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インフラとしてのXML上に、すべてが再構築へ

1996年11月米国ボストンで開かれたSGML96コンファレンスでドラフトが公表されたXML(Extensible Markup Language)は,そのわずか1年3ヶ月後の1998年2月にW3C(World Wide Web Consortium)の勧告となった。
インターネットでの情報活用や情報交換をより一層活発にするために,W3C内のワーキンググループが検討を開始してから2年足らずで勧告になるという短期間の開発だった。これほど短期間で勧告となったのは,ベースとなったSGML(Standard Generalized Markup Language)が既に1986年にISOで規格化されていたことが大きかったのだろう。
しかし,インターネットでHTMLを利用したWebが普及し,ドキュメント情報の発信・閲覧だけではなく,BtoBやBtoC等の電子商取引などへの広がりを見せるとともに,HTMLの限界が問題となりインターネットによる情報活用をより活発に行うことが出来るメタ言語の開発が待たれていたことも見逃せない。

HTMLとSGMLの両者のメリットを引き継いだXMLの出現は,ドキュメント関連だけでなく,情報処理関連のあらゆる分野の関係者にインターネットをより高度に活用する道を提供した。
その結果,IT(Information Technology:情報技術)をベースとした企業間ビジネスの推進,業務プロセスの標準化や自動化,異機種情報システム間のデータ交換など,XMLをベースにした情報システム構築や各分野で使用されるボキャブラリーの開発が進められている。
また,XMLの利用は,産業界ばかりでなくe-Japan計画に基づき2003年の電子政府実現に向けた官公庁・自治体と電子申請や電子調達,2000年12月にデジタル放送が開始された放送業界,iモードに代表される通信業界,世界的規模でニュース配信を行っている通信社や新聞業界など,あらゆる分野に広がっている。
グラフィックアーツビジネスでも制作面以外に,ネットワーク時代に対応した受発注やワークフローまでの標準化が関連し始めている。また,クライアントのサプライチェーンマネージメントへの対応も要求されてきている。これらの動きは,いずれもXMLをベースとしたものである。

このように,XMLは情報交換や情報活用等における汎用のインターフェースの地位を確立し,身近にあるアプリケーション(例えば,マイクロソフトのIE,Excel,Access等)もXMLを扱えるようになった。DTPソフトも,XMLドキュメントのインポート・エクスポートに対応してきている。XMLは要素技術から利用技術へとステップアップし,その応用範囲をさらに広げようとしている。
2002年の年賀状作成についての調査では,半数の人がパソコンやワープロを使用して宛名書きをしたとのことだが,宛名書きのための住所録はどのように管理されているのだろうか。メールソフト,年賀状ソフト等の各種アプリケーションや携帯電話など,いくつかの住所録を管理している人も多いのではなかろうか。これらの住所録間の情報交換用にXMLを使用しようという検討も始まっている。

交換する情報やドキュメントがXMLをベースとしたものになり,それらに対応したシステムを構築するためのキーとなるコンポーネントにデータベースがある。
XMLデータを格納・管理するデータベース製品には,その出自,生い立ちからいくつかのタイプがある。例えば,従来からのリレーショナルデータベースをベースにXMLデータのインポート・エクスポート機能などを付加したものや,XMLデータをそのまま若しくは最小限の変換で保存し,オリジナルのXMLデータの形で取り出せるXMLネイティブなデータベースなどである。
利用者側にとっては,それらのタイプ別の特徴,機能,性能などや適用分野,課題などを知ることは,自社の業務を円滑に遂行するシステムを構築する上で重要なことである。

「コミュニケーション再構築」をテーマに開催するPAGE2002のコンファレンスでは,デジタルメディアとデジタル印刷でコミュニケーションの再構築をするために注目されるXML関連について,XMLトラックとして「標準化動向」,「XMLツール」,「XMLデータベース」の3つのセッションを用意している。

