレ]といい,網点を使った多色刷りでは必ず起こる現象である。これを目立たないようにするために,フィルム上で各色版の[B:(1)スクリーン線数 (2)スクリーン角度 (3)網点密度 (4)網点濃度]を変える。例えばまずBkを最も網点が目立ちにくい[C:(1)15度 (2)30度 (3)45度 (4)60度]に置き,それに対してC(シアン)と[D:(1)C (2)M (3)Y (4)Bk]の各版をそれぞれ[E:(1)15度 (2)30度 (3)45度 (4)60度]ずつずらして置く。そしてこれら3色のうちのいずれか2色の中間に,モアレが起きてもわかりにくい[F:(1)C (2)M (3)Y (4)Bk]を置く。

 従来のスクリーニングは,網点の[G:(1)径 (2)形状 (3)密度 (4)濃度]を一定にして,網点の[H:(1)径 (2)形状 (3)密度 (4)濃度]を変えることで濃淡を表現する。これに対し,FMスクリーニングでは,点の[I:(1)径 (2)形状 (3)密度 (4)濃度]を一定にして,点の[J:(1)径 (2)形状 (3)密度 (4)濃度]を制御することで濃淡を表現する。一定面積内の点の数は,明るく表現する部分では[K:(1)少なく (2)多く]なる。

 FMスクリーニングは各版を重ねても[L:(1)版ずれ (2)色ずれ (3)ドットゲイン (4)モアレ]が出ない。6色,7色を使った印刷方式などへの展望を開いた画期的な技術である。

    ■模範解答■
    A(4),B(2),C(3),D(2),E(2),F(3),G(3),H(1),I(1),J(3),K(1),L(4)

    ■出題のポイント■
     従来方式のスクリーン技術を使う印刷の場合,どうしてもモアレが生じていた。ここではモアレが起こる原因を理解し,それを防ぐ技術を知っておくこと。また,新しい技術を利用した印刷では,モアレが起こらない理由も知っておくこと。

    ■問題解説■
     従来方式であるAM(Amplitude Modulation)スクリーニングでは網点を使って,色の濃淡を表現している。

     それぞれの色を表すスクリーンで,網点は一定の間隔を隔てて配置されており,網点の大きさが色の濃淡を決めている。
     もちろん,大きな網点は濃い色を表し,小さな網点は薄い色を表す。それぞれのスクリーンは特定の色を表現するため,多色印刷,カラー印刷では複数のスクリーンが重なる。

     複数枚のスクリーンを重ねる場合,網点で形成される複数の規則的なパターンが重なるので,光学的な干渉縞であるモアレが発生する。
     これは独特なパターンであり,複数枚のスクリーンを使った印刷物では,印刷の原理上,発生を避けられない。

     そこで,これまではモアレを目立たなくするために,スクリーンの角度(配置)を変える方法が考案されてきた。

     通常のカラー印刷物では,最も網点での濃淡が明確になるBk(ブラック)版(スクリーン)を最初に処理する。このBk版を網点が最も目立ちにくい角度である45度に配置する。

     また,カラー製版に使われる4版のうち,最も網点での濃淡がはっきりせず,モアレが起きても目立ちにくいY(イエロー)を最後に配置する。Bk版の45度に対して,C(シアン)とM(マゼンダ)の各版をそれぞれ30度ずつずらした位置(15度と75度)に配置する。これで15度,45度,75度の位置に3版が配置された。既に,この状態でモアレは発生している。

     モアレが最も目立ちにくいという理由で,最後に残したY版は,この3色のうちのいずれか2色の中間(0度,もしくは90度)に配置する。これがカラー製版(4版)での基本的なスクリーン配置となる(図1)。


     ただし,印刷する画像の中に白が多い場合,または人の肌の色などを印刷する場合には,これとは異なったスクリーン配置をとる。
     こうした画像では,M版が最も目立つので,M版を最初に処理する。この場合でも,最後に処理されるのは,モアレが目立ちにくいY版である。この場合,M版を45度の位置に置き,Bk版とC版をそれぞれ30度ずつずらした位置,15度と75度に置く。もちろん,Y版は0度,もしくは90度に置かれる(図2)。

     従来のスクリーニング(AMスクリーニング)は,このように一定間隔に配置された網点の大きさで色の濃淡を表現していた。これは網点の密度を一定にして,網点の径を変えることで濃淡を表現する方法である。

     これに対して,FM(Frequency Modulated)スクリーニングでは網点の径を一定にする。その代わりに網点の密度を変えて,色の濃淡を表現する。すると,一定面積内の網点の数は,明るく表現する部分では少なくなるわけである。

     ちなみに,FMスクリーニングで使われる網点の径はかなり小さく,砂のようである(図3参照)。

     FMスクリーニングの特長は,各版を重ねても,光学的なパターンであるモアレが生じないことである。そのため,欧米で行われることが多い6色,7色を使った印刷方式では,有効なスクリーニングである。

