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デジタルで信頼されるサービスをするために

印刷業が行うビジネスの流れは、今デジタルデータのワークフローの仕組みで行われている。顧客からデータを受けオンデマンドで印刷するとか、顧客と制作会社、印刷会社で製作をコラボレーションするとか、制作を行うデジタルデータの流れがある。またe-ビジネスとかBtoBなどと呼ばれる仕組みで、見積から受発注、問い合わせなどの業務情報の流れもデジタルデータになりつつある。このような環境でビジネスを行う上では、デジタルデータの破損や紛失などはあってはならないので、データの安全性をどう保つかがひとつの焦点になってきている。

このような背景から、今どのような動きや方向性がでて来ているのかをPAGE2002の2月8日のセッション「バックアップ」では取り上げている。このセッションでは、オンデマンド出力やデジタルアセッツサービスなどのアウトソーシングを行う立場で、富士ゼロックスシステムサービス(株)の浮田昌生氏、またデータセンターサービスを提供する立場で、日本電子計算(株)の篠原務氏、ストレージソリューションを提供しているベンダーの立場から、ソニーマーケティング(株)の笠原健司氏の3名のスピーカを迎えて、モデレータ兼司会進行は日本印刷技術協会で行われた。

富士ゼロックスシステムサービスでは、顧客のデータを預かり、カタログやパンフレットなどの制作支援を行うためのデータベースを構築し、作られたデータの出力サービスまでを行うドキュメントアウトソーシングのビジネス展開を行っている。このサービスはMediaGateと呼ばれるサービスで、顧客のデータを預かりワンソース・マルチユースの活用を支援していく。このようなサービスを展開するには、データベースと高速なネットワーク活用が必要である。顧客がデータを作成し管理したり加工するにはシステムを構築して運用することになるが、構築費用や人材運用経費など掛かるので、その部分をアウトソーシングとして受けているが、このビジネスではデータに対する安全対策は欠かせない。

データを預かる上では、災害対策、障害対策、人為的ミス、不正行為と言ったことから守る必要がある。このようなシステムを運用するには、バックアップ対象を明確にし、特性を明確にして、必要な設備規模を運用管理する体制作りが必要である。ここでは、データセンターにサーバを置き、日々テープでバックアップを行い、さらには自社サーバ上にリモートバックアップを取り、さらにはDLTのテープをオフサイトの耐火金庫に置くという2重3重のバックアップシステム運用を行っている。

日本電子計算は、システム構築を行うSIベンダーでありデータセンターの運用を行っている。印刷物制作のためのシステムには、小規模ならばコンテンツサーバにテープなどのバックアップデバイスを取り付け、自動でバックアップを取れるようなソフトウェアで運用を行うのが一般的である。このような場合、サーバにはRAID装置、テープデバイスには1週間分の取り置きができるようなライブラリー装置を利用するの普通である。しかし、規模が大きくなりサーバが複数運用するような場合には、SAN(ストレージエリアネットワーク)のような複数のストレージデバイスと複数のサーバを接続する装置にバックアップ装置を接続して、自動でバックアップを取るようなシステム構築が一般的である。これは、サーバが1台くらいダウンした場合でも、問題なく運用できる上、バックアップデバイス装置はシステムで1台で済むという利点がある。ただし大容量のテープデバイスが必要にはなる。

このようなシステム構築の一般的な方法はあるが、これらを運用するするには社内に運用管理を行う技術者が必要になってくる。また、ここに顧客からの接続を許すような拡張を考える場合には、ネットワークセキュリティや通信回線などの設備が必要になってくる。このような環境では、設備も非常に高価になり、費用対効果が見えにくいとか、IT技術者が必要であるとか、さらには社内に全てがあるために災害に弱いなどの問題がある。

