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ITの失速でメディアのシフトは小休止?

印刷の需要はバブルの崩壊後も大まかにみると伸びていたが、それも峠を越して下り坂になったような昨今である。これは2001年の短期的な現象なのか、21世紀と言う新たな生活文化のもたらす今後の潮流なのかはよくわからないが、印刷需要や技術のことはデジタル化の進展や資源環境問題などの大きな外部要因との関係をよく考えなければならなくなった。20世紀は戻ってこないことを肝に銘じるべきである。

印刷需要拡大を支えていた人口の増加や経済の発展と、それに応える印刷技術の発展という関係は、20世紀になって好循環に入り、特に第2次大戦後は共に文化の進化にも寄与するということで、印刷需要家、印刷会社、印刷機材業者がみな成長する模範的なビジネスモデルを形成した。しかしこのモデルは1990年頃のバブル期を境に機能し難くなったのである。

日本の産業界はバブル後にリストラに取組み、グローバル企業として復活したところも多いが、印刷産業では幸か不幸か人員削減のような思いきったリストラは行われなかった。それに代わって印刷会社はプリプレスの外注をやめてDTPで内製化するとか、生産性向上が続く新たな印刷機に引き続き投資して、印刷外注を減らしていくなどの手を打ってリストラの代わりをした。またこういった技術革新に対応できないで廃業する印刷会社が相次ぎ業者数が減少していくのも、業界全体でみると「リストラ」の一面である。要するにまだ印刷関連の技術革新は有効に作用していて救われた面がかなりあった。

しかし、これから印刷業界は再浮上できるかといえば、またいくつかの新たな難関を目の前にして、なかなかビジョンを描くのも難しい状態になった。その第1は不可避で逆戻りがないデジタル化の進展である。バブル後の日本を「失われた10年」と表現することもあるが、印刷業に関してはもう旧モデルには戻っていかない。それは印刷メディア以外にデジタルのメディアがビジネスや生活に溶け込み、メディアの並存の時代になったからである。よくいわれるように、19世紀から20世紀にかけての産業革命に匹敵する大きな変化が、20世紀から21世紀にかけての情報革命であり、印刷においてはグーテンベルグ以来の量産モデルの見直しが必要な局面も出ている。

印刷産業も量を求めるのではなく、クロスメディア戦略をかかげている。そこに生き残りを求めて努力はしてきたが、その成果が出る前に、2000年後半からのアメリカのバブル崩壊の余波を受けてITやEC関連の成長は先延ばしになった。これはITとかECそのものがダメなのではなく、IT関連もまだ実力がついていない未熟な段階であって、「希望に支えられた産業」の弱さをさらけ出したのだと考えられる。

日本経済も「失われた10年」から脱しようとしていた矢先のITの失速で、せっかくリストラをしてバランスを取り直した甲斐もなく経済環境が悪化していく。このため短期的な問題はデフレであり、印刷需要がそこそこあっても売上が下がる状態は続く。これに対して従来の印刷関連の技術革新はもはやさほど有効にはならず、ECやSCMによるワークフローの改革など異なる技術でチャレンジしなければならなくなっている。

以下省略。(機材インデックス2001-2002 テクノプロフィールより)

関連情報:印刷の未来を考えるシンポジウム「2050年に印刷はどうなる?」も、ご参考ください。

2001/09/11 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会