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印刷ビジネスのさまざまな局面で使われるカラープリンタ/複写機

デジタルにおける環境の変化は,アナログに比べて急速に起こることが多い。パソコンやインターネットの普及といった例を挙げるまでもない。印刷業界でも例外なくその波の影響を受けている。

数年前からコンシューマ向けのデジタルカメラが普及し始め,デジタルカメラで撮影したデータをプリントアウトするために,カラーのインクジェットのプリンタも急速な勢いで広まっていった。

従来はカラーの複写機に専用のRIPをつけるしか選択肢がなかったが,この動きによって,インクジェットプリンタを使うことができるようになり,用途によってカラープリンタを選択できることになった。さらに,急速に広まったインクジェットプリンタは,色数が6色や7色に,またインクも染料系から顔料系へ,加えて出力解像度は720dpiから1440dpi,2400dpiへと幅が広がり,よりきれいに早く出力できるように進化している。

さらに現在は,各プリンタメーカーからカラーレーザプリンタが発売され,今までは手の届かなかったカラーレーザの価格が段々と下がってきた。また,レーザプリンタの特徴として,インクジェットプリンタよりも出力スピードが速いために,インクジェットではできなかった迅速な対応も可能になっている。

プリンタの種類

一般にカラープリンタと呼ばれるものも,その特徴によっていろいろなタイプに分かれてくる。代表的なものとしては,カラーインクジェットのプリンタが,一番身近なものとして挙げられるであろう。また,そのほかにもカラーレーザプリンタやソリッドインクを使ったもの,さらには溶融型熱転写方式といったタイプまで,さまざまなものがある。以下に3つのタイプの特徴を紹介する。

カラーインクジェットプリンタ

前述のように,カラーインクジェットプリンタは現在,一番身近にあるカラープリンタといえるであろう。サイズの面でも,下はハガキ大の大きさから,上はA0・B0またはそれ以上のサイズにまで,幅広く対応しているのが大きな特徴である。

印刷業界との関係では,大判のインクジェットプリンタ利用,あるいはPDFやPSなどのフォーマットやPostScript対応のRipを使った面付けの確認や,色校正が筆頭に挙げられる。

例えば,Tooの「ScriptAxes・Studio」は既存のインクジェットプリンタに接続することによって,簡易プルーフとなる。ICCを使ったシステムであるが,きちんと理解してICCプロファイルを使いこなせば,かなり有効なプルーフとなり得る。さらに,PDFをやり取りするデータのフォーマットとして使うことによって,インクジェットプリンタを用いた遠隔地校正が可能になってくる。その場合,PDFを使用しているのでMacintoshやWindowsなどのOSの違いによるトラブルや,アプリケーションがないので出力できないといったトラブルが大幅に削減される。

カラーレーザプリンタ

カラーレーザタイプのプリンタは,エプソン販売や沖データ,カシオ,キヤノン,富士通,富士ゼロックスなどから発売されている。各社それぞれいろいろな方式をとっており,それらは「半導体レーザ+乾式電子写真方式」や「レーザー・ゼログラフィー方式」,「4連Digital LED ヘッド+電子写真方式(タンデム)」などと呼ばれている。カラーレーザプリンタの特徴はカラーインクジェットプリンタに比べて圧倒的に高速な印刷速度である。また,カラーインクジェットプリンタなどでは,滲んでしまうような普通紙においても,かなりのクオリティを保てるといった特徴もある。しかし,色再現性や色むらに関してはトナーを使っている関係上,どうしてもカラーインクジェットプリンタにかなわないところがあるが,そういった問題も各メーカーの熱心な研究により徐々に解決しつつある。

ソリッドインク

カラーインクジェット方式では,出力速度がネックとなるが,実はその出力速度を上げる方法がないことはない。「ソリッドインク」方式を使うことによって,カラーインクジェットプリンタの出力速度は改善されるのである。

この方式はで,常温ではクレヨンのように固まっている固体のインクを加熱し,溶かして液状になったものをインクジェット(ピエゾ)同様の仕組みで印字する。また,一度中間のドラムにインクを吐き出させてから用紙に転写させるため,高速化しやすく,また,用紙をあまり選ばないで奇麗に出力できるといったカラーレーザプリンタの特徴も備えている。

またその他の特徴としては,ファーストプリント時間(プリンタがデータを受信してから1枚目排紙完了までの時間)が短く,機種によっては10秒以下のものもある。

さらにソリッドインク方式は,ソリッドインク自体は溶けてなくなるので,カラーインクジェットプリンタのカートリッジや,カラーレーザプリンタのような感光ドラムといった廃棄物が出ない。そのため,環境にやさしく,かつ中長期的にはランニングコストも安くなる。インクの特性から,カラーレーザプリンタで対応していない再生紙にも,写真画質のプリントをすることが可能である。色校正,もしくはカラーカンプ用にはあまり効果がないかもしれないが,その他の自社内で行う出力の確認などには効果を発揮する。

このタイプのプリンタは,現在フェイザー・プリンティング・ジャパンから発売されている。「Phaser 860シリーズ」と呼ばれるもので,使用の違いにより,3種類のモデルがラインアップされている。しかし,残念なことに出力のサイズがA4までとなっており,A3ノビを多く使う印刷業界では用途が限定されてしまう傾向にある。

