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DTP豆知識(200110)ページレイアウトと製本,ワークフロー

本コーナーでは,DTPエキスパートを目指すうえで理解しておきたいことを模擬試験形式で解説します。JAGAT認証DTPエキスパート影山史枝氏に,問題のポイントや重要点を解説していただきます。試験勉強のご参考に,またはDTPに必要な知識の確認にご活用ください。DTPエキスパート認証試験の詳細はDTPエキスパートのページをご覧ください。


問1 ページレイアウトと製本

次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。

 製本様式には,中綴じ・平綴じ・無線綴じ・あじろ綴じ・糸かがり綴じなどがある。綴じ方が変われば,企画・デザイン・レイアウトの段階で配慮が必要になる。

 中綴じの場合は外折から内折(芯ページ)になるに従って,左右の仕上がり寸法が[A:(1)大きくなる (2)広がる (3)小さくなる]ため,[B:(1)外折 (2)内折 (3)外折と内折の中間]ページの判型の左右寸法を小さくする。目安として,16ページ1台で1mm程度小口側の寸法を短くする。

 平綴じの場合は,針金の綴じ代分を折りの中心から左右に[C:(1)5mm (2)25mm (3)50mm]程度のノド空きを確保する。その分,左右ページの版面は小さくなる。
 無線綴じの場合は,折りの背の部分がミーリングカット(ガリ代)される分を[D:(1)1mm (2)3mm (3)10mm]ほどみておく。造本上の強度を確保するために,紙質にもよるが,ベタの絵柄がノドまで入るようなデザインは避けたほうが良い。

 糸かがり綴じとあじろ綴じは,折りの背の部分は削らないので,通常の判型でレイアウトすることができる。
 印刷物で製本に関する主なトラブルとして,文字や絵柄が[E:(1)ノド (2)版面 (3)仕上がり線]ぎりぎりにあると,仕上げ断裁後に字切れや白が残ることがある。それを避けるには,絵柄は外トンボまで伸ばしておいたり(絵柄の塗り足し),写真のキャプションやネーム類は仕上がりから5mm程度[F:(1)内側 (2)外側]に追い込んでおく。
 特に中綴じの場合には,内と外で仕上がりが異なるので,小口側の字切れには注意が必要である。

    ■出題のポイント■
     ページものを制作する場合には,製本様式や工程を知ることで,製本段階でのトラブルを避けるだけでなく,本をデザインする上でも応用がきくようになる。製本様式の種類・工程を知り,企画・デザイン・レイアウト段階で配慮すべきポイントを整理しておく。

    ■関連項目■
    製本様式の種類と特徴およびフロー,折丁と面付け,造本設計,版面の設計

    ■問題解説■
     製本様式を綴じ方で分類すると,針金や糸で綴じる方式と糊接着で綴じる方式に分かれる。

     週刊誌やパンフレットなどに用いられる中綴じは,表紙と本文が同時に丁合され,表紙の上から本の中心を針金綴じし,表紙とともに背以外の三方(天地小口側)を断裁して仕上げる。中綴じ製本では,中心で綴じるため開きやすくノド空きを考慮する必要がない反面,すべての折丁が重ねて綴じられるため,内側(芯ページ)ページへいくに従って,小口方向の仕上がり寸法が本の厚み分小さくなる。特に用紙の厚い場合やページ数が多い場合には,このことを計算に入れて,レイアウト用紙上に内側ページの仕上がり寸法を示す線を入れておくと良い。目安としては,16ページ単位の折丁ならば1台で1mm程度小口側の寸法を短くする。束厚は14mm程度までが限界であり,これ以上だと製本品質に影響する。

     ページ数の多い製本に用いられる平綴じは,背側から5mm程度の所を表紙の上から針金で綴じる方法である。そのため,針金の綴じ代分を考慮し,折りの中心から左右5mm程度のノド空きを確保する。厚い本でも丈夫に綴じられる反面,他の綴じ方に比べ,左右ページの版面がノド分狭くなる。

     文庫本や電話帳などに見られる無線綴じは,接着剤だけで綴じる方法で,折りの背側を3mm程度カッターで切り飛ばして(ミーリングカット),その面をホットメルト(高温で溶融する接着剤)で固定し,表紙をくるんで三方裁ちして仕上げる。ミーリングカットされた後の部分が判サイズとなるため,レイアウト段階ではカット分を考慮し,「判サイズ+ミ−リングカット分」で制作し,見開きにまたがるような絵柄は,ノド部分でダブらせるようにしたり,ベタの絵柄がノドまで入るデザインを避けるなどの工夫をする。

