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なぜISOなのか?半数以上が「社内の意識改革・体質改善」を目指す

〜ISO9000運用アンケート報告(第5回)〜


今回のISOアンケートレポートは、導入にいたった動機について尋ねてみた。ISOも普及とともに企業によっていろいろな見方があり、本来の二者間取引における品質保証は3割程度になっている。ISO自体も時代とともに変化するのだから、動機も多様化して当然かもしれない。変化しても企業にとって有用なツールであり続けられるかどうかが重要である。

〜ISO導入の本当の動機は何ですか?〜
●「社内の意識改革・体質改善」がトップ、次いで「得意先からの要請」

ISO9000規格(94年版)は得意先に対する品質を保証するためのシステムであることから、得意先との取引関係上から取得することが一般的だったが、広く普及するなかで、経営ツールとして意識改革・体質改善を目指そうとする企業が増えてきた(2000年版はマネジメントシステムとなった)。今回のアンケートでも、本来の「得意先からの要請があった」(29.7%)が3割に対して、「社内の意識改革・体質改善にマッチしていた」(53.1%)は5割を超えている。「ISOの仕組みが経営理念にマッチしていた」(21.9%)を合わせると、75%となり経営ツールとして導入していることがよく分かる。また、「他社との差別化を意識して」(28.1%)、「同業他社の動きから」(18.8%)など競合環境を意識してという企業も少なくない。「品質マニュアルの必要性」(14.1%)が1割強に留まっているが、全社的に品質マニュアルを構築すること自体が「社内の意識改革・体質改善」の具体的な一例であることを考えれば実質はもっと高いであろうと思われる。しかしながら、マニュアルを作ること自体が目的ではないので、直接的な回答としては妥当な数字なのかもしれない。その他として「海外輸出向け製品の販売」という最もISO的な回答もあった。中には「社長命令」という回答があったが、ISOはトップダウンでなければ実現が難しいシステムだが、動機が社長命令というのではちと動機不純?

環境ISOなどでは、環境問題の広がりから営業・企画部門からの声(ボトムアップ)もあるようだが、品質ISOでそのような動きはないようだ。しかし「入札関係の動きから」(4.7%)という回答は、本アンケートでは少ないものの、東京都庁などが示した「入札への反映」の動きが広がれば、営業部門も黙ってはいられないであろう。本アンケート対象企業が2000年4月以前の取得企業であることから、入札と絡んだ動きがではじめた2000年夏以降に取得活動を行なった企業とは動機意識のズレがあるかもしれない。

■ISO導入の本当の動機は何か(複数回答)
ISO導入の動機 事業所数 %
社内の意識改革・体質改善にマッチしていた 34件 53.1%
得意先からの要請があった 19 29.7
他社との差別化を意識して 18 28.1
ISOの仕組が経営理念にマッチしていた 14 21.9
同業他社の動きから 12 18.8
全社品質マニュアルの必要性から 9 14.1
入札関係の動きから 3 4.7
その他 3 4.7


〜審査機関の選択は?〜
●自主判断が約6割、意外に多いコンサルタントの紹介
「自社の自主的判断」による選択が56.3%で最も多い。コンサルタント会社からの紹介も意外に多く28.1%と約3割弱である。それとは対照的なのが、「同業他社からの紹介」(9.4%)で、勉強会、社長会、ユーザー会等々いろいろなグループ活動を通して、取得企業からの紹介や口コミが結構多いのでなはいかと想像したが意外に少なかった。また地元商工会議所、審査機関などからの紹介・売込みなどもほとんどない。これらの傾向は、取得企業が増え、審査機関の売り込みが多くなった2000年4月以降と以前でかなり違っているかもしれない。現在では、印刷を審査できる審査機関も以前に比べるとかなり増え、審査機関での競合がかなりあるようだ。一方、得意先に製造業の上場企業を持っているところでは、審査機関を推薦されることもあるようだ(「得意先からの紹介」4.7%)。なぜならISO取得が常識になっている上場企業では業界毎に審査機関をもっており、傘下の企業グループや関連企業への拡大をはかっているからだ。得意先からの紹介もかなり増えるかもしれない。

 どのような選択理由があっても、審査機関の選択は重要で、定期審査、更新など長い付き合いとなるため、どのようなプログラムを準備しているのか、料金はどうか、実績はどうかなど、よくしらべて決定しなかればならない。評判などの幅広い情報収集と、最終的には「自社の自主的判断」がやはり一番大切だ。

■審査機関の選択について
審査機関選択の理由 事業所数 %
自社の自主的判断 36件 56.3%
コンサルタント会社からの紹介 18 28.0
同業他社からの紹介 6 9.4
得意先からの紹介 3 4.7
地元自治体、商工会議所等の紹介 1 1.6
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2001/09/29 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会