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デジタルがアナログ世界を超えて行く

インターネット自動車の実証実験が何箇所かで行われている。走行中の自動車の速度計やワイパーの情報を車の位置情報とともにインターネット(無線)で集めると,リアルタイムの渋滞情報や天候の情報として使えるようになる。どの車がどこにいるということが判ると,駐車場その他の料金決済にも使える。これらの情報は車の利用者にとって有益なばかりか,現時点でどの地域から雨が降り出しているなど,他の分野でも期待されることが多い。

このようなアイディアは,今後ゴマンと出てくるであろう。従来のコンピュータ利用は,人間が状況を見て情報入力をするものから始まった。POSシステムでは,売上入力はリアルタイム化したが,天候は人間が入れていた。現在は,次第に人間を介さずに,直接コンピュータに情報が入るように進んでいる。つまり,情報の発生時点において,人を介さずに直接デジタル化されてしまい,人間はデジタルデータの中から「現状」を認識することが増えていく。

現在のマンションのチラシでも,仕上がり予想図やインテリアの例の図がCGで制作されるために,写真と区別がつかないものもある。元来マスメディアというものも,「仮想」の世界を作っているわけで,人々はそこから「現状」を認識することはあった。さらに,これからは日常生活やビジネスでも,現実よりも先にデジタルデータに接することが増えていく。

つまり,上記のようなデジタル化で情報の流れというのは,従来の人間の行動パターンやワークフローをベースにしたものとは根本的に変わるのである。だいたいどの分野でもデジタル化は,情報の一元管理のようにワークフローの真中の処理部分から始まって,次に出力を変え,最後に入力を変える。結果としては,「必要なときに,必要なものを」という「オンデマンド」的なシステムに移行して,人間の作業を模したワークフローはなくなる。

今日,モバイルとインターネットの結びつきがもたらすことは,そのような情報の発生源からの統合的なシステムという最終局面に向けての第一歩と考えられる。端末だけを見ると,携帯電話で画像が送れるというのはオモチャのように見えるかもしれないが,携帯電話の先には,巨大なサーバやネットワークがあることを考えると,そこで何が可能になるのかに意識を向けなければならない。

■出典:通信&メディア研究会 会報「VEHICLE」154号(巻頭言)

2002/03/19 00:00:00


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