カラープリンタの用途

現在カラープリンタの主流としては,価格もこなれているインクジェットが挙げられる。発色や色の安定性に関しては非常に評価が高いが,その反面,出力に時間がかかり,出力枚数の多いものに対応しにくい点もある。

デザイン事務所や印刷の現場では,出力枚数が多いことは,今のところあまり多くないようである。一方,オフィスユースでは会議用の資料作成などで大量部数の出力があるために,段々とカラーレーザプリンタに移行する傾向がみられる。しかし,カラーレーザプリンタは,現状で普及しているカラーインクジェットプリンタのような価格には,到底なり得ないだろう。また,出力したものに対する色の再現性・安定性などを考慮すると,カラーインクジェットプリンタの市場がすぐにカラーレーザプリンタに置き換わるとは考えにくい。今後,それぞれの得意分野によるすみ分けがされると予想できる。費用面で問題になるかもしれないが,やはりひとつのカラープリンタで何でもこなすのではなく,それぞれ用途に合ったものを導入することによって,時間的なコストも含めた最終的な数字は見合うはずである。

印刷業界での用途としては,プレゼン用のカンプ出し,色校正などが挙げられる。
DTP化がこれだけ進んだ現在では,カラーのプレゼンは珍しいものではないが,DTPに移行しつつある時期のプリンタの状況を思い出すと,夢のような話である。

カラープリンタを印刷業界で使うには,まずプリンタとモニタ,さらにできれば印刷物とのカラーマッチングをとっておきたい。モノクロの印刷物とは異なり,カラーの印刷物ではその色合いが重要な意味を占めるので,モニタで印刷結果が予想できるように,色合わせは行うべきである。

ビジネスユースではA3対応のページプリンタを導入しているケースが多く,またその買い替え・追加には,A4サイズのカラーレーザプリンタが検討されていることが多いようだ。しかし,印刷業界における現状では,A3にトンボがついて印字できるサイズがないと,仕事の効率が上がらないことが多い。だからといって,ただ大きければいいわけでもない。各会社の仕事内容によって使い分けるべきである。

また校正用途としては,現在,大判のカラーインクジェットプリンタを使用して,面付けしたデータのイメージをすべて見ることや,A3の大きさでカラ−マッチングされたプリンタに出力して,それを客先に提示する方法などがとられている。

しかしDTPの現場は日夜進化している。色校正に関しても客先にカラーのプリンタを設置して,ネットワークを通じてプリントアウトをして確認したり,さらには全くプリントアウトをすることなく,PDFデータのみのやり取りで校正を終わらせるケースも段々とみられるようになってきている。ただ,そういったリモートでのプルーフには,ベースとなる色の値がきちんと決定され,さらにモニタやプリンタのキャリブレーションが確実にとれていることが前提条件になっている。

デジタルカメラからのプリンタ出力

冒頭で述べたように,近年デジタルカメラの普及により,カラーインクジェットプリンタが普及しているが,デジタルカメラからの出力に関してはなかなか満足のいく結果になりにくい。各プリンタメーカで画像変換処理を独自に行ったり,また,それぞれのプリンタのガンマ設定が違ったりしていることなど,理由はいろいろとあるだろう。最大の原因としては,撮影時の撮影者の意図や,デジタルカメラ固有のキャラクターをプリンタ側で解釈できないからであると考えられる。デジタルカメラでせっかく広いカラースペースを利用して撮影しても,一度,他の色空間を通ることによって,通過する色空間の範囲外の部分は切り捨てられてしまう。カラープリンタで,その切り捨てられた部分も再現できるのであれば,非常にもったいないことである。

色空間を,デジタルカメラからそのままカラープリンタに伝えることができるのであれば,意図したものに近いプリントアウトができるはずである。そのための仕組みとして,PRINT Image Matchingが挙げられる。

PRINT Image Matchingは,デジタルカメラの画像フォーマットとして普及しているExif(JPEG準拠)フォーマットをベースとし,その拡張領域の部分にカラープリンタへのコマンドを埋め込み,そのコマンドにより出力側のカラープリンタをコントロールしようする仕組みである。つまりデジタルカメラで撮影した時に,コマンドを埋め込むことにより,撮影者の意図が出力に反映されるのである。同じような仕組みとしては,ICCプロファイルを使った仕組みが考えられるが,その仕組みとの大きな違いは,添付されるデータの大きさにある。

ICCを使った仕組みでは,添付するプロファイルがモニタの分とプリンタの分で,合わせて500〜900k近くになる。一方,PRINT Image Matchingでは,すべてを含めても1kに満たない大きさで済んでしまうので,ハンドリングが楽である。ただし,PRINT Image Matchingは今までのICCを使った仕組みと置き換わるものではなく,またどちらが優れているというものではない。状況に応じて使い分けることによって,能率の向上や応用範囲の拡張が見込める。

対応しているアプリケーションはでき上がったばかりということもあり,エプソンのPhotoQuickerのみである。また,プリンタに関してもエプソンの一部の機種しか対応していない。しかし,対応しているデジタルカメラのメーカーは10社にも及び,今後はアプリケーションもプリンタもさらに増えていくものと思われる。

■出展:プリンターズサークル

2001/09/20 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会