本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

力技のフルデジタル化完成。効率化はユーザの工夫しだい

いよいよPAGE2002が始まる。今回の展示会は出展132社,678小間で過去最大の規模となった。内容的にもAppleの提供する次世代DTPソリューションのパビリオンとか、電子ペーパーや高精細液晶などの特別技術展示コーナーが、新たな企画として加わって盛り上がりに輪をかけている。
展示会の中のテーマごとの見所については、T&G会報176号にPAGE2002プリビューとしてまとめられていて、この冊子はDTPエキスパートコーナーで配布(先着順。売切れ御免)されるが、その巻頭からエイヤ的な大胆なサマリーを紹介する。


 

全体としてはCTPが旬で、レコーダはさらに高速化している。だが、そこに至るまでのオープンでシステム化されたワークフロー整備は進まず、コンピュータやネットワークのパワーアップに乗じた力技でフルデジタルに対応している印象があり、必ずしも効率的ではなく、またリソースの再利用という面でも課題を残している。

フォントベンダーの足並みはまだ揃っていないがOpenTypeフォントがリリースされ、文字種も増加傾向にある。Type1フォント時代はイメージセッタなど出力側の負担が多かったが、これからDTP制作側の負担が増える形でフォント市場は広がることになるのか。

DTPソフトは、近年騒がれていたほどQuarkXpressからAdobeInDesignへの傾斜は起こらなかったが、今後InDesignが2.0になってどう評価されるかが焦点である。編集側の最も大きい変化はXMLを扱うものの急増であるが、比較的規模の小さいツールが多様化していて、かえってオールインワン指向であった従来からの定番的ソフトの方はXMLは手薄である。

PDFにとっては今年は記念すべき年かもしれない。Mac OS X の標準イメージングモデルになり、それに対応したRIPも登場する一方で、写研フォント写研RIPもPDFに対応するので、こだわりの顧客も含めてPDFでプリプレスは完結する条件は整った。
PDFにとって悪い話は、PostScript出力のゴタゴタがまだ尾を引いていることで、出力の再現性問題でアプリかRIPか作業方法か判然としないことに業を煮やしたユーザが、CTP対応に迫られて1bitTIFFに触手を伸ばしていることが最近の特徴である。

画像ツールはPhotoshop独壇場のまま、スキャナもフラットベッドのxyスキャン技術が落ち着いて、後続開発がない。デジタルカメラはプロ用とアマ用の品質の差は急速に縮まりつつあり、プロも操作性重視で「35mm」的なところに関心が高まっている。

カラーマネジメントは、CMYKインキベースの管理から色彩計で測って管理する時代への過渡期であるが、印刷の現場も顧客も色彩論にピンときていなかった。そうこうするうちに色の計測は分光や色空間で現実の問題を考えるツールが登場しつつあり、問題解決のための新たな視点が与えられるかもしれない。

カラープルーフの世界も大きく変わり、どこもまずはインクジェットを使い、厳密さを求めるなら本機校正というスタイルができつつある。DDCPはいいお客さん用のニッチ高級サービスに向かう。むしろ電子送稿時代を迎えてリモートプルーフの方が盛んに取り組まれている。検版方法に大きな変わりはないが、今後は迅速なアクションのためにグループウェアとの結びつきが必要になろう。

オンデマンド印刷がさらに一歩前進し、簡易印刷を喰う時代が目前に近づいている。しかしワークフローの自動化ツールが後回しになっているので、まだ画期的な業務改善効果は期待できない。バリアブル印刷用ツールを含めてフローの構築ができるところが先行ユーザである。

現場のIT的な工夫といえば画像データベースが主流であったが、WEB経由のファイル管理になるとか、生産管理や業務管理のシステムとの連携が芽生えつつある。WEBと印刷の制作でのクロスメディア環境は取り組むところが非常に限られていて大きな進展はない。

この業界を総合的に見ると、出力の開発と情報加工の開発がアンバランスで、前工程に付加価値を求めるならユーザ自身の相当な努力が必要な時代が続いている。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 176号より

【関連情報】PAGE2002コンファレンス

2002/01/30 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会