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コンテンツの制作と管理の切り分けで目指す効率化

とりあえずデジタル化を!ということで、どこも同じようなIT化をしつつあるように見えるが、コンピュータシステムを使う立場によって、何が値打ちかは異なる。ハードやソフトが資産となる業務もあれば、データとかコンテンツが資産になる会社もある。ハード・ソフトを資産にするところは装置産業化して、巨大なデータセンタなどがサービスを始めつつある。逆にデータとかコンテンツの生成や加工が中心のところは、ハード・ソフトの負担を軽減したいと考えつつある。中途半端はビジネスにならないのかもしれない。

データやコンテンツは、それを作るのに手間暇がかかる。つまり元手がかかっていて、それを繰り返し利用して元をとろうというのがIT時代である。しかしデータの価値というのは計りにくい。切り離されたデータだけでは意味はわからず、それが株価の変動であったり、事件の証拠写真であったりなど、そのデータが生まれたある文脈の中で重要な意味を持つ。その文脈を記述するのがメタデータであるともいえる。

だからデータやコンテンツはメタデータをつけて管理しなければならない。それが重要であればあるほど、自分で管理するよりも、もっと信頼の置けるところに管理してもらうニーズがでる。ちょうど銀行にお金を預けるようなものである。つまりデジタルデータの世界は、制作側と管理側に分かれて発達しようとしているのである。

すでにビジネスでも、アカデミックな世界でも、文化財でも、デジタルデータの入出力や伝送系が整うとともに,日常膨大にデジタルデータ蓄積されるようになり,また過去のアナログデータも再利用のためにデジタル化される。そこではいかにデータの運用を効率的に行うか,管理上のポイントは何かを真剣に考え始めている。

メタデータでコンテンツ管理の効率化

 ネットワーク上の電子資料を効率的に利用する目的で、メタデータの記述が様々な組織で盛んに行なわれている。学術雑誌に掲載される論文は、その性格上、ほかの論文の引用が多い。したがって、参考文献をリンクしたり、検索できるようにすることが重要になるため,メタデータの管理は特に重要になる。

 蓄積された情報の検索,選択の仕組みにおいて図書館は先駆者である。電子図書館上での情報資源の検索のために,Dublin Core(ダブリンコア)というメタデータ記述規則がある。1995年に制定された最も古くシンプルなものであり,2001年11月には日本で国際会議も開催された。

 メタデータの比較的新しい動きとしては,1999年にTim Berners-Lee氏が提案し,W3Cで検討が始められたSemantic Web(http://www.w3.org/2001/sw/)がある。Semantic Webは、Webサイト上にメタデータとしてセマンティクス(意味情報)を付与し、人の手を使わずにデータを機械的に処理できる空間を創出するもので,HTML、XMLに次ぐWebの概念といわれている。Webには人と人とのコミュニケーションを担うものとしてHTMLが存在し、もう一つは人と機械のコミュニケーションを担うものとしてSemantic Webが登場した。

 コンテンツビジネスでは,劣化せずに複製が可能であるという不正利用を避けながら利用を促進したいという点でも,メタデータに期待される役割は大きい。コンテンツIDフォーラム(http://www.cidf.org/)では,世界的にユニークさを保証するIDと権利,検索,流通の属性を含んだメタデータを定義する。国際標準化団体とも積極的にリエゾンを正式に結び,GBDeの勧告にもあるインターオペラビリティの確保に積極的に活動している。

デジタル資産をアウトソーシング

デジタル情報の増加とともに,各媒体にのせるコンテンツの生成の仕事と,そのコンテンツの蓄積,管理,検索,配信などのハンドリングは異なる性質の仕事とみられるようになった。

広告制作のアウトソーシングを受注する会社として,博報堂系のアドダムと電通系のデジタルパレットの2社がある。一見,同じビジネスを博報堂対電通で競って展開しているように見えるが,ビジネスのアプローチは異なる。

