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求められる受発注双方のシナジー

日本でもDTPは10年もかからずに印刷物作りの主流になったが、DTPの特徴は写植・製版に取って代わっただけでなく、むしろ原稿を用意する発注側のデジタル化あるいは内製化をもたらした点にある。DTPの利用範囲は従来の印刷物だけではなく、プレゼンテーションとか、カラープリンタで出力するものがある。また間接的にはWEB用など、いわゆるワンソース・マルチユースとかクロスメディア的な広がりがあり、印刷発注側もDTPにある程度投資しても損はないようになった。

印刷発注側のデジタル化によって、次の段階であるネットワークを介した共同作業が行われるとか、印刷物のオンライン発注へと突き進むように思われた。しかし実際はDTPのオンライン化に関しては大きな障壁があった。未だにMOでのデータの入稿が主流で、印刷発注側がDTP作業をした後で、受注側もDTP作業をするような状態が続いている。

そのために印刷側がCTPを入れても、データを受けて即印刷ということができるのは、双方がもともと密な関係を構築できていた場合のみである。長らくDTPをやっているデザインハウスや編集プロダクションであっても、印刷会社に入ったデータをチェックすると何らかの不具合が見つかるとか、発注側の色分解の設定やカラーマネジメントの設定と異なることを印刷側で設定しなおすなどが日常茶飯事である。

印刷側は出力した後でのトラブルを防ぐためにデータのチェックを行うが、本当は入稿してから不具合が見つかっても遅いのである。アメリカなら発注側にデータを突き返すかもしれないが、日本では力のある出力センターが何とか修正して出せるようなサービスをしていたし、印刷側でもうまくでない事情を説明するためにデータを調べるなら、データを正した方がよいと判断するのだろう。

プリフライトチェックで問題を見つけるのと同時に、問題が起らない使い方が重要で、印刷会社が発注者のDTP環境を設定したり、発注者側のトレーニングやオペレータの派遣をすることもあるなど、力づくでDTP環境合わせをしなければスムースに仕事は流れない。特にカラーマネジメントの環境合わせなどはメゲてしまう場合も多く、リモート校正が進展し難い。

結局のところ印刷会社は余計な投資をしているので、デジタル化で思ったほど安くはならないという人もいる。これはアプリケーションからRIPまで個々にバラバラにバージョンが上がっていくとか、アプリケーションがデータのノーマライズをしないとかが原因だった。DTPの立ち上がりの時期はそれでも仕方がないが、DTPが印刷作りの主流になった以上、DTPのシステム提供者はもっと成熟したシステムを掲げる必要がある。すなわち努力すれば利益の出るDTP、それ以前にロスのないDTPである。

今DTPをしている人は「バージョンとともに変わる基準」に基づいて仕事をしているわけで、これはDTPのボトムアップの進化の限界を表している。実はこのような2重の投資と手間の問題は印刷とWEBとの関係にも見られることである。たとえ近いうちにXMLの環境が整ってもボトムアップの努力の積み重ねだけではクロスメディア的な使い方がスムースに出来るとは思えない。もっとメディア作りの受発注全体を貫いた大枠をリデザインする必要があるだろう。

PAGE2002では「コミュニケーションの再構築」をテーマに、中長期にわたるメディアの動向を取り上げ、今後メディアの受発注の双方が一緒にソリューションを模索していく契機にしたいと考えている。また近くは、印刷発注者がこれからのコミュニケーションをどのように考えているかについて、techセミナー「紙媒体と電子媒体の境界〜ユーザー側の判断条件の変化〜」を開催します。 いずれも受発注双方の新たなシナジーで、ともにリスクを回避しながら新たなメディアにスムースに取り組むことを目指しています。

2001/11/22 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会