     無線綴じと同様に接着剤だけで綴じるあじろ綴じは,背側に折り段階で接着剤を浸透しやすくするためのスリット状の切り込みを入れて,折りの中まで接着剤をしみ込ませて強度を上げている。このあじろ綴じや上製本で用いられる糸かがり綴じでは,背の部分は削らないため,制作上は通常のレイアウトでデザインできる。

     このほか,制作上配慮すべきこととして,仕上がり線ぎりぎりにある絵柄や文字について,断裁時のトラブルを避けるために,絵柄は外トンボまで塗り足しすることや,写真のキャプションやネーム類などの文字は,仕上がりから5mm程度内側に追い込むという対応をする。特に,中綴じでは,内折と外折で小口側の仕上がり寸法が異なるため,内折の小口側レイアウトへの注意が必要である。

     さらに,綴じ方によって丁合や面付け方法が異なったり,あじろ綴じのように折り段階でスリット状の加工を施すなど,企画・制作だけでなく進行管理上も製本の知識は必須となる。

    ■用語解説■
    製本様式 各図参照。

    ミ−リング(milling) 無線綴じ製本で,本の背の部分を切り削る処理。

    ベタ 網点面積100%の状態。

    キャプション(caption) 写真や図版につける説明文。

    ■解答■
    A:(3)小さくなる B:(2)内折 C:(1)5mm D:(2)3mm E:(3)仕上がり線 F:(1)内側


問2 ワークフロー

次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。

 DTPソフトと従来の製版システムを組み合わせて使う方法として[A:(1)DCS (2)OPI (3)API (4)ATM]がある。高品質のスキャナで取り込んだ大容量の画像データを出力サーバに入れ,同時にDTPでレイアウトするための[B:(1)低 (2)中 (3)高]解像度のデータを作成する。DTP側でレイアウトして出力する時には,貼り込まれた画像を,サーバ側で保持していた[C:(1)低 (2)中 (3)高]解像度画像にすり替える。画像すり替えを行うためには,割り付ける低解像度画像ファイルの名前は高解像度データのファイル名と[D:(1)異なって (2)対応して]いなければならない。

 この方法では,レイアウトソフトで低解像度データを割り付けて拡大/縮小や回転などができ,またネットワークの負荷も軽くなる。しかし,レイアウト用画像を修整して差し替えがうまく働かなかったり,画像の倍率を変更して画像の[E:(1)移動 (2)劣化]が起きることがある。

 DCSはカラー画像のフォーマットに[F:(1)RGB (2)CIE (3)PICT (4)EPS]を用い,高解像色分解版用ファイル[G:(1)2 (2)3 (3)4 (4)5]個と,レイアウト表示用低解像カラー画像,およびこれらのリンク情報をもったマスターファイルからなる。DCS2.0では,これらを単一のファイルとして扱える。

 レイアウトはマスターファイルを使ってDTPで行い,出力する時に,レイアウトソフトがマスターファイルにある[H:(1)コンバート (2)エクスポート (3)リンク]情報を元に,高解像色分解版用ファイルを読み出して自動的に差し替える。

 これらとは別に,DTPのネットワーク環境の高速化や,パソコン処理能力の向上を背景に,画像を[I:(1)TIFF/IT化 (2)GIF圧縮 (3)JPEG圧縮]してレイアウト時にも実画像を扱い,出力時に差し替えをしないワークフローも注目されている。

 PostScriptは,再現条件が整わないと出力できなかったり,文字化けするなどの問題がある。だがデータの自立性を高め,構造をシンプルにして,RIPへの依存度を低めた[J:(1)EPS (2)PICT (3)WMF (4)PDF]はフォントの埋め込みをすると,出力結果を予見しやすくなる。アメリカでは,広告の配信や出版社から印刷会社に渡すデータフォーマットとして定着している。

    ■出題のポイント■
     ワークフローを構築する際のポイント,およびネットワーク環境・パソコン・各種アプリケーションソフト・ファイルフォーマットの特徴を理解する。

    ■関連項目■
    PostScriptワークフロー,PDF,データ圧縮,LAN,フォント,システム設計

    ■問題解説■
     DTPの始まりのころは,パソコンの能力に限界があり,高解像度画像のレイアウトや出力を効率良く行うことが困難であったため,製版専用システム(CEPS)を利用した高解像度画像編集が行われていた。これらのシステムの機能の一つにOPIがある。流れとしては,スキャナ入力後の高解像度データをLAN経由でCEPSへ転送すると,自動的に低解像度データを生成し,パソコンのレイアウト時には,この低解像度データを利用し,出力時には,CEPSを経由して高解像度データにすり替え出力を行うものである。この方法によって,出力時のネットワーク負荷やレイアウトマシン側の作業負荷を軽減できる。CEPS以外にも専用のOPIサーバがあり,同様の機能を実現している。高解像度データを多数使用するカタログ・大判チラシなどのワークフローでは,このようなシステムを利用する場合がある。