アドダム(http://www.ad-dam.co.jp/)では広告ビジネスに特化した「DAM(Digital Asset Management)」ソリューションを提供する。広告ビジネスのデジタル化にともなってニーズが高まる,コンテンツ制作やデータ管理,データ送稿などを一括で受託する。デザイン制作やDTP制作,製版,送稿など,それぞれ分断している業務をOneStopで提供していく。

一方,デジタルパレット(http://www.digitalpalette.co.jp/)はeマーケティング プロモーションを行うためのデジタルコンテンツの制作や管理,加工,配信を提供する。ハッキングや個人情報保護などデジタルメディアならではのリスクにも対応している。アドダムは紙媒体のほうからDAMソリューションを提供し,デジタルパレットはホームページなどデジタルの側からサービスを提供している。WEB制作といえばSOHOの手間仕事という印象があるが、この会社は先進的なITの仕組みを備えて、人手に頼るのではなく管理レベルの高いソリューションを目指している。

また,ドキュメントエクスプレスでは,紙とデジタルが混在するが上に必要なニッチのサービスを展開している。ドキュメントエクスプレスは,ソフトウエア開発をてがけるハイパーギア(http://www.doc-express.com/)と文書・磁気テープ保管の最大手ワンビシアーカイブズが提携して設立した会社である。紙の文書を倉庫で預かり,必要な時に必要な書類だけをデジタル化して送るという「電子倉庫」サービスを提供している。

 データ量が増えるほど,コンテンツの作成・編集と管理は切り分け,プロにアウトソーシングをするほうがコストダウンが期待できる段階に入っている。

バックアップ

ブロードバンドと呼ばれるような高速なネットワーク利用が可能になり、コンテンツビジネスやオンデマンド印刷ビジネスなどが実際に利用される時代になってきている。そしてこのようなビジネスを行うためには、ビジネスモデルをどうするのかともう一つはシステムをどうするのかが出てくる。

システム的な部分では、実際のビジネスの裏側に要求されるデータ管理をどうのように実現し、特に顧客から預かるコンテンツをいかに安全にしかも高速に処理を行うかを考える必要がある。このようなコンテンツビジネスでは、動画を含めたコンテンツの扱いや,印刷の分散環境への対応など,大容量データをどう扱うかがITサービスの重要なポリシーであり、実際にオンデマンド印刷ビジネスを行っている富士ゼロックスシステムサービスでは、デジタルアセッツを管理して、制作から出力までをアウトソーシングで受けており、高速なネットワークとバックアップまで含めてデータセンターを活用するなどで実現している。

iDCを運用する立場では、印刷業向けにデータ管理のアウトソーシングというストレージサービスをも出始めており、ブロードバンドネットワークとデータセンターを利用したシステムも可能になりつつある。また自社で構築する場合でも、メディアやストレージの進歩で大容量化が進み、そのようなシステムで利用されるストレージやバックアップメディアの動向などを検討する必要もある。

印刷業も顧客と直接ネットワークで接続される時代になり、受発注情報から入稿されるデータ、さらには再利用のためのデジタルデータなどが全てネットワーク上で流れて行く時代で、データの紛失や破損などやシステムのダウンさえ行ってはならない。

このような環境を実現するには、ストレージメディアやシステムだけでなく,iDCの活用も視野にいれたシステム構築,また利用可能なASPを探して、そのサービスを利用するという方法もある。このような事を含めてコンテンツビジネスのバックアップの考え方,ストレージデバイス・メディアの今後を運用も視野に入れて置く必要がある。

■PAGE2002コンファレンス【データ管理トラック
「電子ジャーナル,SemanticWeb,コンテンツIDにみるメタデータの動向」,「電子送稿,デジタル資産管理のアウトソーシングによるコストダウン」,「バックアップシステム/サービスとiDCの上手な利用」の3セッションが予定されています。

2002/01/19 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会