コンファレンス:XMLトラック
   【日 時】2月7日(木)9:00〜17:00
   【会 場】サンシャインシティプリンスホテル2F「飛魚」

(1)「標準化動向」セッション 9:00〜11:00
このセッションのモデレータは,株式会社イー・ブリッジ 取締役 コンサルティング本部長 岡部惠造氏で,ネットワークを利用したEDI,EC,自動化などに向けた標準化の必要性,標準化や実装に向けた課題,各種団体の活動状況や標準化状況,利用状況などを取り上げ,グラフィックアーツビジネスでの標準化の必要性について考える。

スピーカーの株式会社東京商工リサーチ 技術顧問 渡辺榮一氏は,「財務情報XML化の国際標準XBRL」のタイトルで,世界的に進められている財務諸表を中心としたビジネスレポートにXBRL(eXtensible Business Reporting Language)を応用する取り組み状況や日本での取り組み・利用事例,XBRL Japanの標準化活動等について講演する。XBRLは,財務報告の作成・監査・流通・利用を容易にするために,XMLをベースにしてアメリカ公認会計士協会が中心になって開発したデータ記述言語である。

QR-XML普及協議会 事務局 鶴田知久氏は,「繊維業界のXML-EDI標準化」のタイトルで,繊維ファッション産業界の効率的なサプライチェーンを推進する情報流通プラットフォームの構築,そのコア技術である業界全体にわたるXML-EDI標準策定の背景・活動状況・標準化の内容・事例・課題等について講演する。

(2)「XMLツール」セッション 12:00〜14:00
このセッションのモデレータは,有限会社トライデントシステム 代表取締役 鶴岡仁志氏で, WebブラウザやOffice製品など普段使用しているアプリケーションを使って、XMLでどのようなことが出来るのか,どのようにXMLを扱うことが出来るのか、その際にどんなことに留意すべきか,身近なツールの現状,身近なツールを使用したシステム構築や今後の方向性,更にはXML文書の出版用ツールなどについて考察する。

スピーカーのXML共同開発センター大阪 部長 松田裕伸氏は,XMLドキュメントを蓄積管理するサーバーとWindows,Macのクライアントとを結んで,XMLドキュメントから印刷物やWebコンテンツなどの制作までの実演を交えながら,XMLドキュメントをWindowsやMacの身近な出版用ソフトでどのように処理するか,どのように出版システムを構築するか,その留意点や方向性等について講演する。

(3)「XMLデータベース」セッション 15:00〜16:00
このセッションのモデレータは,ドコモ・システムズ株式会社 事業開拓室 XML推進プロジェクト主席技師 大野邦夫氏で,XMLデータを格納・管理するデータベース製品の現状(タイプ分け,タイプごとの特徴,機能,性能など)と,各タイプの製品利用者又はベンダーからの利用例や提案などから,各タイプ別のデータベースの課題や適用分野(応用分野)などについて考える。

スピーカーの毎日新聞社 総合メディア事業局 技術開発部副部長 小野寺尚樹氏は,SGML時代からSGMLを利用した新聞製作用記事の各種電子メディアへの利用や配信などのシステムを構築してきた。このシステムを,昨年NewsMLを利用した電子メディア用記事の制作・蓄積・配信システムとして再構築した。これらの経験とシステム再構築の背景・経過・実績などを,「NewsMLコンテンツのファイルサーバー管理からDB管理へ」とのテーマで講演する。

株式会社ビーコンIT インターネット事業部 執行役員兼インターネット事業部長 戌亥稔氏は,XMLをネイティブに保持・管理するXMLインフォメーションサーバ「Tamino」の特徴と適用分野・利用事例について講演する。
株式会社メディアフュージョン XML企画営業グループ グループリーダー 佐々木惣一氏は,同社が開発したXMLにネイティブに対応した高速XMLデータベースエンジン「イグドラシル(Yggdrasill)」や独自のXML問い合わせ言語の特徴と適用分野・利用事例について講演する。

2002/01/17 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会