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外字・異体字をどう扱うか

フォントメーカーから相次いでOpenType対応が表明されているが,テキスト&グラフィックス研究会の1月のミーティングでは,そうした環境変化も考慮した上で,外字・異体字についてフォントメーカーがどう考えているのか,どのようなサービス提供を行っていくのかを,エヌフォー,フォントワークス・ジャパン,モリサワの3社に伺った。
今回はそのうち株式会社エヌフォーの堀内俊明氏の話を要約して紹介する。

外字・異体字の作成と管理

エヌフォーとしては,外字は必要とする人がいるから提供し,併せて外字を作る環境も提供するというのが基本的な考え方だ。提供方法については用途を重視するが,外字は外字キャラクタ,外字フォント,外字コードという複数の側面があって対応は難しい。

外字は,キャラクタが紙に印刷できればよい場合と,データベースなどでコードとして処理する必要がある場合がある。紙に印刷さえすればよいというのは,EPSのファイルとしてアプリケーションに貼り込んで出力できればよいという場合である。コードとして処理する必要があるのは,例えば全社的なデータベース環境の中でDTPをやる場合などである。この場合は同じ外字エリアに同じ外字キャラクタが入っている必要がある。

ユーザから外字を要求された場合にどう対応するかはケースバイケースであり,結局のところ用途に合わせて作業するのが一番良いと考える。
ユーザにおける外字管理は非常に難しい問題だと思う。外字が発生した時に,制作会社や印刷会社からクライアントに請求できるかどうかという問題もある。書体を制作しているフォントベンダーは外字を管理するシステムを構築する必要があるが,ユーザ側で過去に制作し使用した外字をすべてきちんと管理しているケースは少ないようだ。むしろIllustratorなどで作ったものを使い捨て感覚で使っているのではないだろうか。しかし,逆にいえばそういう場合は,管理するとしても作成したEPSファイルをフォルダに入れて分類しておけば済むのではないだろうか。

エヌフォーの外字・異体字提供

漢字Talk7では,Apple外字や通産省外字といわれるものとPostScriptプリンタの整合性が取れておらず文字化けしてしまうということがあった。それを解消するために1992年に外字キットを提供したのが,最初にリリースしたPS Gaiji Kitである。

その後,各業種のユーザから要望があってオプションとして外字を追加していった。名刺のジャンルでは地名,人名,医学用では皮膚科や歯科用オプションとして記号類,音楽用には日本レコード協会に依頼された絵文字などをオプション外字として作成した。こうして1998年に外字DXというパッケージにリニューアルした。

パッケージとして出している外字エディットキットは,提供したキャラクタセットだけでは足りないため,新規に自作したいというユーザの要望にこたえて提供した外字作成ツールである。2000年夏にはGAIJI TOOLSと名前を変えた。

DTPがターゲットではないが,外字DX i EditionというTrueTypeの外字キット製品があり,その付随サービスとして外字ダウンロードをスタートさせた。外字キャラクタを「へん」で検索して選択してもらい,外字エリアに割り当ててもらうものである。

該当する「へん」を選んでクリックすると,その「へん」を使ったキャラクタが列挙される。ここではダウンロードできる文字と,既にキャラクタとしてエヌフォー外字DX i Editionに入っているものを区別して表示する。

このインタフェイスの本来の目的は,どれほどの外字があるかという器を見せるという意味もあるが,既存の外字検索サービスはビジュアルに見られるものが少なくて分かりにくいと思っていたので,目で見てクリックすることによって文字が出てくるというインタフェイスを構築してみようということでやってみたものである。

GAIJI TOOLS

外字を作成するには技術的な知識が必要だし,特定の書体にしか対応できない。またIllustratorで外字キャラクタを作成して貼り付けるような場合は位置合わせがやりにくいということがあり,このような問題を解消したいと思っていた。エヌフォーでもっているいろいろな資産も合わせたソリューション提供としてGAIJI TOOLSというパッケージを作った。

GAIJI TOOLSでは,まずIllustratorやFreeHandでEPS系の外字キャラクタを作成する。使い捨てるならそのままドキュメントに貼り付けて終わりだが,外字コードに入れると便利な場合が多いので,外字デザイナーというツールを使って1バイトフォントとして例えばアルファベットのAに割り当てることができるようになっている。

書体を指定してAとタイプすると,その文字が出る。また,AdobeTypeComposerを使ってF040以降の外字エリアに外字キャラクタをマッピングさせて2バイトフォントとして使うという方法もあるし,エヌフォー外字DXのカスタム外字として使う方法もある。使い方を制限するのではなく,状況に合わせて選択できる構成にしてある。

今後のユーザ側のワークフローにどう融合するか

外字・異体字に関する今後の課題は,ユーザ側で構築されているワークフローにどう融合していくかだと思う。外字キャラクタはユーザ定義エリアに配置するのが好ましいが,Mac OS X上ではF040以降に外字キャラクタを追加することをアップルが認めていない。つまりOpenTypeになれば必要ないというスタンスのようなので,それをどう切り抜けていくのかが問題だろう。 InDesignなどでそれをケアすることは可能だが,運用ベースでうまくいくかどうかも調査する必要がある。OSの変化によって外字の環境も状況が変わりつつあると思う。

それから,外字・異体字はAdobeJapan1-4やAPGSなどのグリフセットで増やしたといっても,すべての人の要求が満たされるわけではないから,その部分をどうやっていくのかも今後の課題である。

今後,各種の外字のサービスが増え,外字キャラクタも増えていくと思うが,いろいろなサービスを見て会社の中に一番適したものをうまく当てはめていくようなことができればいいのではないか。


エヌフォーの基本スタンスは,あくまでもユーザのニーズを優先して,使用方法に合わせて外字を提供していくというものである。フットワークの軽さが身上という印象を受けた。ユーザからこんなことができないかという問い合わせを受けてサービス提供をしていくという形で,あくまでもユーザ主体である。

また,OpenTypeに関しては,エヌフォー自体が書体のデザインをやっているわけではないので,あまり突っ込んだコメントはできないが,100%ではないにしても,間違いなくOpenTypeが有効に使えるというユーザが出てくると考えているから,OpenTypeというフォントフォーマットでの提供はやっていきたいと考えているということである。具体的な時期や価格などはこれから状況判断が必要だが,積極的に考えていきたい。
(テキスト&グラフィックス研究会)

■出典:JAGATinfo 3月号

2002/03/24 00:00:00


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