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印刷需要、中期的には安泰で長期は減衰?

今日の印刷産業をみると不況業種に指定してされるなど希望が持てないように思えるかもしれないが、中期的には印刷はまだ発展する可能性はある。ビジネスや生活習慣の枠組みが変わらないなら、印刷需要は人口とか経済に連動する。日本の人口は2010年くらいがピークであるといわれ、経済の歯車さえしっかりすれば印刷需要は量的には持ち直す。しかし同時にそれくらいの期間をかければ今は未熟なIT関連やデジタルメディアも人になじんだ使いやすいものになり、印刷とデジタルメディアのバランス点は今日とは変わってしまう。

ただしデジタルメディアによって印刷が侵食されるよりも前の段階として、お互いにプラスとなる補完関係の時代があろう。今日でもWEBで成長した情報が印刷物になるケースはあるように、デジタルによる情報の活性化自体は印刷にもよい影響があると考えられ、それで印刷も需要が2010年頃がピークとなるという見方になる。

その先は先進国の紙の需要は電子メディアに剥奪されていくという憂鬱な時代になろう。とりわけ日本はその先で相当な人口減があるので、それによる印刷減の方が影響が大きいであろう。しかし世界全体でみれば社会的なリテラシー向上は大きな課題であり、また富の配分がうまく行けば世界の経済は平準化し、この2つの理由で印刷需要自体は発展途上国を中心にして伸びていくはずである。このようにして紙の消費は先進国で減らして発展途上国にまわし、トータルで森林資源を守りながら印刷が継続的に使われるようなシナリオを、地球全体で管理していく必要がある。

もし先進国と発展途上国で天然資源を奪い合うような事態が起これば、どのような発展のシナリオも無意味になってしまう。そうならないための努力が始まっており、その線に沿ったビジネスプランを考えなければならない。それは人工的植林と紙のリサイクルによってエネルギーの確保と環境の保全が可能となる循環型モデルへの努力である。要するに太陽のエネルギーは樹木という形でCO2を吸収しながら地上に蓄えられ、それは一旦紙の姿になって何回かリサイクルされたあとで、「ゴミ」を燃料として使ってCO2が排出され、また樹に吸収されるような全体的なリサイクルである。

発展途上国で現在の木の用途の半分は燃料であり、それを「ゴミ燃料」などに替えていくことができれば、紙の供給は楽になる。もうひとつ紙の需要のひっ迫を抑える要因となるのが、発展途上国の情報インフラである。新聞のような紙の情報を国民に行きわたるようにするには、製紙産業の育成などが必要で、そのために投資するよりも有線無線の電子情報インフラに投資した方が効率がよいと考えられる。事実過去の技術が普及していないところの方が新しい技術が入りやすいので、発展途上国の方がデジタル化の取組みが進み、先進国のような紙の大量消費社会にはならないことが望まれる。

以下省略。(機材インデックス2001-2002 テクノプロフィールより)

2001/09/19 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会