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モルタルの逆襲,電子調達

ブリック&モルタル(建物)をベースにしたビジネスはe何々を標榜するサイバー社会からは旧世界のように扱われていた時代もあった。しかし,ブリック&モルタルもじっとはしていないで,オンライン取り引きに取り組み,クリック&モルタルへと進化していった。印刷もモルタルの中での仕事の典型であって,逆にe何々への転進がうまくできずに悩んでいた面もあった。

ECは大きくわけると,クリック&モルタル型のように従来のエコノミーと連動したものとニューエコノミー型の2種類ある。クリック&モルタル型は従来の商取引にネットワークを利用して合理化をはかるもので,ニューエコノミー型は今までなかったビジネスをネット上で実現したものである。例えば,インターネットプロバイダや,BTOで作るPCのオンラインビジネスなどがある。

しかし,実績を築かずに進んできたニューエコノミーは,2000年の後半くらいから急速に崩壊し,株価も大きく下落した。ミシガン大学経営大学院によって発表された全米顧客満足度指数では,ニューエコノミーに対する満足度は自動車や家電などの従来のエコノミーに比べて低いことが明らかになった。ニューエコノミーに対するユーザの期待が大きかったこともあるが,従来のエコノミーで提供してきたような顧客の満足するサービスを作り上げられなかったことなどが原因と考えられる。クリック&モルタル型のほうも現状は決して良くはないが,経済の不況が影響しているためで,崩壊はしていない。

「電子調達」は従来のエコノミーにおける合理化を実現する手段といえる。従来の慣行を壊し,中間業者を排除する電子調達を実現するには,障壁も多い。しかし,景気後退になればなるほど,仕事の見直しが必要になり,合理化によるコスト削減の重要性は高まってくる。

従来の商慣行をなかなかくずせない日本では電子調達の成功事例はまだ少ない。しかし,電子部品や自動車のようにグローバルな中で取り組みを迫られた業界は進んでいる。平成13年度版の情報通信白書によると,1999年の段階では中間財の電子商取引は約80%が自動車で,約18%が電気分野であると報告されている。

印刷分野においても,ネットワークによって印刷の量や種類などに関するニーズへの対応の改善の試みは盛んになってきた。例えば,個々でビジネスをするとコストが高くなってしまうオンデマンド印刷機を,中小の印刷会社が一緒に使うことにより利用コストを下げ,印刷物を比較的安く提供できる仕組みを実現したところもある。

電子調達によって新たなエコノミーが創出されるというのは,当面は幻想に過ぎず,今日のテクノロジーを活用して,合理化を進められる範囲が大きく広がっていることを意識しなければならないだろう。

参考情報: 印刷の電子調達,SCM,EC

2001/09/03 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会