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DTP豆知識(199909)

本コーナーでは,DTPエキスパートを目指すうえで理解しておきたいことを模擬試験形式で解説します。JAGAT認証DTPエキスパート 福原節寿氏に,問題のポイントや重要点を解説していただきます。試験勉強のご参考に,またはDTPに必要な知識の確認にご活用ください。
次回,第13期DTPエキスパート認証試験は2000年3月12日に行われます。詳細はDTPエキスパートのページをご覧ください。



問1 フォトレタッチ

 次の文はフォトレタッチの注意事項を述べたものである。[ ]の正しいものを選びなさい。

 デジタルカメラなどのRGBのデータが入稿された時に,色バランスをチェックするためには,[A:(1)濃度ヒストグラム (2)Lightness (3)Saturation (4)Hue]を見ると良い。
Photoshopのレベル補正では,濃度域に対してピクセルの分布を棒グラフで表示する。通常のデータは,明暗のすべての領域にわたってピクセルがあるわけではなく,色成分ごとに分布が異なることが多い。その時に色のバランスをとる操作が必要になる。

 まず,入力されたデータのRGB各チャンネルごとの濃度の分布状態に合わせて,レンジの両端を設定する。
これによってコントラストが[B:(1)強く (2)低く (3)弱く (4)なく]なる。
それから個々の色合いを補正しグレーバランスを見る。
RGBのデータは,あるポイントでRGBの3つの数字を同じにすると[C:(1)Rが強くなる (2)Gが強くなる (3)Bが強くなる (4)ニュートラルグレーになる]。

 デジタルカメラはもともと階調が乏しく,レタッチすれば[D:(1)階調が豊かになる (2)どんどん悪くなる (3)アンダーになる]。
従来の製版では,カーブの変化で絵を作り変えるのが基本であったが,元の階調が乏しいデジタルカメラの画像では,ほかの操作を行ったほうが良い場合が多い。 例えば明度は変えずに色味だけシフトさせたいなら,[E:(1)CIE L*a*b* (2)CMYBk (3)グレースケール (4)網点]をベースにした機能を使えば,階調の段差はましになる場合がある。
 わかりやすい画像とは,[F:(1)ヒストグラムが凹型の (2)ヒストグラムが明部に寄った (3)ヒストグラムが暗部に寄った (4)ヒストグラムの平坦な]状態であるといわれている。自動でそのようにもできるが,しかし必ずしもそれが望んでいる画像とは限らない。いったん撮影した画像のどの部分に意味があるかを考えて,コントラストをつけなければならない。
 Photoshopでは,コントラストのスライドバーは[G:(1)色を変化させてしまう (2)彩度は変えない (3)シャープネスが変化してしまう (4)色がくすむ]。
 原則的には,レンジ,ホワイトバランス,トーンの後に,印刷に必要なシャープネスをかける。しかし,JPEG画像は圧縮によって[H:(1)画像がなめらかになって (2)画像が荒れがちで (3)ビットマップより品質は高く (4)再びビットマップには戻らず],シャープネスやコントラストを無理にかけるべきではない。


    【関連項目】
     フォトレタッチは,日本語に訳すと画像修正というべきもので,従来はフィルム上でレタッチしていた作業である。
    DTP工程では,デジタルの画像データを処理することを指す。
    特に,PhotoShop上でのオペレーションといっても過言ではないので,関連するPhotoShopの基本操作は,理解しておきたい。
    デジタルカメラの普及により,さらにRGBでのデータ入稿が多くなってくるので,RGBデータ上での処理および,PhotoShopでのカラーマネジメントの仕組みも含めたCMYKデータへの変換についての知識も必要となってくる。

     フォトレタッチは,日本語に訳すと画像修正というべきもので,従来はフィルム上でレタッチしていた作業である。
    DTP工程では,デジタルの画像データを処理することを指す。
    特に,PhotoShop上でのオペレーションといっても過言ではないので,関連するPhotoShopの基本操作は,理解しておきたい。
    デジタルカメラの普及により,さらにRGBでのデータ入稿が多くなってくるので,RGBデータ上での処理および,PhotoShopでのカラーマネジメントの仕組みも含めたCMYKデータへの変換についての知識も必要となってくる。

