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ISO三大経費は「事務局人件費」「コンサルタント費」「申請・登録関係費」

〜ISO9000運用アンケート報告(第4回)〜


今回は、ISO9000の取得・運営維持の経費について取り上げる。経費の負担は悩みの種、導入後の問題点でも「維持経費の負荷」(32.8%)が三番目に挙げられている。取得時の経費のみならず導入後の維持経費も結構かかるため、それに見合った効果をだせるかどうか事務局も気が抜けない。従来の設備投資のように直接物を生産する道具と違って、結果が予測できるものではないので、経営手腕によって高くも安くもなるのがISOである。

〜ISO取得経費及ぶ維持経費〜
●企業によって1000万円以上の開き

取得時の費用として、認証の直接費、事務局の人件費、教育費、マニュアル作成費、コンサルタント費用などにどれぐらい掛かったかを尋ねたが、経費ランクは予想以上に分散している。「300万円未満」(20.3%)と「301〜400万円程度」(18.8%)を合わせて約4割というものの、401〜500万円程度が15.6%、1001〜1500万円が12.5%、1500万円以上が12.5%と適当に分散されており、企業によって1000万円以上の差があることになる。

では何に経費が掛かったのかを、掛かった項目順に番号をつけてもらった。掛かった経費のトップを比較すると、「事務局を含めた人件費」が最も多く22件で、次いで「認証申請・受審・登録関係費」が21件、「コンサルタント費」が19件でこの3つがダントツである。ISO取得経費の3本柱といえる。2番目に掛かった経費として最も多く挙げられたのが、「コンサルタント費」、3番目の掛かった経費として最も多かったのが「認証申請・受審・登録関係費」である。個々の企業によってそれぞれの比重の違いはあろうが、1.事務局人件費、2.コンサルタント費、3.申請・登録関係費というのが平均的な順番といえそうだ。
全体の経費金額を大きく左右しているのが事務局の人件費で、事務局担当者の人数が多くなればなるほど経費が増加している。501万円以上と回答した企業をみると63.0%が専任者あるいは混成であり、そのうちの8割強が2人以上の専任者を抱えている。専任者を3人以上持つ6件のうち、5件が1000万円を越える経費となっている。またその内1件を除く4件は、継続維持経費でも1000万円を超えている。

 兼任者企業であっても500万円を越える経費が掛かっているところが37.0%(10件)あるが、そのうち6割(6件)が兼任の担当者を3人以上抱えている。
内部経費である人件費に対して、あとの「認証申請・受審・登録関係費」、「コンサルタント費」は外部に支払う経費で、これらにもかなりの差がある。認証登録機関による基本料金の差と対象人数、サイトの数などによって大きく違ってくることやコンサルタントも「すべておまかせ」のフルコンサル契約から、ワンポイントアドバイスまで利用方法によってもかなり差がでる。それぞれの企業事情によって違ってくるので単純な比較はできないであろう。また、経費負担は少なくて済むならばそれにこしたことはないが、少ないからいい、多いいからダメだ、という議論は意味がない。

■ISO導入経費
300万円未満 13件 30.3%
301〜400万円程度 12 18.8
401〜500万円程度 10 15.6
501〜700万円程度 6 7.8
701〜1000万円程度 5 6.2
1001〜1500万円程度 8 12.5
1501万円以上 8 12.5
不明 4 6.3


■経費として掛かった項目
1位と回答した事業所 2位と回答した事業所 3位と回答した事業所
事務局を含めた人件費 22件 5件 2件
認証申請・受審・登録関係費 21 12 14
社内外の教育研修費 2 7 8
ISO関連の資料・本・ビデオ 1 0 2
ISO運営経費
(ISO文書管理システムやパソコン、棚等)
1 1 5
マニュアル作成費
(外部支援、マニュアル購入費等)
0 0 2
コンサルタント費 19 14 3
ISO導入による現場改善費用
(棚の設置、パーテーション、管理機器の設置等)
2 1 2


●年間の維持経費としては300万円未満が56%
取得経費とは対照的に維持経費の56.2%が300万円未満と回答。多くても400万円程度までという企業が65.6%を占めている。ところが一方、維持経費でも1001〜1500万円が7.8%、1500万円以上が6.3%ある。
維持経費として何に掛かっているかを、同じように尋ねたが、取得時とは若干違った傾向が見られる。最も経費がかかるものとして、トップに挙がったものを見ると「定期審査・更新審査関係費」が37件で一番多く、次いで「事務局を含めた人件費」が24件、3番目に「社内外の教育研修費」が6件で、コンサルタントはわずが1件であった。やはり維持経費ではコンサルタント費から、社内外の社員研修費に移行している。半年に1回あるいは1年に1回の定期審査や2年の1度の更新審査があるため、どの企業でも「定期審査・更新審査関係費」の比重が重くなっているようだ。2番目に多く掛かった経費としても「定期審査・更新審査関係費」(22件)が挙がっているのはまさにそれを裏付けている。その一方で「事務局を含めた人件費」については、その比重が大きい企業とそうでもない企業に2分されているのが窺える。「事務局を含めた人件費」(24件)をトップに挙げた企業の内、経費が300万円以上掛かると回答した企業が19件(79.2%)あるが、そのすべてが専任・兼任を問わず、担当者を2人以上抱えている。

今後は、環境ISOや情報JIS15001(プライバシーマーク制度)など複数のマネジメントシステムの導入、運営が考えられるなかで、事務局を共通化・統合化し、効率よく運営されるならば、決して高いものではないであろう。また、情報産業としてのシキュリティの問題、システム管理など企業としての信頼確保のインフラ整備が必要となることは明らかで、これからはその「管理システム」が企業のレベル評価の基本的な目安となるであろう。ISO9000はその出発点ではないだろうか。


■ISO維持経費
300万円未満 36件 56.2
301〜400万円程度 6 9.4
401〜500万円程度 2 3.1
501〜700万円程度 1 1.5
701〜1000万円程度 0 0
1001〜1500万円程度 5 7.8
1501万円以上 4 6.3
不明 10 15.6


■経費として掛かった項目
1位と回答した事業所 2位と回答した事業所 3位と回答した事業所
事務局を含めた人件費 24件 3件 1件
認証申請・受審・登録関係費 37 22 3
社内外の教育研修費 6 8 11
ISO関連の資料・本・ビデオ 1 1 4
ISO運営経費
(ISO文書管理システムやパソコン、棚等)
2 1 2
コンサルタント費 1 3 2
ISO導入による現場改善費用
(棚の設置、パーテーション、管理機器の設置等)
1 0 3
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2001/09/21 00:00:00


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