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カタログ製作とASP

ブロードバンドネットワークが注目を浴びている。これは広帯域のネットワークという意味で高速ネットワークである。この技術は,光ファイバを利用するとか,ADSLと呼ばれる技術で,企業や家庭まで広帯域なネットワークを利用できる話である。しかし突然出てきたわけでないが,なぜ今注目されているかといえば,低価格で家庭までメガビットクラスの伝送速度を利用できるからである。
そして,このブロードバンド技術を利用して,印刷物の製作を効率良く行えないかということで,NTT西日本と凸版印刷が共同でカタログ製作を支援する仕組みとして,ブロードバンドネットワークとデータセンターを利用してカタログ製作をコラボレーションしながら製作する仕組みを検証実験している。通信&メディア研究会の凸版印刷のセミナーから,話の一部を紹介する。

カタログ製作とASP

データベースはいろいろな業種が扱っているが,その中で印刷会社はコンテンツ加工者という位置づけで,クライアントと共同事業のような形で使っていけるツールにできるだろう。これは印刷会社は今までは,データを保持して出さないことでカタログやチラシの受注を継続していた。データ構築や加工の部分が強みだった。それをオープンにしてデータベースを共有化することで,クライアントとの関係を深めていき,もしくは共同事業のような形にもっていける可能性がある。

凸版印刷では,データベースが新たなビジネスに使えるという1つの具体例として,NTT西日本とASPサービスの実験を行っている。NTTは,高速回線を売り出しているところで,それを使ったコンテンツやアプリケーションを模索している。凸版印刷は,データベースを利用した新たなビジネスモデルを考えている。印刷業界の攻めのツールという位置づけで使ってもらえるのではないかと考え,仮称だが,ブロードワープラインという名前で実験段階に入った。今年の後半くらいに実際に本サービスを開始する予定である。
NTTは,コンテンツのデータベースがあり,それにカラーマネジメント,著作権管理,課金決済,認証顧客管理などのフィルタもしくはツールがあるので,それを回線を通じてユーザに使ってもらうというモデルを考えていた。

一方,印刷業界では,通信回線が細い時代には印刷用の重いデータ(MOなど)を何度も送るためバイク便を使って,非常に手間が掛かった。ところが,NTTの回線が出てきたおかげで,データのやりとりにインフラを使えるようになってきた。そこでユーザとの間でも使えるのではないかと,アライアンスビジネスの目標ができてきた。
これからはクライアントとのアライアンスビジネスを模索して,今回のASPのサービスは,クライアントと印刷会社と,それを制作するにあたって協力する会社の間で共通のデータベースを提供する。
購入すると初期コストが高いので,ASPという形で安価なコストで少ないデータからも始められるように,凸版印刷のデータベースを利用したサービスを,今実験段階で行っている。

今までクライアントは,ディレクトリサービスではファイル名だけがデータベース運用の手掛かりだったが,こうしたデータベースのASPを利用すると,マルチカテゴリーやマルチスペックなどの整理された形で,品番や品名とか分類方法などを使って商品の検索が可能になる。このためすぐにクライアントがツールとして使えるので,アライアンスビジネスに繋がるのではないか。
NTTグループのNTTスマートコネクトが画像蓄積・共有データセンターとなり,ISPを通じてインターネットにデータベースのサーバを公開している。印刷会社もしくはクライアントは加入者になり,実際の制作もしくは普段のデータベースとしてデータベースサーバを利用する。この利用にあたっては,ある領域部分がこのグループに割り当てられている。
それを認証によって振り分けることで,グループ内で情報を共有する。ただ単にファイルベースで情報を共有するのではなく,印刷用のデータベースをコアにして,クライアントが情報を特定しやすいデータベースとして共有する。こういう形でいくつものグループが使えるような構造である。

使用用途として,1社だけでもデータベースとして利用できるし,複数社間でデータをデータベースとして共有することが可能なサービスになっている。
システム構成は,3台くらいのサーバを置いており,公開用,データサーバ用,印刷用の画像データを変換して出力するときに,フォーマットや解像度の変換を行えるようなエンジンサーバという構成である。

役割分担としては,凸版印刷がデータベースのツールの提供をし,NTT西日本が企画や課金のツールの提供を行う。実際はNTTダイナミックテレマが参加企業への案内など,前面に立って事務局のようなことを行っている。もう1つは,間にNTTスマートコネクトがデータセンターという位置づけでサーバを置いている。大きく見れば凸版印刷とNTTグループだが,細かく見れば4社間のコラボレーションによる1つのビジネスという形になっている。

商品データベース製作のXPSソリューション

DTPデータからのデータベースを構築するソリューションとして,QuarkXPressやIllustratorのデータからデータを取り出すという仕組みがある。名称はeXtensive Publishing Series(XPS)である。
XPS開発の背景として,マルチメディアやe-ビジネスの展開において,データベースの構築が不可欠になってきたことが挙げられる。普通,データベースは早く構築して運用できるようにする必要があるので,最初から完璧に作っておき,そこからいろいろな展開を行うことを考えるが,現状ではそこまで手が回らない。このためカタログベース,チラシベースに作ってからデータを抜き出したいという用途が大きい。そこを手助けする目的で,カタログ先行業務におけるデータベース構築の短納期を目指している。DTPのデータ,QuarkXPressやIllustratorのデータをうまく流用して表現するためのツールとして,XPSを提供する。

もともとカタログデータを作るのに一番いいのは,データベースからそのままカタログデータを作ることだが,ここではカタログデータのところから何の仕込みもなしにドキュメント構造ファイル,XML形式のデータを吐き出し,その構造ファイルからプレーンテキストを作り出す。プレーンテキストはデータベースに登録できるテキストで,これがXPSのフローである。
DBoxというコアのツールで,作ったものから項目と商品スペックの規則性を設定して,リンク情報を取ってきて一括して抽出する。

もう1つの特徴は,カタログ情報は1つのデザイン,ポリシーに基づいて作っているため,例えば書体や品番は同じように製作されていることがヒントである。それをうまく利用する形で,商品のレコードを取ってくるところを設定できるようになっている。いろいろな自動化の施策をとっているのが,このツールの特徴である。
カタログ製作では,今後,e-ビジネス化に伴い,データベースの活用は必然となる。しかし,現実的には,データベース構築は大変な作業である。凸版印刷のこのようなサービスは,カタログ製作に関するクライアントや印刷会社へのツールとして活用できる可能性がある。(通信&メディア研究会)

2001/08/18 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会