    【出題のポイント】
     ここではヒストグラムを基本に,画像データのセットアップ,主に濃度設定について問われている。

    【問題解説】
     画像データの内容を確認する方法として,濃度ヒストグラムがある。
    各チャンネルごとにとって色のバランスを確認したり,分布の形状でその画像の素性(実際には,ハイキー,ローキー,ノーマルなど調子,色の偏りなど)を,ある程度確認できる。
    スキャナのAIセットアップやPhotoShopの自動補正は,濃度ヒストグラムを元に処理している。
    図1はヒストグラムの一例である。横軸に濃度,縦軸にその個々の濃度でのピクセルの分布を表し,シャドウ側が分布の中心で,ハイライト側にほとんど分布がないことから,ローキーな画像(夜景のような,ハイライト部分がないようなもの)であることがわかる。
    Aは(1)が正解。Lightnessは明度,Saturationは彩度,Hueは色相で色の3属性である。

     「濃度分布に合わせて,レンジの両端を設定する」とあるが,ハイライト,シャドウの適性な濃度設定は,各チャンネルのレンジをそろえるため,通常短いチャンネルに合わせてバランスをとる。
    よって,濃度レンジが短くなる方向に補正がかかるので,調子再現のカーブの傾きは大きくなり,Bは(1)が正解。
    RGBのグレーバランスは,3チャンネルが同じ値でグレーとなるので,Cは(4)が正解。
    厳密には,RGBモードはデバイスディペンデントカラーであり,等量でグレーになるようにモニタなどのキャリブレーションをとっている。
    CMYKモードでのグレーバランスも理解する(インキにもよるが,中間部ではYMに対してCを10%くらい多くする)。

     レタッチ処理による色調,調子の変更や,フィルタ処理によるシャープネスなどはよくある作業であるが,もともと階調数が少ないデータ上での作業は,極端な調子の変更が思うようにできない。
    あえて行うと思わぬ結果(トーンジャンプなど)になる。Dは,(2)が適切。
    Eは,「明度を変えずに色味だけシフト」すると文中にあるので,明度がLで,色味(色相)が,a*,b*に相当するので,(1)が正解。

     Fは,文意より,濃度ごとでの面積分布がわかりやすい画像と解釈して,(4)が適切。
    Gは,コントラストの変更つまり調子の変更では,まずフィルタ処理であるシャープネスの変化はなく,彩度は色の掛け合わせで変わり,色がくすむことも,反対に鮮やかになることもあるので,(1)が正解。
    JPEGは非可逆圧縮(ロスあり)なので,完全に元の状態には戻らないが,1/10位の圧縮であれば,人間の目にわからず,実際の印刷レベルでは問題になることは少ない。
    ただし,高い圧縮率をかけると細かい絵柄の画像では,時としてディテールが失われ,元に戻す(伸長,復号する)とブロック状のパターンが現れて,荒れた感じになるので,Hでは(2)が正解。
    図1 ヒストグラムの例


    【模範解答】
    A.(1),B.(1),C.(4),D.(2),E.(1),F.(4),G.(1),H.(2)


    【キーワード】
    濃度ヒストグラム,濃度レンジ,コントラスト,JPEG圧縮




問2 モアレとスクリーニング

 次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。

 複数の規則的なパターンが重なった時に,別の新たなパターンが発生することを[A:(1)版ずれ (2)モアレ (3)色ずれ (4)ドットゲイン]といい,網点を使った多色刷りでは必ず起こる現象である。
これを目立たないようにするために,フィルム上で各色版の[B:(1)スクリーン角度 (2)スクリーン線数 (3)網点濃度 (4)網点密度]を変える。
一般には,例えば最も網点が目立ちにくい[C:@15度 A30度 B45度 C60度]にBkを置き,それに対してシアンと[D:(1)C (2)M (3)Y (4)Bk]の各版を,それぞれ[E:(1)15度 (2)30度 (3)45度 (4)60度]ずつずらして置く。
そしてこれら3色のうちのいずれか2色の中間に,モアレが起きてもわかりにくい[F:(1)C (2)M (3)Y (4)Bk]を置くというようにする。

 従来のスクリーニングは,網点の[G:(1)形状 (2)間隔 (3)濃度 (4)径]を一定にして,網点の[H:(1)形状 (2)間隔 (3)濃度 (4)径]を変えることで濃淡を表現している。
これに対し,FMスクリーニングでは,点の[I:(1)形状 (2)間隔 (3)濃度 (4)径]を一定にして,点の[J:(1)形状 (2)間隔 (3)濃度 (4)径]を制御することで濃淡を表現する。一定面積内の点の数は,明るく表現する部分では[K:(1)多く (2)少なく]なる。

