本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

WEBの巨大メディア化を示唆する2ch

2チャンネルという掲示板がインターネットの鬼子として話題になった。大企業や有名人まで血祭りにあげられて、いろいろ物議をかもしたことがある。物議をかもすこともジャーナリズムの仕事であるが、しかし2chは今までのジャーナリズムやマスコミと異なっていて、その正体を考えることは難しい。

もともとこの掲示板に思想的に偏っているとか、反社会的意図があるわけではない。個々にみると、町の中の普通の会話に過ぎないのだが、それを文字にして定着し公開すると何か力を帯びたように感じられるのだろう。2chの力は幻か、新たなパワーか?

2chはさまざまなテーマがある巨大掲示板であるが、各掲示板の内容は、同様テーマの他の掲示板よりは薄く、2chだけを見ている人はいないと思われる。他の掲示板の管理者は、クオリティを気にするがために、アラシの排除や内容のチェックを相当するようになってきた。

それと対照的に2chはよほどでないと内容を削らない大胆さが受けていると思われる。掲示板で匿名が多くなるとガセネタも多くなり、掲示板そのものの情報の信頼性も欠けた無責任なメディアに見えてくる。しかしそのアングラ・ゲリラ的なところに、他にはない本音が見えたりすることもあるので、完全に管理しすぎるとリアルさとか面白みが欠けてしまう。

さらにしかし、いいたい放題で口汚い批判が多いと全体が薄汚なくなるので、2chに嫌悪を感じる人もいる。元ASCIIの西和彦氏は2chの険悪な雰囲気を排除した心穏やかな巨大掲示板を目指して1ch.tvを始めた。しかも将来小額課金のビジネス化をする構想である。まだ2chには匹敵するものではなく、やはり若干パワーは落ちる感じがする。

志が高く、しかもパワーもある媒体というのは難しい課題である。いろいろ問題が多くても2chが存在するということは、「本音が聞きたい」という要望が強いからではないかと思う。今日巷に溢れるニュースリリースや商業的情報およびメジャーなメディアには本音はないと判断されたのが2ch現象ともいえるのではないだろうか。

これから2chあるいは類似のWEBメディアが大人になっていく可能性と、マスメディアが本音を書くようになる可能性を比べると、前者に分がないとはいえない。つまり過去のマスメディアの形骸化をWEBが補うという展開もあり得るだろう。2chがつかんだような大衆パワーに誰がどのように乗って、新たなメディアビジネスをするのか見ものである。

■出典:通信&メディア研究会 会報VEHICLE 通巻152号 より

2002/02/01 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会