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長い目で見るべきバリアブルプリント

バリアブルプリントとは、一つの紙面パターンを多数印刷するものではあるが、1枚ごとに紙面の一部が差し替えられ、場合によってはレイアウトも一枚ごとに調整されるようなものを指す。1枚ごとのデータの差し替えのメカニズムがどこかに必要なので、DTPなどとプリンタの間に何らかのシステムが挟まっていて、その分のコストがかかるが、それをペイできるところは、今この社会の一部にしかなく、すぐに広くは活躍しそうにはない。

それはバリアブルプリントがOneToOneマーケティングと対のように考えられ、販売のターゲット一人一人に合わせた訴求ができる方法ということに意識がいきすぎた結果ではないかと思う。主に販売経緯から得られた顧客の属性をもとに、コンピュータがどの訴求方法がよいかを自動的に当てはめて行くメカニズムは悪くはない。しかし営業マンが面談している場合以外は、たいていは顧客との取引つきあいが薄いので、顧客の情報集まらず、結局顧客満足につながるようなOneToOneはできないようなことを以前に書いた。

一方、商品を購入した側こそOneToOneの機能を使ってもらいたいことはいくらでもある。その典型がサポートであって、客は何か不都合があった時にどこの誰に頼めばよいかは重要な問題である。サポートを適切に行うには、客の属性として、ロケーション、使用暦、初級・中級・上級とか、主な使い方とか用途など、さまざまな情報を押さえておかなければならないし、それらのトレースが必要である。

だいたい日本のメーカーで、利用者登録の際に記載した内容に基づいたフォローやサポートがちゃんとされていると感じた経験はない。ところがアメリカの通販では客のカルテのようなものをベースに営業しているところがあり、この差がOneToOneにも結びついているように思える。

要するに目下の売上を上げる目的だけのためのOneToOneではなく、顧客とのリレーションシップの確立のためOneToOneを使って長くつきあう努力をすると、そのつながりの中から顧客満足に必要なデータがとれるはずである。このためにはマーケティングの考えを切り替えなければならない。

よくセレクティブバインディングをすると、自分がもらえない情報ができて顧客が不満がるのではないかという話があるが、これも逆で、客がもう子供は作らなくなったなど、「これはいらない」という情報を押しつけないというサービスを向上させる考えが必要だ。

いずれにせよ自分の都合で客のデータを取るだけではなく、取ったデータを元に顧客に何かを還元するという循環を繰り返す仕組みを作る必要があり、その中ではバリアブルプリントなどもコミュニケーションの方法として埋め込まれるということではないだろうか。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 168号より

関連情報 印刷発注者がこれからのコミュニケーションをどのように考えているかについて、techセミナー「紙媒体と電子媒体の境界〜ユーザー側の判断条件の変化〜」が開催されます。

2001/11/19 00:00:00


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