 FMスクリーニングは各版を重ねても[L:(1)版ずれ (2)モアレ (3)色ずれ (4)ドットゲイン]が出ないので,6色,7色を使った印刷方式などへの展望を開いた画期的な技術である。

    【関連項目】
     よく起きるトラブルのひとつにモアレがある。
    網点を使って印刷する時に注意を払わなければならないのは当然だが,実際には絵柄の内容(布地,クーラーのパネルの横線など)がスキャナの入力解像度と干渉(同調)して起きる入力モアレと,網点の刷り重ねによって起こる出力モアレがある。

     モアレ対策としてスキャナでは,入力密度の変更,入力原稿の置き方,フィルタ処理(ぼかし)などがある。
    出力ではスクリーン角度の設定(RIPでの正確なスクリーン角度を得るためのスーパーセルの問題もある),FMスクリーニングなどがある。

    【出題のポイント】
     モアレを題材に網点全体の基本項目から始まり,FMスクリーニングの内容が問われている。


    【問題解説】
     この問題では,一般に多く使われているスクウェア(上下左右対称)の網点形状を前提に考えてもらいたい。
     「複数の規則的なパターンが重なった」と文中にあるので,Aは(2)が正解。
    図2は網点ではないが,格子を2枚重ねてモアレが発生する例を示している。
    こうしたモアレの対策には,そのパターン同士が重ね合わさっている網点の角度をふることで軽減する。
    実際は,あらかじめ各版の網点に角度をもたせて出力するので,Bは(1)が正解。

     スクリーン角度も以降の説明にあるように,いくつかの角度がある。
    単色で考えた場合は,45度のスクリーン角度が目になじみやすく,網点が目立ちにくいので,モノクロの時はだいたい45度を使用する。
    4色でも同様に,最も強い(目立つ)色,つまりBkを45度にするので,Cでは(3)が正解。
    実際の使用では,GCRを除きBkは補助の版として使用し,主版としてM版(C版)を使用して45度にすることが多い。
    さて,この問題上でBk版を45度とした時,角度の設定を30度ずらした場合に,最もモアレは目立たなくなるので,Eでは(2)が正解。

     前後するが,Bk版45度に対して主版であるM版とC版を配置するので,Dは(2)が正解。
    30度ずつ角度をふると,90度の角度内には,実質3つの角度しか設定できない。
    従って,一番目に訴えにくい(目立ちにくい)版を,30度ずつふったものの間に設定するので,Fでは(3)が正解。
    モアレにもいろいろなものがある。
    角度が同じ場合に出る同角モアレ,2,3版と重ねて出る2,3次モアレ,4色重なった部分に亀の甲羅のような模様が表れるロゼットモアレなどである。

     従来のスクリーニングでは,階調をハーフトーンセルの中で形状の大きさ,つまり径を変化させて表現するが,網点の間隔(形状の中心)は一定である。
    FM(Frequency Modulation)スクリーニングでは,階調はハーフトーンセルの中でのドットの数,密度つまり間隔を変化させて表現するが,一つひとつの形状,大きさは一定である。
    図3は,4つのハーフトーンセルの中に網点の大きさを変えて,従来の網点(左)とFMスクリーニング(右)を並べたものである。このことより,設問G〜Kは理解できる。

     このFMスクリーニングには,いろいろな特徴がある。
    網点形状がないので調子再現がスムーズであり,ディテールの再現が向上する。
    Lの解答になるが,スクリーン角度をもたないのでモアレが出ない。
    また,4色以上の刷り重ねも可能となる。後工程においては,ドット自身が小さいので高精細の網点同様の管理が必要となる。
    図2 格子の重なりによるモアレ

    図3 従来の網点とFMスクリーニングによる階調再現


    【模範解答】
    A.(2),B.(1),C.(3),D.(2),E.(2),F.(3),G.(2),H.(4),I.(4),J.(2),K.(2),L.(2)

    【キーワード】
    網点, スクリーン角度,スクリーン形状,線数,モアレ,FMスクリーニング




(出典:月刊プリンターズ・サークル連載中「DTPエキスパート認証試験対策講座」 1999年9月号より)

1999/10/13 00:00:00


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