     これらのOPIシステムでは,TIFF/EPSなどのファイル形式を使用し,低解像度データと高解像度データはファイル名で対応するように管理している。低解像度データには,OPIコメントとしてカラー画像のサイズや位置情報などを含んでいるため,レイアウトソフト側で低解像度データを使用して拡大/縮小や回転などが可能なものもある。しかし,画像倍率の大幅な変更による劣化や,ファイル名のリンクミスによるトラブルなどが発生することもあるため,OPIを利用する場合には,出力側との打ち合わせを行っておくことが望ましい。

     DCSは,画像ファイルの保存時に,高解像度分解データとレイアウト用の低解像度プレビューデータを作成する方法である。画像データの出力転送時間を短縮するために考えられた方法で,ファイル保存形式にEPSを用いており,高解像度分解ファイル4個(CMYBk)とレイアウト表示用の低解像度データ1個の計5個のファイルができる。低解像度データはマスターファイルともいい,高解像度データとのリンク情報,校正刷り用の出力情報,プレビュー用のPICT(Macintosh)またはTIFF(Windows)を保持している。出力時には,このリンク情報を元に自動的に差し替えを行っている。現在,DCSには,DCS1.0とDCS2.0があり,DCS2.0では特色が扱えるようになり,単一ファイルとしての保存も可能になっている。

     これらのワークフロー以外に,実データをそのまま利用し差し替えを行わない方法として,画像データをJPEG圧縮して使用し,出力時の生産効率を上げる方法や,出力用のレイアウトデータをフォント埋め込みを行ったPDFファイルとして出力機に転送することで,RIPへの依存度を低める方法がある。

     JPEG圧縮を利用する方法では,高解像度画像データをEPS保存する際に,EPSオプションのエンコーディングでJPEGを選択して保存する方法と,高解像度画像をJPEG保存(最高品質低圧縮)する方法があり,いずれもレイアウトから出力まで実データを利用する。ただし,JPEGエンコーディングを利用する場合には,RIP側で対応している必要がある。JPEG保存したファイルを利用する場合には,割り付け可能なレイアウトソフトが,QuarkXPress 4.1,PageMaker,InDesignなどに限定される。品質についても,圧縮を複数回繰り返すと劣化を招くので,元データを残しておき,修正が入った場合などに備えておくと良い。

     PDFファイルを利用する方法では,PDF作成側のマシンに埋め込み可能なアウトラインフォントを搭載し,PDF作成時にフォントを埋め込むことで,RIP側にフォントが搭載されていなくても出力可能とするもので,出力機への依存度を低めた出力フローが構築できる。ただし,この場合もRIP側でPDF出力に対応している必要がある。

    ■用語解説■
    製版システム(Color Electronics Prepress System) 従来CEPS(セプス)と呼ばれていた製版用の画像処理システムのこと。

    OPI(Open Prepress Interface) 製版データ処理のための規格で,スキャンデータを高解像度データと低解像度データに作り分けて,レイアウト時に低解像度データを利用し,出力時に高解像度データにすり替え出力することで,ネットワーク負荷やレイアウトマシン側の負荷を軽減するもの。

    DCS(Desktop Color Separation) 画像データのファイル保存形式のひとつで,EPS形式のファイル内で,マスターファイルと呼ばれるレイアウト用のプレビューデータと高解像度の分解済みデータに分けて保存される。

    JPEG圧縮(Joint Photographic Experts Group) カラーの静止画像の圧縮方式のひとつで,圧縮率を選択することで,1/10〜1/100までの圧縮が可能である。

    PDF(Portable Document Format) さまざまな文書を電子形式で配布するために,アドビシステムズ社によって開発されたファイル保存形式。PostScriptをベースにしており,相手のコンピュータの機種にかかわらず,文字やレイアウト情報を正確に再現することができる。

    ■解答■
    A:(2)OPI B:(1)低 C:(3)高 D:(2)対応して E:(2)劣化 F:(4)EPS G:(3)4 H:(3)リンク I:(3)JPEG圧縮 J:(4)PDF
(出典:月刊プリンターズサークル連載 2001年10月号記事より)

2001/11/05 00:00:00


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