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前途の広がりが予感される電子ペーパー

電子ペーパーの用途は今のところ見え難いが、視認性の高さや携帯性によって、利用者の支持が得られるものであれば、受け入れの抵抗は少ないだろう。紙面の編集をする側としては、画面もプリントも電子ペーパーも共通に使えるレイアウトとかも検討しなければならないだろう。WEBが登場した時に、紙のような自由度の高い媒体と、画面の640x480ドットの横長空間でのレイアウトの共通性は苦労をしたものであるが、電子ペーパーはディスプレイの技術と近しいので、今後は慣れるのは割合早いだろう。

電子ペーパーには、液晶などのコンピュータディスプレイ側から発想するものと、電子写真など紙へのイメージングから発想するものがある。当然ながらネットワークやコンピュータ処理との密接な関係において使おうとしているのはディスプレイ側から考えるものであり、ネットワークやコンピュータが無いような環境でも電子ディスプレイが使えるように考えるのが紙のアナロジーである。

いずれにせよ、書き換えをするにはどこかでコンピュータとの接点を持たざるを得ないが、コンピュータ操作という局面を出来るだけ表に出さないのが電子ペーパーともいえる。逆にいえばコンピュータによらない従来のハードコピーの読み取り作業の中に忍び込もうとするのが電子ペーパーである。これは作業の指示書、芝居の台本など、机の前から離れて何かをする場合によくあるものである。

上記の例の共通性は、不特定多数を対象にしたものではなく、電子ペーパーの回収・再利用が可能な点であり、電子ペーパーのメリットとして、特に関係者以外にその情報が流れ難い点も、クローズドな利用には向いているといえよう。防塵という観点から紙を持ち込み難い工場内や、紙の入手・補給ができにくい隔離された場所なども電子ペーパーは入り込みやすいかもしれない。電子ペーパーの使い方がある程度こなれて、再書き込みの標準化ができるまでは、不特定多数に配布するものとはなり難い。

上の例は紙のアナロジー的な使い方であるが、電子ペーパーは究極には紙でもディスプレイでもない第3の表示媒体になると考えられる。電子ペーパーの情報を書き換えるコンピュータは、これから次第にモバイルやユビキタスコンピューティングのように、コンピュータ自体が机の上から離れて、あるいは人の行く先々に埋め込まれて、あまり書き換えを意識しなくてもよいものになりそうだからである。

ユビキタスと合わせて、コストが安くなれば小型のサイン関連の用途は多くあろう。博物館などの展示説明や商品のPOPなどはいろいろ考えられる。博物館では、限られた説明スペースで詳細情報に切り替えて見せるとか、POPではタイムセールスや「あと何個」というダイナミックな表示もできるかもしれない。大判プロッタの用途拡大にも似た、前途の広がりが予感される。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 178号より

2002/03/25 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会