本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

JDFを活かすも殺すもユーザしだい

CIP3はPostScriptデータの中で印刷制作工程の汎用な情報交換を目指していたが、実際はプリプレスのbitmapデータを元に印刷機のインキツボ制御するの用途が主で、また紙断裁機の位置制御にも使われた。これらはCIP3のPPF規約を使う。一方Adobeは、PJTFというコンテンツから出力までの制作仕様を記述する情報交換フォーマットを開発し、RIP・出力までのワークフローの自動化を目指した。

その後印刷作業のオンライン化のみならず、顧客・外注先とのオンラインのコラボレーション、さらに印刷見積などのEC化の動きが急になるとともに、こういったオンラインのシステムはWebブラウザを使ってXMLでデータ交換することが主流となった。そこでdrupa2000の時に、CIP3・PPFとPJTFをあわせて、XMLで記述できるようにしたJDFが標準化団体CIP4から提案された。CIP4はCIP3にProcesssの概念を足して改名したもので、これで印刷物制作の最初のクリエイティブのところから印刷物の完成品の出荷まで作業上の事項が記述できる。

これにより制作面では次工程・関連工程との情報交換がオンラインで行え、人間同士の情報交換に基づいて仕事をするのではないので伝達ミスがなくなるとか、データに次の作業に必要なことが記されていて、それをアプリケーションソフトがこのデータを解釈することで、作業ワークフローの自動化に向けた改善ができる。

また管理面では、どこでどの作業がされているかがコンピュータとネットワークで把握できるので、分散的に作業をしていても、営業・工務・現場の認識ギャップがなくなるとか、個別作業の実態が集計できることになる。これは直接コストには関係ないようにみえるかもしれないが、工程上の問題点の発見と言う点では非常に重要なテーマである。

JDFは人間が見る情報ではなく、機器やアプリケーションが対応しないと使えないが、CIP3/PPF・PJTF・XMLともにすでにあるので、これを何らかの応用に組み込む作業は早くできるはずといわれた。事実drupa2000から1年後にはJDF対応と称したソフトや機器のデモは行われたが、長い印刷工程の中で一部分がJDFに対応しているだけでは、上記のようなJDFのメリットは発揮されない。

JDFはXMLの拡張性を反映した柔軟で大きな封筒であり、JDFだけを見ていても何も解らない。当面は実績のあるCIP3/PPFのXML化改訂版と、プリプレス工程内ワークフロー用と、見積もりの際の印刷仕様記述という3分野は別々に動いていくだろう。それらが統合してJDFの真価が発揮できるかどうかは、ベンダーやアプリケーション開発者のレベルの話ではなく、利用者側の管理水準やIT度合による。コンピュータで統合管理しない会社は永遠にJDFの恩恵にはあずかれない点が従来のタナボタ的に利用者がメリットを享受した機器進化とは全く異なるのである。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 169号より

関連情報 印刷工程を超えたシステムをテーマに、12月13日に「JAGATトピック技術セミナー」が開催されます。

2001/11/21 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会