本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

生産計画や製造計画をリンクしてお互いの無駄をなくすSCM

 製紙会社は基本的に月単位で生産する(図3)。幅4m、直径3m,72,000m巻き、1本15tのジャンボロールを1本ずつ作っていく。次に,顧客に合わせて小巻を作っていく。印刷会社には1本1tや2tという大きさの小巻が納品される。製紙会社は月次生産サイクルで,印刷会社は週次生産サイクルである。このサイクルの違いをいかに埋めて,お互いの生産性を高めていくかが課題である。サプライチェーンの目的は,それぞれの生産計画や製造計画をうまくリンクして,お互いの無駄をなくすことである。

 そこで,今回は王子製紙と三菱製紙の月次生産計画に,大日本印刷の印刷予定を直接反映するという仕組みを作った。8週間先までの印刷予定を送らないと4週間分を切り出した月次生産計画に反映できない。このため、大日本印刷からは8週間先までの情報を送ることにした。

 印刷会社側で,実際に8週間先の予定を組めるかどうかというのは大きな問題である。このプロジェクトでは,商業印刷、チラシ、パンフレット関係を対象としたが,チラシは8週間先のことを予想するのは難しい。一方,商業印刷の中でもリピートの多いカタログ系がリピートで予定が組みやすい。印刷予定において,8週間先では全体予定の3割くらいの予定が入っており,時間の経過と共に5週間先,3週間先と予定に近づいてくると5割、8割という形で予定が入ってくる。製紙会社はこれを月次生産計画に反映している。

物流の直送化

 紙の物流は,製紙会社が代理店に紙を売る。代理店から仕入れて販売する卸もある。大日本印刷は主に代理店から紙を購入する。トラックが代理店の倉庫と大日本印刷を何回か往復して紙が納品される。物流の直送化により,製紙会社の工場から直接大型トラックで大日本印刷に納める流れにした。

 直送化においても様々な工夫をした。製紙会社の工場は東京近辺にはない。このため,早めに情報を渡す必要があるので,2日前に出荷指示をするようにしている。印刷に詳しい人は,2日前に出荷指示を行った後に印刷の場所が変更にならないかと心配するだろう。今回の仕組みではそのような変更がないようなケースをなるべく選んでいる。出荷指示した後に納入先が変わり、印刷を別の協力会社に頼むということが頻繁に発生すると、納入されたものを今度は大日本印刷のトラックで配送しなければいけなくなる。実際に,きちんと2日前の出荷指示ができる印刷の仕組み作りはかなり大変であった。

紙パ流通VANで電子受発注

 電子受発注(EDI)では,大日本印刷の独自性をださず,紙業界の標準VANであるカミネットを採用した(図4)。

 もともと、紙の代理店と製紙メーカー間には,P-EDI(ペディ)という業界標準のEDIの仕組みがあり,代理店と卸の間の業界標準は紙パ流通VANが利用されている。大日本印刷は代理店との間のEDIとして,紙パ流通VANを利用することにした。印刷業界向けのVANと紙業界向けのVANが接続するというイメージになる。ただし,紙業界のコードと大日本印刷のコードは全く異なる。そこで,大日本印刷は紙業界のコードに合わせてコードを変換した。

 今回は紙を対象にしたが、インクやフィルム材、なども電子調達を実現し,将来的にはサプライチェーンを構築していきたい。大日本印刷では,発注計画のデータ提供をWebで提供する部分をi2テクノロジーズのアプリケーションで構築した。しかし,相手先と基幹システム同士で接続したい,最初からデータ交換を行いたい,などの場合は使い慣れた従来のEDIの仕組みを利用するほうがいいだろう。

 EDIの仕組みは大日本印刷の独自性をだそうとは考えていない。他の印刷会社や新聞社,出版社などが同じ仕組みを利用して,誰でも紙を調達できるほうが,紙を購入する側も売る側もメリットは大きくなるだろう。仕組みを共有するというのは,アメリカなどでは当たり前になりつつある。

(2001年9月20日(木)通信&メディア研究会主催techセミナー「印刷の電子調達,SCM,EC」大日本印刷株式会社 情報化推進部 次長 石亀 尚郎 氏の講演より)

(次回に続く)

PAGE2002コンファレンス「IT戦略―サプライ・チェーン・マネージメント
 大日本印刷石亀氏や日本IBM宮崎氏に最新の状況を始め,SCMの動向を伺います。

2002/01/22 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会