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DTP時代のクロスメディア

PAGE2002コンファレンス テクノロジートラック 「クロスメディア」セッション(2/8 L3)では,(株)ディジタルメディアシステム 代表取締役社長 江本博治氏をモデレータに迎え,スピーカーに,(株)シュピンネン・ギルド 代表取締役 折井宏氏,(株)Too 販売推進部 ゼネラルマネージャー 草加健児氏,イスラエルから,XMPIE社 ジェイコブ・アジコビッチ社長をお招きし,進化しているDTP時代において,クロスメディアというポジションをどう捉えていくか,その具体的なソリューションツールのお話などをいただいた。

モデレータの(株)ディジタルメディアシステム 江本社長からは,セッションの導入的なお話があった。
コンピュータやDTPを使用した業務は,現在第3世代に入り,複数のPCを一人で操る時代になりつつある。ビジネスを行う際には,さまざまなメディアをどういう形でユーザーのもとに届けるか,というところが重要なポイントになってきている。

一番重要なのは,今行っている業務をどういう形でビジネス(お金)に変えるかである。コンピュータを使って組版をするのが当たり前になっている現在,インターネット上でデータをやり取りしたり,出版物を出すという世界に変わりつつある。デジタルコンテンツが,技術テクノロジーの枠の中から飛び出し,それが新たになビジネス市場を開拓している現状がある。

スピーカーの(株)シュピンネン・ギルド 折井社長からは,Webサーバーとデータベースを連動させたサイトの構築,またそのツールのお話があった。
シュピンネン・ギルドは,カタログ,チラシ,DMなどの制作物に関連するWebサイトの構築の他に,ホスティング,ハウジングサービスも行っている。ダイナミックなページをデータベースから持ってきて,HTMLで配信するシステムを構築している。

Webを使うことにより,発注者と制作者との間の煩雑な作業が効率化され,発注者自身もWeb上でページのレイアウトができるようになる。シュピンネン・ギルドでは,制作の前工程と後工程を効率化するツールを提供し,デジタルデータだけでなく,従来の印刷物も共存できる仕組みを作っている。データベースの中に溜まっているデータを受け渡す際は,Webブラウザを使ってアクセスできる。

ただし,納品した後,デジタルデータが一人歩きしないように,セキュリティやサーバの管理には注意している。一般企業と印刷会社のデータの違いは,CMYKかRGBかなので,データベースの中でそれぞれを分けて管理し,それに応じた解像度で表示させたり,コピーライトを付けたりしている。そのような仕組みをデータベースの中に入れている。

アクセスの方法はWebブラウザである。データは,ブラウザの入力画面から入れてもらうようになる。そして中央に溜まったデータベースには,いろいろな人がアクセスできる。次の段階としては,WordやExcelで作ったものを,そのままデータベースの中に取り込む仕組みを考えている。

その他折井氏からは,地域限定の折り込みチラシ(小部数)を作るのに,小売店側がWebブラウザだけでページレイアウトできる仕組みなど,いくつか具体的なツールデモが行われた。

Xmpie社(イスラエル)

(株)Tooの草加氏より,イスラエルのXMPIE社の新製品「XMPIE」の紹介があった。XMPIE社からは, ジェイコブ・アジコビッチ社長が来日,製品のプレゼンテーションを行った。「XMPIE」は,InDesignやQuarkXPress,Golive,Dreamweaverなどのplug-inやサーバのソリューションから構成されている, クロスメディアパブリッシング上の仕掛けであり,One to Oneマーケティングを実行するためのキャンペーンツールである。「XMPIE」の日本での発表は,PAGE2002が初めてであり,次世代クロスメディアツールとして,注目を浴びた。

以下,アジコビッチ氏のプレゼンより要約する。
「 One to Oneマーケティングを行う上での,ビジネスの意図を話したい。XMPIE社は,比較的新しい企業で,クロスメディア・パブリッシングのための,One to Oneコンテンツの制作ツールを開発している。創立メンバーは,元SCITEX社(現在のCREO社)の出身で,主要な技術の開発・販売促進においても主導的な役割を果たした。printやOnDemandにかかわるPPML言語,バリアブルプリントの開発にも従事していた。

クロスメディアとは何か。印刷物による広告キャンペーンの例を挙げる。デザインは印刷物用に出来ているが,顧客ごとに個別にデザインされるようになっている。XMPIEのツールを使用することにより,異なるメディア上でも,個々に最適なデザインを提供していくことができる。印刷物,e-mail,WEBなど,目的に応じた形で,様々なデザインが可能である。そのようなツールは,今までなかった。同じコンテンツを使い,顧客の好みに合わせて複数のデザインが可能である。また,どのメディアに配信するかも選択することが可能である。One to Oneのコミュニケーションを実現するには,このようなツールが必要なのである。

XMPIE社では,ADOR(アドル:Automatic Dynamic Object Replacement) Technologyという技術を提供している。データベースとロジックとデザイン,これらをモジュラー方式で統合している技術である。ADORにより生成されるオブジェクトは,ダイナミックな可変性のドキュメントである。このオブジェクトのユニークな点は,ターゲットメディアによって自動的にフォーマットが調整できることである。中央部分にロジックがあり,このロジックがデザインとデータとの結合の役目を果たしている。

U-Plan・U-Create・U-Produce
「U-Plan」は,キャンペーンのロジック(ルール)を指定するデスクトップ用のツールである。顧客データベースの中で,ある特定のキャンペーンに必要な要件を設定したりすることができる。
「U-Plan」の画面上で,データベースの中のスキーマ,アブストラクトを確認しながら,構造の指定を行う。Adobe InDesignなどデザイン用ソフトウェアのPlug-inツールを提供しており,接続することも可能。デザイン,ロジック,データベースが組み合わされるようになっている。
「U-Create」は,デザインの内容物を指定するもので,最終的にはロジックと結合される。「U-Produce」は制作に対して管理をするソフトウェアである。

このソフトウェアは,デスクトップのクライアントとサーバとでインタラクティブに動作する。デスクトップで設定された定義に従い,プロダクションサーバの中で,ターゲットのメディアごとに制作できるようになる。さらに,このシステムは,最先端のスタンダードになったソフトウェアやフォーマットを直接扱うことができ,またXMPIE社のシステムのAPIを通じ,他のソフトウェアから扱うことも可能である。

現在は,パーソナリゼーションとクロスメディアに対するさまざまな要求が高まっている。 しかし,技術及び作業環境において障壁があるため,情報とメディアのギャップを埋めようとすると多額の投資が必要になる。
「XMPIE」は,そのようなさまざまな障害のソリューションである。DTPのような使い勝手の良さと強力なデータ処理の能力を提供し,SQLやXMLのような業界の標準をサポートしていくことで,ターゲットメディアのフォーマットに応じた最先端のサポートが行えるのである。」

(株)Too 草加氏より,以下のような補足説明があった。
「現在,(株)Too は,XMPIE社の日本での展開の準備の手伝いをしている。価格やリファレンスはまだないが,お求めやすい価格になるだろう。バリアブルPrintingを使った,One to One マーケティングのトライアルは,今までもあったが,「XMPIE」との一番の違いは簡便性にあると思う。また,違うメディアに対し,同じ内容のキャンペーンをセットできるということも,「XMPIE」の特徴である。」

2002/03/12 00:00:00


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