最近では、協力会社同士のコラボレーションや顧客へのサービスなど外部とのデータ共有も増えてくるので、これらにどう対応するかも問題である。このような問題を解決できるのではないかということで、今データセンターの活用が検討されている。iDC(インターネットデータセンター)と呼ばれる設備サービスで、頑強な建物と設備、さらにはバックアップやセキュリティなどへの対応ができるサービスまでが組み込まれた環境である。

iDCで利用できるサービスには、サーバ装置や場所を貸すサービス以外に、さらに高度なサービスを展開するケースもある。例えば印刷業向けに特価したサービスを提供しようとしているのは、プリントマーケットというサービス総称の中でASPとして、企業間コラボレーションとか印刷のデジタルワークフローの支援などを検討している。iDCは、ネットワークはオープンなネットワーク環境上にあり、企業間で利用できるだけでなく、システムのアウトソーシングという位置づけで、初期コストが安いとか自社内に技術者がいらないとか、また企業間で利用が簡単などいろいろなメリットが出てきている。さらに、データの安全性を高めるバックアップなども自動的にサービスに組み込まれており、バックアップで悩む必要はなくなる。

ソニーマーケティグでは、ストレージソリューションとして、テープなどのメディアから各種ソフトウェアなどストレージ関連のソリューションを提供している。バックアップの必要性と言う点では、昨年のニューヨークのワールドトレードセンターの参事は、バックアップの重要性を再確認させた。事故後直ぐに違う場所でコンピュータを設置してビジネスを開始した企業がある。これはバックアップをしかも違う場所で保管しておくという基本的な事を行ったいたかどうかである。要するには、毎日のデータバックアップを行い。そしてそれを別の場所に移す。これを実施する事で、ほとんど復旧することができる。今ビジネス情報が全てデジタル情報になってきている事で、これは非常に重要な事である。

よく間違いやすい言葉にバックアップとアーカイブがあるが、バックアップはハードディスク等の一次ストレージの内容を、テープなどの二次ストレージにコピーをする。万が一、一次ストレージの内容が消失した場合、二次ストレージから復旧させる。これに対して、アーカイブとは一次ストレージには管理用データ以外は削除されており、データ利用時二次ストレージから必要な部分を戻して利用する形態である。このようなバックアップとかアーカイブは、今デジタルデータが増える中で、どうデータを管理していくのかと言う点で、検討されている事である。そしてこのような事に利用するメディアがストレージであるが、今ストレージはどんどんと密度が上がってきている。そしてFlashMemoryやHDDはなかり容量が上がってきており、今テープメディアは容量では一番多いが、今後はどうなるのかがある。

その中で今テープの動向としては、非圧縮で100GBを越えてきている。圧縮を行えばこれの二倍以上の容量となる。ソニーマーケティングから出しているのは、8mmではAIT-3と呼ばれるドライブを昨年末から販売を開始しているが、従来のAIT-1/2と互換があり非圧縮で100GBの容量と12MB/sの転送容量を持っている。またDTF-2テープドライブは非圧縮で200GBの容量と24MB/sの転送容量を持っている。また他のベンダーから出ているSuperDLTも、非圧縮で110GBで転送容量は11MB/sとなっており、ライブラリー装置を利用することで、簡単にTBのバックアップが可能な時代になってきている。ソニーマーケティングでは、AITライブラリーとして、AITテープが16巻のコンパクトな1.6TBがあり、さらに30巻用、DTFライブラリーではPB(1000TB)クラスまでのライブラリー装置を提供している。

システム利用の方法としては、一台のネットワークファイルサーバにライブラリーを接続して、サーバやクライアントまでのデータをバックアップするような利用方法があり、さらにはファイバーチャネルを利用したSAN上にライブラーを接続して、SAN上の全ストレージのデータバックアップを取るような運用がこれからのシステム構成となってくる。

これから、印刷業の現場ではCTP化にともなう取り置きのデジタル化の課題がある。そして、ビジネスのワークフローに伴うデジタルデータがあり、これらのバックアップをどう考えるかが必要である。

2002/03/02 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会