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紙が乗り越えられる日はくるのか?

20世紀は情報の爆発の世紀といってもよく,それは情報メディアの躍進とともに,工業化・世界大戦・復興・グローバル化・文化の衝突など,その社会的作用で人類が振り回された世紀であった。その中で電子メディアも育ったわけだが,紙のメディアにも伸びる余地は十分に残されていて,共に発展した。印刷業界もその恩恵を非常に多く受けることができた。

しかし先進国では紙の消費がこれ以上伸びられない事態になり,一方で台頭する電子メディアに対する期待から,ペーパーレスとか本がなくなるとかの議論もされ,紙と電子メディアの対立の図式ができた。eBook,電子ペーパー,ユビキタスコンピューティングなど,既存の紙メディアの領域と重なる開発に情熱を燃やしたのが20世紀末であった。しかし両者の機能比較がいろいろ行われたが,どうも優劣を論ずるよりも,よい組み合わせで使うことを考える方が現実的という見方に落ち着いてきているようにみえる。

2001年にJAGATが行った2050年シンポジウムでの討議でも,電子メディア等と紙とは対立のみではなく競争・共存・融合という観点でその可能性を探る事が重要と判断した。今回のPAGE2002基調講演はこのような成果を踏まえて電子メディア側のアプローチを中心に紙も含めてこれからの方向をさぐるきっかけを提供する事を狙いとしている。
具体的には,(1)紙の電子化という事で『電子ペーパ』の動向,(2)『モバイル』ツールでどの様にコミュニケーションが変わるのか,(3)更にネットワーク社会で『バーチャル』な活動等がどの様な姿となるのかという3段階のステップで切り口を提供する。

 一方この様な基調講演と連動して,実際にデバイスやシステム等を見て頂き,講演内容をより深く理解して頂く展示コーナを今回新設した。これが『特別技術展示コーナ』である。約10社様の御賛同を得て,文化会館2階A会場に12小間という大きなスペースをとり展示とデモンストレーションを実施する。展示物は主に基調講演にて紹介された技術,デバイス,ソフト等であるが,他にも関連する開発中のデバイスや発売直後の最先端製品が展示される。展示物は概略4分類できるが以下簡単にその見所を紹介する。

第1は「電子ペーパ」である。東海大学の面谷研究室様よりパネル展示で電子ペーパ開発の推移や現在の開発状況,又面谷研究室での研究成果も示して頂く。凸版印刷株式会社様からは米国イー・インク社との共同プロジェクトの成果である電子ペーパが展示される。又,富士ゼロックス株式会社様からは,電子ペーパと情報端末が展示され,どの様な使い方が考えられているのか具体的に体験できる予定である。以上により,電子的に「紙」を作るとどの様なものになり,どう使えるのかを体験し,紙との競争・共存・融合を考えるきっかけが得られるであろう。

第2は「ディスプレイ」である。昨年は新しいディスプレイデバイス・方式が新聞紙上等をにぎわせた。このコーナではまず大日本印刷株式会社様より「有機ELディスプレイ」を展示して頂く。印刷の技術が活かされている点が見所であろう。一方,既存の表示装置も技術開発が進んでおり,日本アイ・ビー・エム様からは超高精細液晶ディスプレイが展示される。このディスプレイでは地図等の小さな地名表示も確実に表示されており,印刷の観点からも各種の用途が考えられよう。
また,NTTアドバンステクノロジ様からも液晶ディスプレイを用いた超高精細画像通信システムを展示して頂く。高精細ネットワークデジタルカメラから撮像されたデータが表示に用いられる予定である。一方,富士通株式会社様からはディスプレイで文字を表示する時のジャグ対策の新技術を展示して頂く。特に小型のディスプレイ等でも利用できる新しい技術である。

第3は「モバイル・ネットワーク」である。ネットワーク社会において如何に自分が必要とする情報を集め活用するかは大きな課題となる。News Watch株式会社様からは,必要なコンテンツをどう集めるか,またどの様なサービスが考えられるのかについて提示して頂く。一方,ネットワークが日常のものになるに従い,地理的な距離は殆どなくなり,瞬時に世界各地の情報を得る事が可能となる。
今回は世界100数十ヶ所に設置したカメラと会場内を接続し,各地のカメラを自由に操作し自分の必要画像を手にする体験展示が行われる。これが,キヤノン様のWebView Livescopeである。カメラの操作権を得る事で必要画像情報を獲得する事ができる。

第4は「サイバースペース」である。キヤノン様から Cybercity Walker を展示して頂く。これは町の中を疑似移動体験できるシステムであり,ジョイスティクで自分の進行方向や見たい方向を指示する事により,その場に居ながら他の場所の風景を見ることが可能となる。大画面プラズマディスプレイでの表示は圧巻である。

以上の様に,今回の特別技術展示に於いては,デジタルの紙から,最新のデバイスを含め,バーチャルな世界迄をも体験する事が可能である。千年の歴史を有する紙の歴史と比較すると電子・情報技術は未だ端緒についたばかである。しかし急速に技術開発や用途拡大が進む現在,具体的にコミュニケーションの在り方について考える何らかのきっかけを本展示は皆様に提示できるものと考えている。
また,紙自体も単なる表示ディスプレイとしての機能のみではなく造形手段としての新しいコミュニケーションの意味付けも可能であり紙自体の役割・可能性についても新たに見直すきっかけも得られる事と考えている。又,2月6日は基調講演のみならずその後のセッションでこの様な可能性についての討議が行われる予定である。展示コーナと併せ御参加頂き,有意義な情報を得て頂けるものと確信する。

2002/01/04 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会