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DTPまわりで変わったもの、変わらないもの

近年DTP周りで変わったもの典型はデジタルカメラであり、一方で変わっていないものの典型が組版である。デジタルカメラに技術的なブレークスルーがそうあるわけではないが毎年こなれてくるので、新たなものに取り組んで見たい人には格好の対象である。しかし使い込むとノウハウが身につくようでいて、実際には新製品がでるのでまたテストのやり直しになる。そういうサイクルに巻き込まれるのは仕事としては大変だが、個人的な興味としては結構画像の勉強になるので、製版と違うところから画像の達人が現れたりする。

デジタルカメラの歴史はまだそうないので、フィルムカメラに追いつけ、追い越せという基本充足の段階にあるが、その出口は大方見えかかっているという人もいる。今はまだCCDとかカメラの機構的なハードの課題が多いが、量産ベースに入ったところはメカ式カメラに比べてデジタル機器の方が利幅がとれるだろう。そのような流れでカメラ生産の勝ち組負け組の分かれ目が来るであろう。

次には絵作りとか絵の加工のようなソフトの問題に向かう。ソフトが進むとCMOSのようなハードに歩があるようになるかもしれない。そうこうしているうちに、皆低価格化して皆負け組ということにならないとも限らない点がデジタルの怖いところである。

一方組版というのは対称的に基本充足の段階は過ぎたテーマである。そのことを踏まえないと開発課題は捉え難い。大日本スクリーン製造の郡司氏は、元スーパーデザイニングの柴田氏が「もう組版は死んだ」といっていることに共感しておられ、今は組版の火は消えたに等しいといった。AdobeのInDesignがもっと早く出てれば組版革命というか、組版がホットな話題だったかもしれないが、日本語DTPは市場がQuark3.3で固まり、そこからの改善も改善要求も出てこないという意味だろう。EdiColorには若干失礼な見方だが、「組版が盛り上がらない」のは、予想していた以上である。

これは元々日本語DTPの残された大フロンティアである出版業界を掘り起こすために、住金もAdobeも組版機能で切磋琢磨したわけだが、この結果は、出版業界はたとえ「仕様」の策定ということであっても、自分で組版に手を染めたくないとい言っているのに等しい気がする。

組版の次なる高度充足のテーマは、出版ニーズの文字の並びの調整機能だけでなく、指定なしでのさらなる自動組版の要求、モジュール化した高度な組版プログラムをメモ帳のような簡便な文書ソフトの中に組み込み要求など多様化することが考えられる。高度充足にはペアカーニング、フォントに合った自動組版調整、異体字問題などはそれなりのフォント情報が必要になるが、こういった課題はOpenTypeの普及の先の次のステップとなるだろう。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 170号より

2002/01/13 00:00:00


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