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2002:刷版の動向

■DTPとCTP

2000年はCTPの導入が急速に進み,プレートセッタの導入台数が500台を超えた。このことは,少なくとも大きな流れとしては,プリプレスのデジタル化が終わって,次の段階に移りつつあることを示していると考えて良いだろう。

DTPからCTPへの大きな流れは,「何ができるかという技術の問題」ではなく,むしろ「何をやるべきかという意思決定の問題」と考えられる。CTPを論じる際,CTPそのものの技術動向より,ワークフローをどうすべきかが議論されるのもそのためである。校正やカラーマネジメント,プルーフや検版など,品質保証がCTPの最も重要なテーマとして取り上げられることも,その延長線上にある。

■プリフライト・チェック

プリフライトはその名のとおり,出力前にファイルの出力適性,特にフォントと画像の状態をチェックすることである。制作側で行われることが多く,製版・印刷側で行われるプルーフや検版とは区別される。しかし,CTPでは効率化以前の原理的な要請として,前工程へは戻らないことが原則であるため,印刷物製作上,最初に行われるチェックであるプリフライトが極めて重要な意味をもつ。プリフライトチェックの作業的な位置づけとしては,校了のデジタル化だと考えれば,その意味がつかみやすいだろう。

フルデジタルという以上,「後戻りも含めた工程間のやり取りを実現すべきだ」という考え方もあるだろう。しかし,むしろ上述のような状況において,「技術的に可能かどうかと,実際にどういう工程を組み立てるかは別だ」と考えたほうが良い。

プリフライト・チェックソフトは従来から,主にDTPで作ったファイルのチェックに使われている。例えばExtensis社のPreFlight ProやMarkzware社のFlightChecker,QuarkXTensionなどとして提供される製品がある。チェック項目はさまざまだが,アプリケーションレベルでのフォントの使用状況やカラー設定の具合,テキストの状況など,「ファイル」というより「ドキュメント」の状態をチェックするものである。

しかし,最近の傾向としてはPDFへの対応のほか,さらにその延長上でPDFワークフローシステムにプリフライト機能が組み込まれる場合も多くなった。また,日本語組版機能の充実で注目されているアドビのInDesignは,それ自体にプリフライト機能が組み込まれている。

■プルーフ

プルーフという言葉も,デジタル化の進展によって多様な意味をもつようになった。ここでは,文字どおり「試し刷り」「校正刷り」として,「版を出力する前のハードコピー出力によるチェック」という意味合いで考えてみる。DDCPは1980年代半ばに生まれ,90年ころから実用化されたもので,技術的には成熟している。DTPに期待が寄せられていた当時は,制作側で仕上がりがシミュレーションできるのなら,網点にこだわらずに制作側のイメージに合わせれば良いという考え方もあった。

しかしその後,ワークフローとしてのカラーマネジメントの必要性や難しさが強調されるようになった。さらにカラープリンタの驚異的な品質向上という環境の変化も影響して,現在ではむしろ,忠実な網点再現のできるDDCPの需要が増大している。どの製品を選ぶかは,要求品質や納期など仕事の内容によるが,DDCPの特徴を生かした安定した網点方式による忠実な再現が可能で,かつ大サイズな出力機がトレンドである。

90年代後半から続いている,カラープリンタやデジタルカメラなどの一般向け入出力機器の高性能化は,結果的にCTP化にも拍車をかけているようだ。DDCPは,技術的にも,また本来のコンセプトからしても,もともと「高品質なカラープリンタ」なのだから,カラープリンタそのものの品質が向上してしまえば,後はどれを選ぶかという問題になってしまう。

カラープリンタは圧倒的な低価格ゆえに,クライアントやデザイナーが導入する場合が多い。従って,問題となるのはクライアントやデザイナーから,「このカラープリンタの品質で」と言われた時の対応である。印刷側でもカラープリンタを導入して校正に使い,クライアントを含めたシームレスな流れの上でカラーマネジメントを確立すれば良いのだが,それはかなり特殊な場合に限られる。しかし,少なくともカラープリンタの種類とその出力特性を把握しておくことは,現実的な対応策となる。

