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印刷村から、B2B村へ

東京の下町は、印刷屋の斜め前に製本屋があり、刷本を載せたフォークリフトが道を横切るとか、別の斜め前のパン屋の2階は写植屋で、その裏に製版屋があり、一駅二駅の範囲に得意先の出版社や広告代理店があるというような、のどかな共生社会があった。それが大量印刷の時代になって印刷会社は郊外に行き、都心は再開発されて村人はチリジリになっていった。

コミュニケーションの断絶はそれぞれの内製化を進めることになったが、ちょうどデジタルで工程統合の時代だから問題はなかった。しかし共生の村から出たことによって、業務管理をすべて自分でうまくしないと、仕事の効率が上がらなくなった。今制作のデジタル化が来るところまで来てしまった段階で、仕事の効率化の道はビジネスコミュニケーションの改善であり、書類をファクスで送ったり電話で連絡したりというを、IT利用で企業コミュニケーションを行いビジネスの効率を上げて行くことである。

印刷業を取り巻くIT化には、自社ビジネスのインフラとして活用していくことと、もうひとつは印刷業が行っているコンテンツビジネスにITを活用したソリューションを提供することがある。コンテンツビジネスとしては情報発信が印刷物だけでなくWEBを含めて複数メディアになり、特にインターネットを活用したいろいろなソリューションが求められている。

自社ビジネスのインフラとしてのIT活用とは、社内業務の改善を実現するためのシステム化を進めることで、業務改善を行う部分としては社内の部分と、顧客とネットワーク接続していく部分や資材発注のためにネットワーク接続をしていく部分などがある。この外部と接続していく部分は、BtoBと呼ばれる企業間のコミュニケーションとして進められており、このベースにもインターネットが利用されようとしている。

BtoBという視点では、印刷業でもマーケットプレイスやサプライチェーンマネージメント(SCM)の動きが出始めている。顧客が印刷物を調達するためのマーケットプレイスでは、見積要求や発注などへの対応が求められ、また印刷制作を行う上では、紙などの資材調達を電子調達という形でインターネット経由で発注が始まろうとしてる。その中には、計画発注とか在庫の最適化などを求めて紙のサプライチェーンなども始まろうとしている。そしてこのようなSCMの必要性や、さらに行う上での物や金の流れを含めた企業間の業務フローをどう作り上げるのかなど、現在いろいろなアプローチや検討が行われているのがBtoBの仕組み作りの部分である。

そしてこのような背景の中で、システム化技術がWEBアプリケーションとなり、そしてBtoBを行う基本としてデータ交換のオープンかが求められる。そして、今このような条件を満足するための技術として、XMLをキーにした技術が実用化されつつある。また同時にネットワーク利用と言う点からは、セキュリティという問題がこの部分でもいろいろなアプローチが進められている。

またコンテンツビジネスを行う上でもWEBアプリケーションが利用されている。しかし全て1社で提供されるのではなく、例えばコンテンツを販売するポータルサイトではコンテンツ管理をするサイトがあり、提供したら決済サービスを行うサイトを経由して代金回収を行う必要があるように、複数の企業サービスが連携されてひとつのソリューションが提供される。このような環境を実現する技術としてWEBサービスが出現し、今IBMやマイクロソフトなど大手ベンダーが標準化を進めながらソリューションが提供されようとしている。このように、顧客へのWEBサイトの提案にも、また社内業務システムの構築にも利用される技術で、WEBアプリケーションや企業コミュニケーションのためのバックエンド技術として導入が進んでいる。

また、インターネットを活用する上では、セキュリティという大きなテーマがある。実際にはネットワークだけではなく、デジタルデータを扱うコンテンツビジネスを行う印刷会社としては、預かったデータの安全性を高め信頼を得るためにも、社内セキュリティを高め、ネットワーク同様にセキュリティに対する企業的な対応が求められる時代である。

このような背景からIT戦略トラックは、次の3つのテーマを取り上げる。

J1「バックエンド技術動向」

コンテンツビジネスでも、BtoBの企業間のECでも、さらには社内業務システムの統合にも、今はWEBアプリケーションでシステムが作られる時代である。そしてWEBアプリケーションを全て作り込むのではなく、いろいろな機能を組み合わせながら一つのアプリケーションになる時代となっきている。このような仕組みを実現するバックエンド技術がXMLを中心にしたコミュニケーション技術で、ここではその必要性や応用、可能性などを取り上げる。

今起きているシステム技術の背景として、WEBサービスが何故求められるのか。IBMやマイクロソフトなどの大手ベンダーが手を組み標準化が進められているおり、また基盤の異なるシステムでも、アプリケーションが接続されて一つの機能を実現している状況などを解説し、これからのビジネスを支える基盤となるのかを紹介する。

J2「セキュリティ」

モデレータは早稲田大学教授でネットワークリスクマネージメント協会理事の村岡洋一様で、セッションではセキュリティ関連の動きや今日起こっている事などの総括を行う。
まずはプロバイダの立場からユーザが実際に受けている被害の実態について、簡単なデモンストレーションをOCNの運用をしているNTTコミュニケーションズの小山覚様から紹介し、またソフトベンダーの立場から、インターネットセキュリティシステムズ松崎義雄様にネットワークの脅威は誰にとっても他人事ではないという啓発と共に、その対策面についての現状を紹介する。
さらには行政団体としてコンピュータ緊急対応センターの山賀正人様から、どのような活動がおこなわれておりその実体の紹介をする。
最後にセキュリティ対策のガイドラインBS7799等を含めて、やさしい法律(個人情報保護、プロバイダ責任)について、セキュリティコンサルタントの日本アイ・ビー・エム大木栄二郎様からが解説する。

J3「サプライチェーンマネジメント」

ITの目的は社内における合理化だけでなく,取引先を含めたトータルな効率化にある。相互のコンピュータ間の連携により,人の作業を介さずに適した処理が迅速に行えることで,管理費やコストの削減が期待できる。大日本印刷はi2テクノロジーズ,IBMと社内の調達システムを構築し,製紙メーカーのEDIと接続して紙の電子調達を始めている。
また,富士ゼロックスでは間接材のプライベートマーケットプレイス「x-Plaza」の実験を開始した。調達コストの削減は消費者のサービス向上につながる。ここでは,印刷資材および間接材の電子調達の動向を探る。

2002/01/26 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会