問2 アセッツ管理と自動組版

次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。

 コンピュータ利用の進展によって企業内にデジタルデータが大量に蓄積されている。それを資産として価値づけ,継続的に再利用できるシステムに[A:(1)デジタルアセッツ管理 (2)バックアップ (3)ネイティブファイル]がある。データベース出版のような印刷用の情報加工のためにデータを管理する段階から,デジタルアーカイブや電子図書館といった膨大な情報を総合的に管理するものへと高度化している。

 長期間にわたるデータの利用が重要なので,標準化されたフォーマットを用い,データベースにおけるSQLやXMLにおけるDOMなど,仕様が[B:(1)最新のものを集めた (2)部外者にはわかりにくい (3)公開され共通化されている]環境を利用する。

 制作作業の効率化を目的とするデータベース出版と異なるのは,データを活用するためにデータを意味づけ,検索/抽出する仕組みが必要な点である。そのために全文検索技術や,SGML/XML技術,オブジェクトデータベース技術などが用いられる。

 多ページの情報誌やカタログ類など,定型的なレイアウトで,大量の原稿を扱うものはアセッツ管理に向いている。そのうち印刷に流用する部分で[C:(1)表計算ソフト (2)ワープロ (3)RDB]などを使用して更新や整理を行い,DTPの自動処理が行いやすいように,データの[D:(1)分散 (2)パターン (3)ランダム]化やデータ文字列長の事前のチェック,文字スタイル当てはめの規則化などを行えば,レイアウト作業を効率化できる。

 DTPソフトにはレイアウトのひな形である[E:(1)スタイルシート (2)組版ルール (3)テンプレート]の自動複製や,タグ付き要素へのスタイル付与などの機能があり,これらと原稿のデータベースを自動的にリンクできれば,DTPソフトを[F:(1)簡易言語処理 (2)バッチ処理 (3)RDB]のように使うことができる。情報処理系のデータベースでは難しかった画像のハンドリングも,画像ファイル名を扱えるデータベースとDTPソフトを組み合わせて,カラー製版作業までバッチ処理のように行える点がメリットである。


    ■模範解答■
    A(1),B(3),C(3),D(2),E(3),F(2)

    ■出題のポイント■
     ここで使われる「アセッツ」とは「資産」のことである。もちろん,ここでの「資産」は画像,文字などに代表されるデータを指している。
     これらのアセッツをデータベースで一括管理し,データベースから自動組版を通じて,印刷物制作を効率化したいという要望は以前からあった。それが最近,具体的なワークフローとして実現している。ここでは,データベースと自動組版の連携を可能にした基本技術と,アプリケーションの機能について理解すること。

    ■問題解説■
     コンピュータの利用が進むと日々の作業の結果,企業内にはデジタルデータが大量に蓄積される。これらに資産として価値をつけ,継続的に再利用するシステムがデジタルアセッツ管理である。

     以前は,データベース出版のように,印刷用の情報加工データ(主にモノクロ画像と文字データ)を蓄積していた。このシステムは進化を続けており,最近では,カラー画像や音声データまでを含めたデジタルアーカイブや,電子図書館にまで発展している。ここでは,膨大な情報を総合的に管理するための技術が使われている。

     高度なデジタルアセッツ管理では,長期間にわたるデータの利用が重要である。時間がたち,管理しているシステムに,プログラミングの変更やデジタルデータの再入力が必要になれば,余分な投資が必要になる。その結果,長期間の管理に膨大な費用がかかってしまう。

     そこで,アセッツ管理には標準化されたフォーマットが使われている。一般に,SQL(Structured Query Language)やXML(eXtensible Mark up Language)におけるDOM(Document Object Model)など,仕様が公開され共通化された環境が使われる。

     デジタルアーカイブや電子図書館は,制作作業の効率化を目的とするデータベース出版とは異なる。それは,データを活用するためにデータを意味づけ,検索/抽出する仕組みが必要な点である。現在は,全文検索技術やSGML(Standard Generalized Markup Language)/XML技術,オブジェクトデータベース技術などが用いられている。

     定型化されたレイアウトで,原稿を大量に扱うもの,例えば多ページの情報誌やカタログ類は,アセッツ管理に適している。そのうち,印刷に流用する部分については,RDB(Relational DataBase)などを利用して,更新・整理などを行う。

     レイアウト作業を効率化するには,DTPの自動組版が行いやすいように,データのパターン化やデータ文字列長の事前チェック,文字スタイル当てはめの規則化などを行っておくと良い。

     DTPソフトには,レイアウトのひな形であるテンプレートを自動複製する機能や,タグ付き要素にスタイルを付与するなどの機能がある。こうした機能とデータベースを自動的にリンクさせれば,DTPソフトをバッチ処理のように使える。

     画像のハンドリングは,情報系のデータベースでは難しかったが,画像ファイル名を扱えるデータベースとDTPソフトを組み合わることによって,カラー製版作業までをバッチ同様に処理できる。


(出典:月刊プリンターズサークル連載 2001年4月号記事より)

2001/07/30 00:00:00


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