考えなければならないのは,データのスムーズなやり取りでどのように一貫したデジタルデータの流れを作るかということである。

■検版

CTPを導入したユーザからは,検版の重要性が増したことが報告されている。一方,デジタル検版システムを使うと,現状ではかえって工程が増えてしまうという指摘もある。つまり,検版用に別にファイル出力しなければならないという問題である。このことは逆にいえば,検版がアナログ工程からまだうまく切り替えられていないことを意味している。

検版システムは,要は比較,各製品は,デジタルデータ同士の比較,データと版の比較,出力物同士の比較など,それぞれ訂正が正しくなされているかという内容のチェックや,版にきずがないかなどのチェックを行う。

データ同士の比較はともかく,出力物を比較することには,多かれ少なかれアナログの要素が入ってくる。そうなると製品そのものの機能に加えて,いかに使うかが成否を分ける鍵になる。例えば,現在のシステムでは設備コストや,大容量データのハンドリング,比較結果の表示方法など,いろいろな課題があるが,これはそのまま使う側の作業方法の問題ともなる。つまり,検版への設備投資をどうみるか,データフローをどう組み立てるか,あるいはどこまで機械でやってどこを目視するか,などである。

ところで,検版には根本的な問題がある。いかに機械で正確な比較を行ったところで,比較結果の最終的な確認は人間が目視で行わなければならない。出力物でもモニタでも同じだし,あるいは相違個所を色で示したり,リストアップしても同じである。これは,いかにデジタル化が進み自動化がなされても,打ち消しようのない事実である。むしろ,制作工程がデジタル化され,フローがシームレスになればなるほど,チェックにおける人間の役割が重大になる。従って,従来のプロフェッショナルによる目視の技術を改めて体系化することも議論の対象にして良い。

DS技研は,アナログ検版装置CP-i1000AW/ 2000AWや,デジタル検版装置DD-i500TF,アナログとデジタルのハイブリッド検版装置PP-i3648などの製品群をそろえ,CTP時代に焦点を合わせて,さまざまなケースに対応できる態勢を整えている。また,同社のProofEye-MeはWindows2000対応のデジタルデータの検版ソフトで,フィルムや刷版へ出力する前のRIP済みデジタルデータ(TIFF)でチェックを行うもので,上記のデジタル検版装置DD-i500TFと自動処理機能を一体化したものである。

DS技研は,アナログ検版装置CP-i1000AW/ 2000AWや,デジタル検版装置DD-i500TF,アナログとデジタルのハイブリッド検版装置PP-i3648などの製品群をそろえ,CTP時代に焦点を合わせて,さまざまなケースに対応できる態勢を整えている。また,同社のProofEye-MeはWindows2000対応のデジタルデータの検版ソフトで,フィルムや刷版へ出力する前のRIP済みデジタルデータ(TIFF)でチェックを行うもので,上記のデジタル検版装置DD-i500TFと自動処理機能を一体化したものである。

■品質保証としてのプルーフ・検版

本稿ではプリフライトチェックやプルーフ,検版,計測などに関する作業のそれぞれについて考えてきた。一つひとつを取り上げれば,内容のチェック,版のチェック,網点のチェック,色のチェックなどさまざまだが,全工程の中で考えれば,品質保証として位置づけることができる。 ISO9000シリーズを取得する企業が増えており,品質保証の重要性がクローズアップされている。

その場合,各工程におけるチェックというよりは,クライアントに対する最終成果物の品質保証といった意味合いが強い。しかし,最終的な品質をシステマチックに確保するためにも,プリフライトチェックや,プルーフ,検版について,品質保証として考え直すことが,今後ますます重要になってくるだろう。

■出展:JAGATinfo別冊機材インデックス2001-2002より

2001/09/25 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会